「親子仲はとてもよかったからねぇ。息子が母親を殺す理由なんて、まったくないと思うよ……」
近隣住民は不可解さを顔に浮かべてそう話したーー。
埼玉県警捜査一課と同県警川越署は9月25日、同県川越市に住む無職の長男A(56)を殺人の疑いで再逮捕した。
56歳長男が78歳母親の首を絞めて殺害
「9月11日ごろから、同15日までの間に、自宅で無職の母親Bさん(78)の頸部をいずれかの手段・方法で圧迫して、殺害したというもの」(全国紙社会部記者)
警察の取り調べに対してAは、
「首を絞めて殺してしまった」
と容疑を認めているという。
逮捕から遡ること10日前の明け方に事件は発覚する。15日の午前3時37分ごろ、「自宅の2階に人の遺体のようなものがある」と長男みずからが110番通報。警察官が駆けつけると、2階の布団の上に母親Bさんが倒れていて、搬送先の病院で死亡が確認された。
当初は変死体ということで、長男は川越署で任意の事情聴取を受けていた。ところが、
「Aが取調官に暴力を振るった疑いで、公務執行妨害の現行犯逮捕。その後、殺人容疑で再逮捕されています」(同・社会部記者)
冒頭の近隣住民は、この一連の逮捕劇に首を傾げる。
「Aさんはおとなしくて、暴れるようなことはしないと思うけどね……」
母と息子は事件現場となった川越市の一軒家に2人で暮らしているが、
「以前は父親とともに坂戸市の一軒家に住んでいた。そこで父親は内装業を営んでいたんだけど、約45年前に川越市の新築だったこの一軒家を購入して移り住んだのよ。1階が店舗になっていて、母親がスナックのママをやっていただけで、そのころは住んでいなかった」(別の近隣住民、以下同)
母親のBさんは気っ風がよく、豪快でお喋り好きな女性だった。
「スナックは大繁盛していてね。夜中までカラオケの音が響いていたよ」
一方、長男のAはおとなしくてほとんど喋らない子だったという。
「母親の連れ子だったA君は、友だちとも遊ばず、ずっと家の中にいるような子だったと聞いています」
Aは高校を卒業するも、一度も就職せずにいたという。
「それでも母親のスナックの手伝いをやったりしていたと思うよ。父親は内装業をやめて、タクシーの運転手をやったりしていた」(別の近隣住民)
父親は15年ほど前に病気で他界。60代後半だった。
「Bさんはスナックから居酒屋に転業したけど、あんまりうまくいかなかったのか、よそへ働きに出て、自営の居酒屋は細々とやっていたみたい。
相変わらずA君はひきこもりで、たまにそばの自販機へジュースを買いに出る程度だった。でも、自宅からは母と息子が笑う明るい声が聞こえていましたよ」(同・住民)
食道がんになった母親が漏らした“弱音”
親子2人で仲良く暮らしていたのだが、母親に病魔が襲いかかる。およそ半年前にBさんに食道がんが見つかって入院することになったのだ。そして、事件の4日前となる9月11日、いったん退院したBさんは知人にこんな話を漏らしていた。
「“今度は頭を手術するので、また入院します”と。“あの子を置いて先には逝けない”って悩んでいた。子ども思いのいい母親ですよ。そのころ、玄関先に飾っていた大好きだった植物を半数以上も処分していたから、死期を悟っていたのかもしれない……」
のちに15日に事件が起きていたことを知ったというBさんの知人。
「てっきりまた入院したものだと思っていた。本当に驚きました」
14日の夜から、15日の未明にかけて、自宅の2階からAとBさんの大きな声が聞こえたという証言もあった。未来を悲観した母と引きこもりの息子は一体どんな会話をしていたのか……。生き残ったAから語られる言葉を待ちたい。