「恥を知れ! 恥を!」
'22年6月、広島県安芸高田市の石丸伸二市長は市議会でそう声を荒らげた。
「石丸市長は、'20年に河井克行元法相による買収事件で前市長が辞職したことを受け、市長選に立候補。当時37歳で当選しました」(政治部記者、以下同)
冒頭の市長の「恥」発言は、議会で居眠り、一般質問しない、説明責任を果たさない議員たちに向けられたものだ。
「市長は議会の実態を若手らしくX(旧ツイッター)に投稿し、市民に明らかにしています。それを良しとしない、市議会の最大派閥である『清志会』を中心とした古参議員らは石丸市長にことごとく反発するようになりました」
議会からの《恫喝》を訴え
議会は、市が進めていた道の駅への『無印良品』の出店計画に反対。また、市長を補佐する副市長を全国公募し、選出された女性を「よく知らない」と拒否。居眠りや質問しない議員がいることを受け、市長が出した『議員定数半減案』も否決している。
一方、市長は古参議員らを擁護するような記事を書いた新聞社に「なぜ事実を書かないのか?」と逆質問。このように対立の溝は深い。
以下は'20年10月の市長のツイートだ。
《昨日、定例会後に議会から異例の呼び出しを受けました。居眠り事件について話がある、と。数名から、議会の批判をするな、選挙前に騒ぐな、事情を補足してやれ、敵に回すなら政策に反対するぞ、と説得?恫喝?あり。これが普通かどうかわかりませんが、実態なのは確かです。》
配信停止・非公開の方針は「ございません」
安芸高田市の人口は'23年9月時点で2万6758人。この小さな町の議会がYouTubeなどで“バズり”まくっている。ライブで配信される議会動画は平日の昼間にもかかわらず、現在は毎回、数千人が同時視聴している。
「YouTubeには市や市議会の公式チャンネルだけでなく、メディアによるもの、非公式のまとめ動画などいくつかのチャンネルがありますが、多いもので約1500万回再生など、全国的に注目されています。その“理由”としては、市長に反発している議員たちのあまりに“理”のない・通らない、議会での発言や反発にあります」(前出・政治部記者、以下同)
そこに9月12日、とある議員が議会での一般質問を直前になって取りやめた。
「議会にまつわる動画の再生回数が急増し、それによって誹謗中傷を受けた、として質問を取り下げました。誹謗中傷は絶対的に悪ですが、客観的に見れば、“身から出たサビ”が公開され続け、批判を受けることを恐れているとしか思えない。市長も誹謗中傷はあってはならない、それは個別に対応すべきだとして、動画は削除しない姿勢を示しました」
12日の動画はライブ配信され、一時は配信後も視聴できたが、非公開となった。質問を取りやめた議員は「議会中継をやめる方法はないか考えている」と話しており、議会動画は配信停止となってしまったのか。市長および執行部側に動画配信について質問すると以下の回答があった。
「議会動画についてですが、ただ今、公開に向けて議会事務局で準備を進めている状況です。編集作業のため、動画アップまで毎回時間をいただいておりますが、非公開としているわけではございません。動画非公開に関する(議員の)発言もございましたが、現段階ではそのような方針はございません」(安芸高田市秘書広報課)
市長と議会の溝は間違いなくある。市民のために議会の内容は明らかにし続けるべきだろう。