世の中をザワつかせたドラマ『VIVANT』(TBS系)が9月17日に最終回を迎えた。回を重ねるごとに白熱していく考察論争はもはや社会現象になり、些細なヒントから伏線のカギを見つけ出そうとする視聴者と、その裏の裏をかいた演出をちりばめる制作サイドとの闘いは、さながら、日本を守る“別班”と謎のテロ組織“テント”の攻防戦の様相だった─。
“考察班”たちの生きがいともいえる『VIVANT』が終わると、続編を求める熱い声があふれた。
「一体、どんなドラマが続編を求められるのだろう」
気になったわれわれは、“続編が見たいドラマ”のアンケートを決行した。
お察しのとおり、1位はもちろん『VIVANT』。「回収されていない伏線がたくさんあるから早く続編を見たい」(50歳女性)、「ドラマを見た次の日に考察を話し合うのが楽しかったから寂しい」(38歳女性)と、“考察ロス”の声が殺到した。これには漫画家でドラマウォッチャーの、カトリーヌあやこさんも100%納得のご様子。
3つに分類される続編ドラマ
「やっぱり『VIVANT』は見たいですよね。まだまだ解けていない謎がありますし、何より、小日向文世さんというベテラン俳優が、ただの“不倫おじさん”で終わってしまうはずがないと思うんです(笑)。監督の福澤克雄さんは、『スター・ウォーズ』シリーズの大ファンらしく、『VIVANT』にも、似ているところがあります。堺雅人さん演じる乃木がルーク・スカイウォーカー、役所広司さん演じるベキがダース・ベイダーで、阿部寛さん演じる野崎がハン・ソロ。ただ、二階堂ふみさんの薫がレイア姫だと、野崎のことを好きになってしまう流れになるので、そこは違う(笑)。『スター・ウォーズ』の広がり続ける伝説のように、『VIVANT』も続編を期待したいです」(カトリーヌさん、以下同)
続編ドラマといっても、カトリーヌさんによれば、それは3つに分類される。
「1つ目は、続きのシリーズもの。2つ目は、別のキャストで撮り直したリメイク版。そして3つ目は、キャストや世界観は変わらずに、メイン以外のキャラクターにもフォーカスをあてたり、その後を描くスピンオフ作品。『VIVANT』は、どのキャラクターも濃くて人気があったので、野崎とドラムの出会い、新庄の生い立ち、黒須の過去など、スピンオフが出たら楽しそうですね」
2位の『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ系)と3位の『相棒』シリーズは、どちらも謎解きのサスペンスものだ。
「刑事や推理ものは、事例がある限り、永遠に続けられる“ゴールがない”ドラマなので、シリーズ系で続編が作りやすい。通常のサスペンスは1話完結で緩やかに話が進んでいくことが多いですが、『ミステリ〜』は、1つの事件が解決して視聴者がホッとしている隙に、また何か不穏なことが起こるという、新感覚のドラマでした。そこに、菅田将暉さん演じる“整”くんですよ。柔らかな口調なのに核心をつく話術で、ハッとさせられて頭を“整え”られた視聴者も多いと思います」
医療系も、刑事や推理と同じく、意味“終わりがない”
4位は再び堺雅人で、毛色が異なる“金融もの”である『半沢直樹』(TBS系)がランクインしたが、解説は後ほど。
同率4位には『花より男子』(TBS系)が「つくしと道明寺のその後が見たい」(62歳女性)と票を集め、続く『silent』(フジテレビ系)も、「2人とその周りが幸せになるのをもっと見たい」(30歳女性)と、6位にランクイン。世代は異なるものの、社会現象ともなった、王道恋愛ラブストーリーが続いた。
「恋愛ドラマは、登場人物たちが、紆余曲折を繰り返して“ゴール”に到着するまでのドキドキハラハラを楽しめるのが魅力ですが、必ず結末がやってくる。なので、シリーズで続けていくより、井上真央さんと松本潤さん、川口春奈さんと目黒蓮さんが演じる“あのふたり”をもっと見ることができるような、スピンオフのSP版などの続編が向いていると思います」
7位となったうちの2作品は『コード・ブルー』(フジテレビ系)と『アンナチュラル』(TBS系)。
「医療系も、刑事や推理と同じく、ある意味“終わりがない”ので、シリーズ化しやすいです。『コード・ブルー』は、山下智久さん率いる、チーム力の高さに“箱推し”するファンが多く、すでに何作もシリーズ化されました。『アンナチュラル』は、不自然な死因を研究するラボが舞台となった医療ミステリー。この作品の脚本家・野木亜紀子さんが手がけた『MIU404』という刑事ドラマがあるのですが、2作品は世界観がつながっているんです。私が個人的に見たい続編は『MIU404』で起こった事件の死体を、そのまま『アンナチュラル』のラボに運び込むという、贅沢なスピンオフ作品ですね(笑)」
もう一つの7位は、ドラマの王様・木村拓哉が主演を務める『教場』シリーズ。
「大きな謎、残ってますね~! 主人公・風間と遠野を刺した青年は、いったい何者なんだという。こういった、単純に大きな謎が残っているドラマは、速やかに続編の制作を希望します(笑)」
“テレビ離れ”から呼び戻すキーマンは、いつも堺雅人
第10位は、『リーガル・ハイ』(フジテレビ系)となり、ベスト10中、3作品が堺雅人主演という結果に。彼がいかにテレビ業界を盛り上げているのか、“凄さ”をうかがうことができる。
「弁護士ものの『リーガル・ハイ』では、“立て板に水”の軽快すぎるトーク力を持つ、おかしな天才弁護士を演じており、そこから一転して、4位に入った金融ものの『半沢直樹』では、憎悪にまみれる銀行員を演じました。悪役に裏切られ抑圧されて、耐えぬいた上に“倍返しだ!”と、土下座をさせるという、まさに勧善懲悪。“このドラマはこういう流れです”というわかりやすいカタルシスに加えて、視聴者の心に爪痕を残す癖のある堺さんの演技が組み合わさったことで、強い印象を与えたのではないでしょうか」
『VIVANT』を見て、地上波ドラマの面白さに改めて気づいた方も多いはず。
“テレビ離れ”をした視聴者を呼び戻すキーマンになるのは、いつも堺雅人だ。
「『半沢直樹』が放送されたころは日曜劇場ブランドも弱くなっていましたが、『半沢直樹』の視聴率は、すごかった。今のテレビ業界は、堺さんに支えられているといっても過言ではありません」
地上波のドラマ界隈では続編ブームが到来し、『義母と娘のブルース』(TBS系)や『GTO』(関西テレビ系)、『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)など、次々と続編の制作が決定している。
「続編は少し難しい部分があって、ファンの“この2人の絡みが好き”という気持ちを無視して、キャストを変えたリメイクをしてしまうと、残念な続編になってしまう場合もあります。ただ、基本的には好きな作品の続きが見られるのは楽しみですよね。ファンにとっては、もちろんうれしい続編ですが、実は制作側も安心なんです。前作を例に、どれくらい人気があるかをある程度推測することができるし、既存ファンが、最低でも初回は見てくれる。だから大失敗することが考えにくいんですね」
ファンにも俳優にもスタッフにもうれしいとは、続編効果は“倍”どころじゃない!
カトリーヌあやこ 漫画家&テレビウォッチャー。著書にフィギュアスケートルポ漫画『フィギュアおばかさん』(新書館)などがある