宝塚歌劇団の公式HPより

 9月30日、宝塚歌劇団に所属する25歳女性の団員・Aさんが、宝塚市湯本町の自宅であるマンションから転落死した。このAさんは今年2月、「週刊文春」(文藝春秋)に劇団内でいじめにあっていたと報じられた人物であり、SNSを中心に、同報道との関連はあるのかという疑問の声が噴出。

 一方、宝塚ファンはこの事態に大きなショックを受けているが、中には、とある元娘役トップの存在を「思い出した」という人も。この女性は退団後、宝塚時代の経験から、慶應義塾大学大学院でメンタルヘルスの研究を行っている人物だという。

尋常ならぬ怒号を浴びせられていた

 Aさんは9月30日の公演を休演。その後、宝塚歌劇団の団員が転落死したというニュースが報じられ、宝塚ファンを中心に衝撃が走った。翌1日、劇団は公式サイトに、≪ご親族の心情に配慮し、詳細につきましては公表を差し控えさせていただきます。今後は生徒の心身の状況を十分に配慮しながら、対応を検討してまいりますので、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます≫という文書を公開。

 翌2日には、≪歌劇団といたしましては、生徒の体調も含めた安全を第一に考え、それらを確認したうえで今後の対応を考えていきたいと思っています。そのため、専門家にも入っていただき、一人ひとりの心のケアなどにも時間をかけ、生徒の心情に寄り添ってまいります≫という理事長の言葉も掲載。これに並行し、宙組の宝塚大劇場公演『PAGAD(パガド)』『Sky Fantasy!』を10月8日まで、また、花組の東京宝塚劇場公演『鴛鴦歌合戦』『GRAND MIRAGE!』を10月5日まで中止することも発表した。

「Aさんがいじめ被害者であったと報じた『文春』は、10月5日発売号で、転落死の背景について詳報。新人公演の所属する組のリーダーを任されていたものの、下級生からの突き上げ、上級生からは≪尋常ならぬ怒号を浴びせられていた≫という宝塚関係者の証言を掲載しているんです。また、今年2月のいじめ記事に関して、劇団側は『事実無根』としていましたが、その裏でAさんは泣きながら、≪(加害者である人物が)怖いから大事にしたくない≫と劇団サイドに訴え、自らを責める言動を取っていたと伝え、閉鎖的かつ隠蔽体質である劇団を徹底糾弾しています」(前・同)

 一方、劇団サイドが≪ご親族の心情に配慮≫として公式情報を出さないため、宝塚ファンは「ただただ事態を見守るのみという状況」(前・同)のようだ。

「そんな中、SNS上では、2021年に元宝塚歌劇団月組のトップ娘役・美園さくらさんの名前を口にする人が見られます」(芸能記者)

 美園は2013年、99期生として劇団に首席入団。2018年に月組トップ娘役に就任し、珠城りょうとのコンビで多くのファンを魅了。その後、2021年に退団すると、2022年4月から慶應義塾大学大学院に進学するという異例の転身を遂げた人物だ。

語っていたメンタルヘルスの重要性

「美園さんは現在、メンタルヘルスに関する研究を行っているそうです。退団後のインタビュー記事では、在団中について、

≪(月組のトップ娘役に)就任して1年ぐらいたった頃、全身にバーッと湿疹が出たことも。不思議なことに、首から上には出なかったのですが。「一人で解決しなければ」と、全てを抱え込んでいたのでしょうか≫(「大手小町」2022年8月12日掲載)

≪つらくて、誰かに相談したい気持ちはあるんです。でも言えない。人前に立つ仕事ですから、自分の悩みを赤裸々に誰かに話すなんてできないと思っていましたし、弱い自分を認めたくないという気持ちもありました≫(「AERA.dot」2022年7月28日掲載)

≪いま振り返ると、「スポ根」のように自分で自分を厳しく追い込みながら進めていくやり方も悪い訳ではないと思います。そうした経験を通じて得た大きなものが、自分の中にあるのも確かです。ただ、そのときは本当に苦しかった≫(「日経BizGate」2022月11月17日掲載)

 などと振り返っており、こうした経験からメンタルヘルスの重要性を実感し、進学を決意したそうです」(芸能記者)

宝塚歌劇団HPより

「AERA.dot」のインタビューでは、以前から日本人の若年層の自殺死亡率の高さが気になっているとし、≪逃げる場所が「死」ではなく、もっといろんな逃げ場を持てる社会であってほしいと思っています≫、また「慶應塾生新聞」のインタビュー(2022年11月12日掲載)では、≪悩んでいる人が相談できるだけではなく、それぞれが目標に向かって挑戦できるようになるための「自信を持てる場所づくりをしたい」と思って≫と話していた美園。Aさんの転落死を受け、宝塚ファンは、その言葉をあらためて思い出しているようだ。SNS上では、

≪ふと頭に浮かんだのは美園さくらさんのこと。このニュースを聞いたら、とても悔しいのではないかな…。≫

≪私の愛する美園さくら様も、こういうことがおきてほしくなくて、学問の道に進まれたのかもしれないと思うと、ほんとになぁ………。≫

≪美園さくらちゃんが言ってたこと今なら理解できる タカラジェンヌの前に、1人の人間だ≫

 といった声が上がっている。

「Aさんが転落死した本当の理由はわかりませんが、彼女が宝塚という環境に苦しさを感じていた可能性は否定できない。美園さんは現在、後輩の訃報を受けてひどく心を痛めていると思います。美園の研究が今後、劇団員たちの生きやすさにつながることを祈ってやみません」(前・同)

 劇団サイドは≪一人ひとりの心のケアなどにも時間をかけ、生徒の心情に寄り添ってまいります≫と宣言しているが、なぜこのような悲劇が起こってしまったのか、その原因を究明し、劇団内の環境改善にも心血を注いでほしいものだ。

【悩みを抱えている方は厚生労働省が紹介している相談窓口をご利用ください】 いのちの電話 0570-783-556(ナビダイヤル)/0120-783-556(フリーダイヤル・無料) こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556 #いのちSOS(特定非営利活動法人 自殺対策支援センターライフリンク)0120-061-338 よりそいホットライン(一般社団法人 社会的包摂サポートセンター)0120-279-338

 

 

元宝塚団員の美園さくら(宝塚歌劇団の公式HPより)

 

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