中国の山東省にある中学校の運動会で行われたパフォーマンスの演出が「あまりにも悪趣味だ」と物議を醸している。学生たちが“安倍晋三銃撃事件”を模倣したパフォーマンスをしている動画が、今年10月7日に微博(Weibo)で拡散されたのだ。
安倍晋三銃撃事件は、2022年7月8日11時30分頃、安倍晋三元首相(享年65)が近鉄・大和西大寺駅前(奈良県奈良市)で、山上徹也(当時42)により選挙演説中に銃撃されたという衝撃的な出来事。
《2つの銃声が響く》広げられた横断幕
今回、拡散された動画内の演出は、はじめに安倍さんをモチーフにしたと思われるお面をつけた黒い服の学生が他生徒の前で演説をしていると、人混みのなかから拳銃を持った学生(山上役)が突然登場。銃撃のパフォーマンスを始め、黒い服の学生が意識を失い倒れるというもの。細かい演出は事実と異なるものの、明らかに事件当日の様子を想起させる内容だ。
学生が倒れると、周囲からは笑い声や拍手が沸き起こった。つづけて、複数人の生徒が赤い横断幕を広げる。白文字の中国語でこう書かれている。
《2つの銃声が響く、死者の骨は冷たい。海に排出された汚水は、将来的に問題を残す》
歓声はより一層大きくなった。ここで言う“汚水”とは、東京電力福島第一原発の処理水のことで、今年8月に日本が処理水放出を開始した際に中国側が激しく批判した一件と絡めたものだと考えられる。
本件について、地元の教育局は「学生たちの過ちは許すべき問題」としつつも、学校に調査と説明を命じたという。
この動画は日本でも瞬く間に拡散され、X(旧Twitter)でも話題に。元首相の暗殺事件をまるで祝福するかのような演出に、日本人からは当然不快感を示すコメントが噴出していることは言うまでもない。
「山上徹也をモデルにした映画」が公開されているから…
「日本の複数メディアもこのことを取り扱っており、そこでは“高校”と記されていますが、すでに怒れるネットユーザーが“中学校”だと特定しています。運動会が行われたグラウンドを調べ上げ、学校を判別。しかし、この動画を拡散したのが誰なのかについてはいまだに不明のようです」(ウェブメディア編集者)
そんななか、この動画をみた中国のSNSユーザーはどのような反応をみせたのか。こちらも「教育体制を改善すべきでは?」との声が多く聞かれたが、一部ではこのように擁護するような声も。
「子どもたちはまだ善悪が分からないから仕方がない。一番やってはいけないのは子どもたちのやり方を間違いと定義することだ」
「再現することは素晴らしいが、女子生徒の間をかき分けて銃を向けたり、倒れた学生を4人で担ぎ上げたり、脚色が多い印象。生徒たちの演技力や正確に再現できていないことは改善の余地がある」
「山上徹也をモデルにした映画『REVOLUTION+1』が事件後わずか数ヶ月で公開されていますよね? 日本人は堂々と映画を撮れるのに、中国に来たら、どうして学生たちが体育祭でパフォーマンスすることさえできないのですか?」
教育が行われるべき学校で、このような表現とどう向き合うのか。このパフォーマンスへの説明が待たれる──。