化粧品開発や美容アドバイザーなどの仕事と3人の育児。忙しい日々を送る美容家の山本未奈子さんだが、アラフィフとは思えないぷるぷるの美肌の持ち主だ。
美容家「乾燥する季節はていねいな保湿ケアを」
老化を加速させる夏のダメージ
「保湿には特に力を入れています。今の季節は紫外線や冷房による乾燥など夏のダメージが肌に残っていて荒れやすい。敏感肌ではない人でも肌トラブルを起こしやすい時季なので、毎日のスキンケアをていねいに行いたいですね」
体調や季節の変化でコンディションが悪いな、と思ったときに山本さんが行うのが肌の立て直し。
「ゴワつきが気になったときは美容液やクリームを塗り、肌にラップをかけて密閉。その上からホットタオルをのせて温めると毛穴が開き、ぐんぐん浸透していきます。翌朝はモチモチっと手のひらに吸いつくような潤い肌に」(山本さん、以下同)
基礎化粧品は内側から外、下から上へと筋肉の流れに沿ってつけるようにし、ハンドプレスして成分を肌の奥にまでなじませる。
シートマスクをするときは、血行がよくなるバスタイムに使うなど、日々のちょっとした積み重ねを大切にしている。
「“保湿”の本当の意味は、字のごとく肌内部の湿度を保つこと。しかし肌の水分は外から化粧品で補給するのではなく、体内から湧き上がっているものこそが大事で、それをいかに肌内部にとどめるかがポイント。保湿の本来の意味を知ってほしいですね」
化粧水はほとんどが水分のため、いくら重ねづけをしても大きな保湿効果は期待薄。乳液やクリームなどの油膜でフタをし、水分の蒸発をしっかりと防ぐのが正しいスキンケアだという。
しかし、油脂系のベタつきが気になったり、吹き出物が出やすかったりする場合は「美容液」がおすすめです、と話す。
「ヒアルロン酸やセラミドなど、水分と油分がバランスよく配合されている美容液なら、キメが整いハリが出るのを実感できると考えています。美容液こそミドル世代のルーティンに欠かせないもの。いちばんお金をかける価値のあるアイテムです」
NGケア【乾燥を感じたら化粧水をたっぷり使う】
正解:化粧水だけでは不十分!水分の蒸発を防ぐケアを
「化粧水信仰者は多く、洗顔後に欠かせないと思っているはず。しかしはっきり言って化粧水イコール保湿の考えは捨てたほうがいい。
もともと化粧水の成分は90〜95%が水で残りの5〜10%が保湿成分、1%未満が植物エキス、保存料、香料などで構成されています。なので保湿効果を期待するなら美容液に軍配が上がります」(山本さん)
肌へのダメージを減らしバリア機能を高めて
「40歳を過ぎれば皮膚のバリア機能が落ちてくるので、季節の変わり目の体調の変化や睡眠不足などで肌は不調に傾きやすいんです」
と話すのは、肌の再生医療が専門の北條元治先生。
「乾燥によって角質が剥がれやすくなるので、水分と油分を補ってケアすることは大事ですが、行きすぎは禁物。自分の肌が心地悪いと感じるなら逆効果のサインです。
化粧品を替えたり特別なお手入れを足したりせず、肌状態を確認しながら基本のスキンケアを続けて様子を見てください。よくならない場合は自己判断せず、皮膚科の受診を」(北條先生、以下同)
今の時季は夏に浴びた紫外線の蓄積で、肌はゴワつきがち。「角質ケア」が気になるが……。
「化粧品メーカーが商品を売りたいがために、ターンオーバー(新陳代謝)を促進する角質ケアを推奨していますが、古い角質を剥がさないといけない医学的根拠はありません。
逆に無理やり剥がせば、肌が弱まるのは当たり前。スクラブ入りの洗顔料でこすったり、我流のマッサージをするなどは避けたほうが無難ですよ」
肌の再生医療の専門家「間違ったお手入れが秋の肌トラブルを引き起こす」
NGケア【夏が終わったから日焼け止めは塗らなくていい】
正解:ダメージを加速させないため、できる限り塗りましょう
「夏の肌は、強烈な紫外線を浴びたせいでダメージが蓄積した状態。さらに、秋から冬へと向かって季節的に湿度が下がる、つまり乾燥していくので、肌トラブルのリスクは上がります。
夏よりは紫外線のパワーが弱まるとはいえ秋も毎日、日焼け止めを塗って肌をガード。日焼け止めでなくても、紫外線散乱剤が入ったUVカット機能のある化粧下地やファンデーションを使えばOKです」(北條先生)
NGケア【敏感肌用を選べば、いつだって安心!】
正解:敏感肌用化粧品で肌荒れすることも
「私が治療する患者さんのうち6〜7割の方が『自分は敏感肌だ』とおっしゃいますが、肌質については、今のところスタンダードな基準はありません。言うなれば、判断基準は個人の主観。
単にスキンケアの方法が間違っていて、肌が弱いと感じているケースも。敏感肌用の化粧品であっても、体調や季節によっては肌の負担になることがあります。このとき注意したいのが、角質や皮脂を落としすぎないこと。
ピーリングやクレンジングにより角質が剥がれると肌のバリア機能が低下して、炎症や吹き出物の原因になります」(北條先生)
NGケア【秋だし、コスメカウンターですすめられたアイテムに入れ替え】
正解:季節ごとにスキンケアアイテムを無理に替える必要はなし!
「夏用や冬用など、化粧品には季節を分けているものがありますが、使っているものが肌に合っていると感じるなら季節を理由に替えなくても大丈夫。
同じアイテムを使っても、しっとりすると思える人、ベタつくと感じる人など、その評価は使う人によって違います。
“季節の変わり目だから、何かしなくちゃ”という強迫観念のような気持ちで化粧品を選ばず、自分の肌状態をしっかり見極めるほうが断然重要です」(北條先生)
NGケア【季節の変わり目は、肌のターンオーバーを整えるため角質ケアがマスト】
正解:バリア機能を破壊してまで角質を剥がすなんて論外!
「表皮は髪の毛と同じで角化した細胞、つまり死んだ細胞の集まりです。時が来れば押し出されて自然と剥がれていきます。
基本的に肌が生まれ変わる周期は約28日といわれていますが、加齢によりこの周期が長くなるのは仕方がないこと。
角質層はバリア機能の最前線ともいえるとても重要な器官。そして、化粧品はそれを補助するものです。わざわざ自分の器官を壊してまで化粧品に頼ることは、医師としておすすめできません」(北條先生)
NGケア【夏の紫外線ダメージは、高級ブランドの美白もので解消できる】
正解:いい効果がある裏には、必ず逆もあることを念頭に!
「まず、この世に“万能”とか“必ず”なんてことはありません。“美白”という薬理効果がある成分は、必ず副作用の可能性も存在するということを理解しておきましょう。
例えばビタミンCはメラニンの生成を抑えるといわれていますが、乾燥しやすくなります。肌トラブルがないときに、必ず自分に合うか様子を見つつ取り入れて」(北條先生)
NGケア【シートマスクを乾くまで貼れば、潤うはず……】
正解:長時間つけると乾燥を招く!商品の使用時間に合わせて
「何でもいっぱいつければいいという考えは間違い。角質に過度な水分を与えるとふやけますが、シートを外したときに水分が一気に蒸発して、肌が乾燥してしまうんです。
また、肌が乾燥すればシートマスクに入っているパラベンや香料が刺激になることもあるので、使用時間を守ってください。家庭用の美顔スチーマーについても同様。行きすぎた水分補給はマイナスと心得て」(北條先生)
NGケア【乾燥の予防には、たっぷりのオイルやクリームが必須】
△:全員に必要とは言えません。過剰な油分が肌トラブルを招くことも
「夏から秋冬へと移行する今は、ジメジメと湿気の多い状態から乾燥へと向かう季節だから、油分を意識したスキンケアを取り入れること自体は悪くありません。
ただし、それが合っているのは“心地よい”と感じられる人のみ。ちょっと負担を感じる場合は肌トラブルが起きる可能性も高いので、使用を控えたほうがベター。
同じブランド内でクリームと乳液がある場合、機能は同じで水分量と油分量が異なるだけなのでどちらかで十分。使って違和感のないほうを選んで」(北條先生)
NGケア【肌の調子が悪いと感じたら、「肌断食」でリセット】
正解:医師の立場からは懐疑的。乾燥が悪化する可能性も
「スキンケアやメイクを一切やめるという肌断食ですが、冬は特に乾燥するので、何もつけないというのは個人的にはおすすめできません。
スキンケアを何もしないことで乾燥が加速し、トラブルが起きる可能性も。『肌の調子が悪いな』と感じたら即、やめてください」(北條先生)
NGケア【肌への負担を減らすため、できるだけ早くメイクを落とす】
正解:今は信頼できる化粧品を選べば神経質にならなくてOK
「メイクは毎日きちんと落とすべきですが、最近では機能性が向上し、24時間つけていてもOKなファンデーションなど、肌への刺激が少ないものも。
今は長時間のメイクより、摩擦を与えることのほうが肌には悪影響。メイクをしっかり落とそうとクレンジングや洗顔で肌をゴシゴシこすっているなら即刻やめてください。
また、朝洗顔でクレンジングをする人もいますが、余計な刺激になるのでやめたほうがいいですね」(北條先生)
スキンケアの基本をおさらい!
意外と見落としがち!
北條先生が提唱するスキンケアのルールを伝授! 毎日のケアを見直して、ゆらぎやすい秋の肌を健やかに整えましょう。
洗顔時の洗浄料は最小限
例えばチューブタイプの洗顔料を大量に出せば、それだけ洗浄料を多く肌に与えることになり、刺激となる。クレンジングや洗顔料はできるだけ少量で。
クレンジングはさっぱりしたと感じたら洗いすぎなので、使用時間を短くしよう。洗顔料はしっかり泡立てて洗うこと。本当に調子が悪いときは30~35℃程度のぬるま湯ですすぐだけに。
肌に刺激を与えない
触れること自体が肌にとってはすでに刺激になる。スキンケア時は肌をこすったり、たたいたりせず、優しく触れるように。また、日常生活でも気がつくと顔を触っている人が結構いるので気をつけて。
自分に合った保湿をする
化粧水、乳液またはクリームなどのスキンケア用の化粧品は、自分の肌に合うかどうかをしっかり見極めて選ぼう。
「多くの人が化粧品ばかりに意識を向け、自身の肌を見ていないように感じます。どの化粧品を使うと、肌がどうなるか、どう感じるか。そのことに意識を向けるだけで肌状態が変わってくるはずです」
北條先生の愛用品
私は冬に粉がふいたりすることもあるのですが、「ウレパール」(医薬部外品)などの尿素クリームは保湿効果やかゆみ改善に優れているものの、使いづらいのが難点。
つい塗り忘れてしまうこともあるので、時間がかからず全身に塗れるスプレータイプの化粧水を愛用しています。
(取材・文/長江裕子 イラスト/鈴木七代)