10月19日、俳優の財津一郎さんが14日に慢性心不全で亡くなっていたことを週刊女性PRIMEが報じた。
財津さんは「ピアノ売ってちょーだい!」のフレーズで知られる中古ピアノの買い取りを行う『タケモトピアノ』のテレビCMに20年以上にわたって出演していた。
バラエティー番組『探偵ナイトスクープ』(ABCテレビ)では、赤ちゃんが泣き止むCMとして検証が行われ、実際に100人近い赤ちゃんが泣き止む結果となった。
財津さんの逝去を受けて、タケモトピアノの竹本功一会長に話を聞いた。取材中、涙声でときに言葉を詰まらせながら、話してくれたこととは……。
20年目の節目で契約を終了した理由
――財津さんが亡くなられたことは知っていたか。
「先ほどニュースで知りました。財津さんと直接は、もう長らくお話しさせていただいておりませんが、財津さんの所属事務所から“元気でゴルフにも行っている”と、ウチの広報から伝え聞いていたので、信じられなくて……」
――財津さんが出演するCMは、今も放送されている?
「実は、放送から20年がたった節目ということで、今年9月で契約を終えていたんです。だから、余計に心残りで……」
――契約を終えた理由は?
「CMを始めたころと時代も変わり、ターゲットゾーンから外れてきているのではないかという話になったのです。それで、CMを放映するテレビ番組の見直しもしようという流れでした。これまで何度も、そういう話は出てきたのですが、何度も視聴者の方々からのご意見で延長を決めてきました」
財津さんも2019年の『週刊文春』のインタビューで《若い人を起用してリメイクする話も出たそうですが、会長さんの意向で僕を使ってくれています》と話していた。実際、どのような声があったのか?
「あるとき、方向性を見直そうと新しく制作したCMを放映した際、視聴者から“子どもたちが喜んでいるCMをやめるのか!”というご意見をいただいたり、『探偵ナイトスクープ』で赤ちゃんが泣き止むCMということで取り上げられた際は、視聴者から“CMは何時何分に放送されるのか教えてください”とも。財津さんのCMの専属スタッフを配置しないと、普段の業務ができなくなってしまうぐらいのお電話をいただきました。
そのためCM映像をコピーしたDVDを、要望されるお客様のご自宅にお送りしていたこともあったんです。ありがたいことに、かなりの数を送らせていただきました」
CM撮影の現場で起きた爆笑
――その度に、CMの放映を延長してきた?
「そうです。ただ、財津さんとの契約は1年更新なのですが、“かつてウチのCMを見て泣き止んだ子が、今は20歳になっている、これってどうなんや”という社内での意見が、契約の延長を今年で最後とする決め手になりました。本当は、今年の7月15日が契約の切り替えを行う時期だったのですが、なんとか続けられないかと、社内で反対されながら私ひとりがジタバタして、2か月ほど延長したんです。CMを制作した当初は“これで紅白歌合戦から依頼があったらどうしよう”なんて話をしたり、そんな思い出がいっぱい詰まったCMだったので、どうしても残しておきたいという気持ちがありました。こうやって話していても、いろいろな思い出が蘇ってきています」
――例えば、どんな思い出が?
「財津さんが出演されていたコメディー番組『てなもんや三度笠』を見て大ファンになり、CM出演をお願いしました。もちろん、藤田まことさんや白木みのるさんも大好きでしたが、財津さんが演じた浪人役の“~してチョーダイッ!”というセリフしかないと思ったんです。
実は、財津さんに出演をお願いしたのは、弊社CMの3本目と4本目でした。これで反響がなかったら、最後のテレビCMにしようと覚悟を決めて、お願いしたんです。なので、私が直接その思いを財津さんにお話しさせていただいて、CM制作の現場にはずっと立ちあわせていただきました。財津さんの動きを見て、『てなもんや三度笠』を思い出して嬉しかった。本番でも笑いが起きて、何回も撮り直しをしたことを思い出します。『探偵ナイトスクープ』の撮影では、大阪市内の幼稚園で撮影させていただき、そこでも財津さんに会って、大笑いさせていただきました。財津さんは“会長、銭勘定じゃなくて、好きでやっているんだよ”と、おっしゃってくださったのを覚えています」
――財津さんも、タケモトピアノさんに感謝していると、過去のインタビューで語っている。
「もう、本当に……ありがたかった……。契約を終了をすることとなり、ちゃんと日時を決めたうえで、改めて財津さんにご挨拶させていただこうと考えていたんです。“本当にありがとうございました”との気持ちを、直接、伝えさせていただきたいと思っていたのですが……」
財津さんと、ともに歩んできたタケモトピアノ。その思い出は、いつまでも鳴り響いている――。