ナインティナインの岡村隆史が、アキレス腱断裂の大ケガを負った。番組収録中、跳び箱に飛び乗ろうとしたところ、
「右足をかけた瞬間にバチン!と音がした」
という。若くして成功し、長きにわたって活躍する岡村だが、その芸人人生は意外と波瀾万丈だ。
2010年には、のちに「(頭が)パッカーンってなった」と振り返るほど精神的に疲弊し、5か月間の休養をとった。
奥手さが「オヤジ性」に
また、'20年の「風俗」舌禍事件もある。ラジオ番組に寄せられた「コロナ禍で風俗店に行けない」という声に対し、
「コロナが収束したら、なかなかの可愛い人が、短期間ですけれども、お嬢やります。僕はそれを信じて今、頑張っています」
と発言して、炎上。このふたつの出来事は、彼にとっての二大転機だろう。
休養では、ストイックで内向的な性格が一種の脆さにつながることを露呈させた。そして「風俗」舌禍事件では、デビュー以来保ち続けてきたアイドル的なイメージが損なわれることに。婚活バラエティーに出て、結婚相手を探すなどしていたニクめない奥手っぽさが、年相応のオヤジ性に変換されてしまった。
そんな二大転機に比べたら、今回のケガはそれほどでもないように見える。が、これもまた、結構な曲がり角に思えるのだ。というのも、彼は「動き」で勝負するタイプ。芸人にはスポーツが得意な人が多いが、その中でも抜群の運動神経の持ち主だ。小学校で器械体操、中学時代にブレイクダンスにハマり、高校ではサッカーをやった。
その運動神経とルックスとのギャップがもたらすコミカルな動きが、EXILEとコラボした『オカザイル』のような芸を生んできたわけだ。
最大の武器で失敗
一方「しゃべり」に関してはそこまでのすごさはなく、そのあたりを象徴しているのが冠番組の『おかべろ』(フジテレビ系)だろう。同じ局の『さんまのまんま』の後継的トーク番組だが、明石家さんまのようにひとりで仕切るのではなく、ほかの芸人(現在はNON STYLEの石田明)とともに回す形がとられている。
そういう観点で二大転機を振り返ってみると、休養については主演映画のプロモーションという苦手な仕事に忙殺されたことが引き金。また「風俗」舌禍事件は、しゃべりのミスだ。
これに対し、今回は最大の武器である運動神経で失敗してしまったわけで、本人的にはかなりショックなのではないか。
ちなみに、岡村は24年前にも番組収録中、右腕を骨折。ハエを回し蹴りで追い払おうとして転んだのが原因だが、20代でのハプニング的なケガは「若気の至り」で済ますことができる。
今回は得意なはずの跳び箱でのものだから、もう若くはないことを痛感させられそうなケガだ。実際、本人も、
「幼少期から器械体操をやっていた身ですけど、認めたくはないけど、(53歳という)年齢はある」
と、コメントした。なお、
'10年の休養を余儀なくされた体調不良は、自分の心身を見つめ直し、仕事をセーブするきっかけにもなったようだ。「風俗」舌禍事件についても、その苦境を支えてくれた女性との関係が結婚へと発展、子どもも授かるという「災い転じて」的な展開につながった。
しかし、体調不良や舌禍事件以上に、年齢の壁というのは乗り越えるのが難しい。ナイナイ世代ではない筆者にとっても、寂しさを感じさせる「転機」である。
ほうせん・かおる アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。著書に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)。