22日、シンガーソングライターのもんたよしのりさん(72歳)が18日に大動脈解離のため亡くなったと公式ブログで所属事務所が発表した。
「あまりにも突然のご報告となりますが、10月18日朝、もんたよしのりは大動脈解離で永眠いたしました。72年の生涯でした。本人の希望通り親族のみでの葬儀を執り行い、とても穏やかな顔で旅立ちました」(公式ブログより)
地元である大阪のラジオ番組に定期的に出演し、今年の8月にライブ活動も行っていたというもんたさんの命を奪った大動脈解離とはどんな病気なのか。
「大動脈解離は寒さがリスク要因のひとつになります」と語るのは、大阪にあるりんくう総合医療センター循環器内科部長の増田大作先生だ
パリパリッという違和感が身体の中を駆け抜けた
大動脈解離とは、血液を全身に運ぶ大元の血管である大動脈の内側に突然、亀裂が入り、その裂け目から血液が大動脈の層の間に入ってしまう病気だ。血液が層の間に溜まることで大動脈が破裂することもあり、胸や背中に今まで経験したことのないような激しい痛みを伴う。大動脈が破裂すると、約6割の患者が病院に到着する前に命を落とす。
今年の2月に66歳の若さで亡くなった笑福亭笑瓶さんも大動脈解離で亡くなっている。笑瓶さんはその激痛について、2015年に発症したときの様子を生前、こう語っている。
「12月29日、打ち納めと称して後輩の神奈月君と出かけたゴルフ場で、4ホール目を終えたときでした。朝9時半ごろです。パリパリッという違和感が身体の中を駆け抜けたあと、背中にそれまで経験したことのないような激痛が走り、その場に倒れ込みました」(『突然死を防ぐ脳と心臓のいい病院2019』朝日新聞出版より)
このときは九死に一生を得た笑瓶さんだが、その8年後、同じ病気で急死した。
「気温差」で血圧は急上昇する
「大動脈解離は血管がもろくなることが原因だと考えられています。血管がもろくなる原因はコレステロールや糖尿病、喫煙などいくつかありますが、もっとも大きな要因は高血圧です」(増田先生、以下同)
ふだんから血圧が高めの人はもちろん要注意だが、血圧は、正常な人でも何かの拍子に突発的に急上昇し、非常に高い数値になってしまうことがある。たとえば気温差だ。暖房のついた温かい部屋から寒いトイレに行っていきんだりすると、血圧は急上昇する。
一定の圧力がかかっている血管に急に大きな圧力がかかると、その力が全身の血管内を駆け巡る。その圧力に耐えきれずに脳の細い血管が破れると脳出血になり、もんたさんの場合は大動脈が耐えきれなかったということだ。
「寒さや気温差、トイレでいきむなどは血圧上昇の大きな誘因になります。お風呂場の脱衣所も要注意。寒い時期は事前に暖房で温めておくのもひとつの手です」
足元は温度に反応しやすい部位なので、寒い日の朝、起きてすぐに裸足で歩くのも、血圧が急上昇する危険があるという。朝は交感神経が優位で血圧を抑える力が弱まるため、もともと血圧が高い時間帯だ。足元を冷やさないよう、室内を移動するときはスリッパをはくのも血圧コントロールに役立つ。
普段のちょっとしたことで血圧の上昇を抑えることが可能なのだ。このあとやってくる寒い冬、命を守るためにも生活にとり入れたい。