足首にテープで巻いた小型カメラで前に乗る女子高生の下着を盗撮した

 茨城県境に近い千葉県流山市のつくばエクスプレス『流山おおたかの森』駅構内の上りエスカレーター。10月7日土曜日の午前9時44分ころ、千葉県に住む女子高生が乗ったすぐ後ろに恰幅のいい長ズボンの男がぴったりつけた。前に差し出し裾のまくれた左足首には小型カメラがテープで固定してあり、レンズはスカートの中の下着をとらえていた。

「何やってんの?」

 エスカレーターでふたりの後ろに乗った男性は不審な動きに気付き、そんなふうに声をかけたという。

「すいません。盗撮しました。ごめんなさい」

 隠しカメラを装着しているから言い逃れようもなく、即時“全面降伏”となった。

 県警流山署が同日、千葉県迷惑防止条例違反(盗撮)の疑いで現行犯逮捕したのは茨城県立石下紫峰高校の書道担当教諭・奥光真(おく・みつまさ)容疑者(32)。

 同署によると、「女子高生のスカート内を盗撮したことに間違いありません」と容疑を認めているという。

 きわめて小さいカメラを足首に装着して…

「奥容疑者に声をかけた男性は被害に遭った女子高生にすぐ教えてあげ、駆けつけた駅員から110番通報があった。取り押さえられたときから犯行を認め、取り調べにも素直に応じている。カメラはきわめて小さいもので普段使いするようなカメラとは異なる。朝から同駅に何をしに行ったのかなど詳しい状況を調べている」(捜査関係者)

 同署はカメラを押収しており、余罪の有無を含めて捜査中という。

 茨城県守谷市の出身。進学校の県立牛久栄進高校から東京学芸大学に進み、書道の教員免許を取得。2013年に新規採用され初任校は母校だった。現在の勤務校では5年前から書道の科目を担当し、書道部の顧問も務める。

書道展の受賞者インタビューに答える奥容疑者(今年7月14日、毎日新聞朝刊の茨城県版より)

 今年7月、毎日新聞社などが主催する国内最大規模の公募展『毎日書道展』で部門別最優秀に該当する毎日賞を受賞。

 毎日新聞のインタビュー取材を受け、

《純粋にうれしい。(中略)今後もスキルを磨けば部活動の指導や授業にも還元できる。また受賞できるように頑張りたい》

 と決意をあらたにしたばかりだった。勤務先の在校生らによると、受賞を自慢することはなかったという。

「やさしい先生。生徒の話をちゃんと聞いて相談に乗ってくれるし、絶対に怒らない。怒鳴り声を聞いたことなんて一度もない。騒いでも怒らないし、少しは怒ったほうがいいんじゃないかと思うほどだった」(男子生徒)

 別の男子生徒が付け加える。

「左腕がなくても教員免許を取るなんてすごいなと僕は尊敬していました。いつも物静かで、自分からハンデを乗り越えた苦労話などはしない先生です」

「おくちゃん」と呼ばれ親しまれていた

 前出のインタビュー記事などによると、生まれつき左の上腕がない。書道教室に通い始めたのは小学生のころ。野球少年だったが高校進学時に書道部を選び、“書の甲子園”といわれる『国際高校生選抜書展』で入選。教師になってからも毎年のようにさまざまな書道展に応募し、入選するなど結果を出してきた。

 学校では白い半袖シャツに黒っぽいズボン姿。一部生徒のあいだでは「おくちゃん」と呼ばれ親しまれていたという。

 怒らないことで生徒にナメられたり、学級崩壊を招くようなことはなかったか。

「昨年担任をしていたクラスはうまくまとめていたと思います。テストの成績が悪くてもうるさく言わず、“もうちょっと頑張ってね”と寛大なんです。昼休みに校内をよく歩き回っていて、“あっ、奥先生だ”などとポツリと言うと、無視せずに“おう”と返事してくれる。僕は好きな先生でしたね」(別の男子生徒)

 複数の在校生によると、生徒と一緒になってはしゃぐことは皆無で、女子生徒にことさら絡むような場面も見たことがないという。

第74回毎日書道展で毎日賞を受賞した奥容疑者の作品(一般財団法人毎日書道会のホームページより)

「逮捕は信じられません。事件の数週間前、学校独自のカリキュラムで裁判をテーマに学ぶ授業があり、奥先生は授業の最後に“みんなも裁判沙汰に巻き込まれないように。警察のお世話にはならないでね”と話していたんです。そう言ってた先生自身が捕まっちゃったね、と友達と話しました」(女子生徒)

 独身で実家暮らし。最近の様子などを聞くため自宅を訪ねると、インターホン越しに母親はこう答えた。

「現時点では記者さんにお話しできることは何もありません。報じられている事実関係が正確か否かも含めわからないのでお引き取りください。……取材にお見えになったのはご苦労さまです」

 丁寧で落ち着いた口調だった。近所の女性は「事件には驚いています。ふだんはまじめな方ですよ」とひと言。地元の男性は振り返る。

元大リーグの隻腕投手アボットみたい

「小学生のころは地元の有名な少年野球チームでキャプテンでした。高校野球の県予選で始球式を務めたこともあり、ノーバウンドでストライクを投じて観客は拍手喝采だった。元大リーグの隻腕投手アボットみたいに左脇に抱えたグローブを、投げた直後に右手にはめ守備の構えをする。物怖じしないし、格好よかったんだから」

 勤務校は事件後、全校生徒を体育館に集めて校長が事情説明。生徒によると「学校を代表してお詫びします」と頭を下げたという。

 とはいえ、高校教師が他校の女子高生を盗撮したわけだから校内で被害がないか気にかかる。校内で隠しカメラが見つかったり、女子生徒から奥容疑者にかかわる相談事例はなかったか。

「ご指摘のような不審事案はありません。事件後に全校生徒を対象にアンケート調査を実施し、スクールカウンセリングも行っています。奥先生は特段の問題はなく、生徒への接し方などもおかしなところは見当たりませんでした」(同校の教頭)

 越えてはいけない一線を何が越えさせたのか。信頼を裏切った生徒たちに対して何を思うのだろうか。


書道展で受賞した奥容疑者(毎日新聞より)

 

書道展の受賞者インタビューに答える奥容疑者(今年7月14日、毎日新聞朝刊の茨城県版より)

 

足首にテープで巻いた小型カメラで前に乗る女子高生の下着を盗撮した

 

事件のあった流山おおたかの森駅

 

事件のあった流山おおたかの森駅