被害者である60代男性Aさんの自宅マンション。部屋は4階だった

「ベランダ側から女性の“キャーッ”という叫び声が響いて……。そうしたら、あっという間に救急車とパトカーが駆けつけてきた」

 事件現場となったマンションの住人はその日の夜をこう振り返ったーー。

 静岡県警浜松東署は10月29日、浜松市中区に住む自称・派遣社員の大田原広和容疑者(41)を住宅侵入と殺人未遂の疑いで逮捕した。28日午後10時30分ごろ、同市東区の60代男性Aさんが住むマンションの部屋に侵入。Aさんと元交際相手の30代女性Bさんを持ってきた刃物で切りつけた。2人とも複数箇所を刺され、Aさんは重傷だったが、幸いにも2人とも命に別条はなかった。

「大田原容疑者はマンションの雨どいをよじ登って、4階のベランダから侵入。ガラスを割って、部屋の中で2人の帰りを待ち伏せしていた。犯行後、現場から逃走していた」(全国紙社会部記者)

 29日の朝7時ごろ、容疑者はいったん自宅マンションに戻ってきたようだ。容疑者の知人がその時の様子をこう話す。

「大声で、誰かに電話していたようです。自分の身内だったのか、Bさんの親だったのか……。電話が終わったあと、9時ぐらいに家を出て行った」

 向かったのは、容疑者宅からは徒歩と電車で1時間弱のところにある同県袋井市のマンション。

「10時ごろ、複数の警官がマンションの周りをうろうろしていたと聞きました。10時30分ごろには警察から連絡があって、“部屋からは出ないでください。出かけている家族がいたら、戻ってこないように伝えてください”って。私たちは何が起きているのか、わからなかった。あとで知って驚きました」(同マンションの住民、以下同)

 目撃者によると、マンションの下には大きな黄色のマットが敷かれていたという。

「大勢の消防署員らしき人がマンションの下から屋上を見上げていてね」

 前出の社会部記者は、

「容疑者はやはり外側から雨どいをよじ登って13階建てのマンションの屋上まで行き、飛び降り自殺を図ろうとしていたようです」

 逃走から13時間後の29日午前12時ごろ、容疑者は建造物侵入の疑いで現行犯逮捕された。

大田原広和容疑者の自宅マンション

 浜松市中区の築39年、4階建てのマンションの一室にひと月前から住みはじめた大田原容疑者。家賃は月4万円弱だが、容疑者の場合は“タダ”だった。その理由を容疑者の知人が明かす。

「彼は執行猶予中、保護観察の身なので、家賃を払わなくていいとか。だたし、半年が過ぎたら、このマンションから出ていくことになっていたようです」

Bさんへのストーカー行為で逮捕、執行猶予中だった

 実は容疑者はBさんへのストーカー行為で逮捕されて、懲役6か月、執行猶予3年の判決が言い渡されていたのだ。

「今年1月、Bさんは容疑者との間の金銭トラブルを警察に相談。その後、Bさんは容疑者と別れたのだが、今年3月には、容疑者がBさんに“死んでやる”などとメールで送りつけたことでストーカー規制法による接近禁止命令を受けていた。ところが、今年4月にBさんをコンビニで待ち伏せしたため、逮捕されたわけです」(同社会部記者)

 だが、Bさんに対する大田原容疑者の執着は変わらず、さらには逆恨みするようになって犯行に及んだようだ。

 捜査関係者によると、60代男性Aさんと30代女性Bさんの関係性は「親子でもなければ、親族というわけでもない」という。前出の社会部記者によると、

「容疑者は裁判で“(Bさんに)新しい男ができて、悔しい思いをしていた”と発言しています。Bさんは容疑者ともめごとが起きたころから、Aさん宅で一緒に暮らしているようです」

 大田原容疑者は警察の取り調べに、素直に容疑を認めているという。ストーカー男の愛の果てにあったのは、身勝手極まりない逆恨みだった。


 

雨どいをよじ登って4階のベランダに侵入した容疑者。部屋の中で被害者が帰ってくるのを待ち構えていた

 

被害者である60代男性Aさんの自宅マンション

 

大田原容疑者が自殺を図ろうとした13階建てのマンション。雨どいをよじ登って屋上まで…