あざとい女子の生態を世に知らしめた『あざとくて何が悪いの?』(テレビ朝日系)のメインMC、田中みな実&弘中綾香がこの秋で番組を卒業。どうやら、あざと女子界にも新旧交代の波が押し寄せているようだ。そこで、田中&弘中に続くNEXTあざとい女性有名人を全国20~50代の女性1000人にアンケート。1位に輝いたのははたして……?
新女王は「あざとい役が上手い」ブレイク女優
あざと女子というと田中&弘中のような女性アナをイメージしがちだが、意外にもトップ3を占めたのは押しも押されもせぬ人気女優たちだった。まず3位には、あざと可愛い女子の元祖・石原さとみが貫禄のランクイン。
「あれだけいろんな小悪魔を演じたら、あざとさをよくわかってそう」(神奈川県・24歳)。
デビュー当時は眉も太くあか抜けない印象だったのが、眉を細くしたあたりからイメージが一変したというのも大きな要因だろう。テレビウォッチャーの漫画家・カトリーヌあやこさんはこう分析する。
「石原さんは『失恋ショコラティエ』(フジテレビ系)で演じた、男を翻弄するあざと可愛いヒロインが衝撃的でした。ただ彼女の場合、完璧にコントロールされた可愛さだから、女性からも支持されるんですよね」
トップと3票差の2位は吉岡里帆。「可愛いしぐさがナチュラルにできて逆にあざとい」(福岡県・56歳)という意見が多かったが、「どんぎつねさんがあざと可愛かったので」(愛知県・20歳)、「『カルテット』のときの小悪魔役のイメージ」(埼玉県・35歳)など役柄の印象もあるようだ。
「吉岡さんは『どん兵衛』のCMのどんぎつねさんに尽きる。男子の夢を具現化したような存在で、あのキャラをあんなにも見事にこなせたら、そりゃああざとい女だと思われますよ。『カルテット』での『人生ちょろかったぁ!』っていうセリフも強烈でしたし、ああいう役をやらせたら本当にうまいです」(カトリーヌさん)
そして、接戦を制し1位となったのは松本まりか。「男性ウケを狙っているのがモロに出てる感じがする」(東京都・29歳)、「声が可愛いのに妖艶さもあって、なんかあざとく感じる」(北海道・55歳)。また「あざとい役がうまい」などの意見も多く、本人からも役柄からもあざとさを感じるよう。
「松本さんがブレイクしたのが『ホリデイラブ』(テレビ朝日系)というドラマで、そこで演じていたのがまさにあざと可愛い不倫女。その印象がまずあって、ご本人は『そのイメージがつらいんです』とトーク番組で涙ぐむ……いやいや、それがあざといんだよって(笑)。
ただ彼女はあざと女というより不思議ちゃん系なんですよね。結構かまってちゃんで、たまに闇ツイートなんかしたりする。エロさもあるから魔性系も入っていて、女をざわつかせる要素はたっぷりですよね(笑)。
トップの3人に共通するのは、あざとさを表現する技術の確かさ。大体ラブストーリーのヒロインはあざといですから、芝居が上手な女優さんはそう思われがち。その意味では彼女たちにとって『あざとい』は褒め言葉なんです」(カトリーヌさん)
今回のランキングで異彩を放っているのが4位のあの。今年ブレイクし、バラエティーでも大活躍中の不思議ちゃん系アーティストだ。
グループアイドル組がランクインした理由
「注目されるためにキャラを作っているのがあざとい」(京都府・44歳)、「しゃべり方も発言内容も計算してそうで怖い」(千葉県・54歳)など彼女の特異なキャラクターに拒絶反応を覚える人も多いよう。
「あのちゃんはあざといというよりもキテレツ枠ですよね。かつての篠原ともえさんを思い出します。彼女みたいな異質なキャラはいつの時代にも現れるんですよ。ただ、時代のあだ花的な存在なので、のちに必ずキャラ変する(笑)。
今や篠原さんは美しき大人の服飾クリエイターだし、ゆうこりん(小倉優子)もこりん星に別れを告げて、料理上手の素敵なママじゃないですか。なので、あのちゃんもいつか変わっちゃうのかなと思いつつ、あざとい女ランキングに入るくらい勢いがあるということですよね」(カトリーヌさん)
そして5位にはアイドル界から指原莉乃がランクイン。「自己プロデュース力がすごくて、計算高すぎる」(千葉県・36歳)、「年上への媚び方がうまくて、後輩には厳しそう」(福岡県・48歳)という具合にさっしーの場合は、芸能界での立ち回りの器用さがあだになったようだ。
「おじさん転がしという意味でのあざとさですよね。芸能界で生き残るための戦略なんですけど、女子からするとその媚びっぷりがあざとく感じてしまう。
8位の柏木由紀さん、10位の松村沙友理さんとほかにもグループアイドル組がいますが、秋元康さんが編み出した集団で競わせて誰が生き残るかというサバイバルゲームのなか、キャラクターが特化し、それを外から見るとあざとく感じるんでしょうね」(カトリーヌさん)
6位の広瀬すずと9位の橋本環奈に関しては、本人のキャラ的にはあざといとは真逆に思えるが、どうして“あざとい女”と思われるのか?
実力派女優のランクインは嫉妬?
「彼女たちもあざとい役柄を演じたときの技術の確かさが理由のひとつだと思いますが、それに加えて、美しさ、人気、実力とすべてを兼ね備えている点への嫉妬もあるのでしょう。せめて裏の顔があってほしいという(笑)。
ただ、このランキングに入っている女優さんはみな、内面は男前。そうじゃなきゃトップ女優にはなれない。その強さが巷の女子たちをざわつかせるんでしょうね」(カトリーヌさん)
そんな彼女たちに比べると女性アナ組で唯一ランクインした7位の元テレビ東京の森香澄は、あざとさという点では先輩の田中みな実や弘中綾香にはまだ及ばないそう。
「テレ東時代はあざとさを前面に出すことで注目されましたが、フリーになってあざと界の猛者たちと横並びになるとパンチがない。今、『たとえあなたを忘れても』(テレビ朝日系)でお芝居にも挑戦されていますが、女優さんたちの中に入るとあまり印象に残らないんですよね。やはり田中みな実さんはすごかったんだなと(笑)」
’80年代、松田聖子をシンボルとするぶりっ子から始まったあざと女子の系譜は、その後、おバカ女子、天然キャラ、小悪魔など形を変えながら、世の男性たちを虜にしていく。
なかでも’00年代からタレント化が顕著になった女性アナは、フジテレビのアヤパン(高島彩)やカトパン(加藤綾子)、TBSの小林麻耶など次々とあざと女子を輩出し、“女性アナという職業自体があざとい女がやるもの”という偏見に満ちたイメージを持たれるまでになる。
「それを変えたのは“あざとくて何が悪いの?”と突き抜けた田中さんと弘中さん。本来、隠すべきことだった“あざとさ”を堂々と披露していく。そこはトップ女優の潔さにも通じますよね。
美に対してストイックという彼女たちの方向性は、女性の反感ではなく共感を呼びます。これが最新型のあざと可愛いで、ここでの“あざとい”は悪口ではなくもう褒め言葉です」(カトリーヌさん)
むしろ、ぶりっ子的な意味合いの“あざと可愛い”は男子へと移行しているのでは、とカトリーヌさん。
「伊野尾慧さんは田中みな実さんに『あざとさの化身』と評されていましたし、なにわ男子はグループのコンセプトが『あざと可愛い』ですから。
元来、男子ウケする若い女子のための言葉だった“あざとい”は、美しく元気な30代女子のものとなり、純粋な意味での“あざと可愛い”は男子のものに。次にランキングを作るときは男子も含めたほうが面白くなるのではと思います(笑)」
取材・文/蒔田陽平
カトリーヌあやこ 漫画家&テレビウォッチャー。著書にフィギュアスケートルポ漫画『フィギュアおばかさん』(新書館)など