「もともとは大のめんどくさがりやで、片づけとかとにかく苦手で……」と話すのは、整理収納アドバイザーのakiさん。
2児の母として忙しい日々を過ごしながらも、フォロワー31万人のインスタアカウントにはすっきりした部屋の写真が並ぶ。
どうやったら自分がラクができるかを追求
「子どもが生まれてから、仕事と子育てと家事で本当にイライラしてしまって。片づけが苦手とはいえ、自分がやらなければ部屋はカオス状態。
もっと自分の時間を確保したい、穏やかに過ごしたい。そんな思いで、“とにかく家事をスムーズに終えられる、すぐに片づく収納を追求してみよう”と。
今までかかっていた家事の時間を、数分でも数秒でも削る! それを念頭に家中の収納を改善していきました」
ヒントにしたのが“日常のイライラ”。
「家事をしてイライラするのは、動作がスムーズじゃないから。イラッとしたことをメモして、『何が嫌だったのか』を掘り下げていきました」(akiさん、以下同)
そこから試行錯誤して、モノと収納のベストポジションを探求した。
「できればその場を動かないままひとつの家事が終わるのが理想。私は“ズボラポジション”と名づけていますが、いかに歩き回らず作業ができるかがポイント。
そこから腕を伸ばすだけ、身体の向きを変えるだけで家事が済ませられないか?収納場所はここで本当にいいのか?など、考えていくんです」
探し物ナシのストレスフリー生活
部屋中がゴチャゴチャの場合、何から手をつけていいものか……。akiさんのおすすめは、「小さな場所から手をつける」。
「例えば、メイク道具の引き出し。毎日使うものなのでモノの取捨選択もしやすいし、達成感も感じやすいんです。
1か所を整理し、探し物をしなくて済むその心地よさを感じると、次第に他の場所も収納を変えたくなります。モチベーションもどんどん上がっていきますよ」
必要なものを、取りたいときに手を伸ばせばすぐ手に取れる収納位置、戻しやすさ。そんな1分1秒の短縮にこだわった“秒片づけ”を意識し、実践するごとに、akiさんの家事ストレスは減っていったという。
「各家庭それぞれに、“秒で片づく”収納の形はあります。家事がスムーズになると、気持ちにも時間にも余裕ができます。『何にイライラしたか』『どうしたら使いやすいか』を考えて、さっそく始めてみてください!」
まずは家事の“めんどくさい”を徹底的に洗い出す
往復回数を減らせば負担も大幅減!
akiさんが心がけているいちばんのポイントは「その家事をするとき、動くルート上に必要なものを配置する」こと。
「動線から外れると、家事がめんどうになる三大ポイント『行ったり来たり』『使うものを探す』『何をすべきか混乱する』が発生します」
例えば、akiさんが家事の中でいちばんめんどうだと感じていたのは洗濯。
その理由は「洗剤がこぼれてイラッとするし、乾いた洗濯物を畳んで、家のあちこちに戻すのも、靴下をペアにするのもおっくう」。
そこで、洗剤容器の厳選や靴下は同じ種類でそろえて、ペアにする必要なく収納、など改善を重ねた。
スムーズな洗濯導線が確立されてからは、洗濯への抵抗感が消えたという。
「以前は洗面所が狭いのが不満で、家を建てたときに失敗したなと思っていたんです。狭くて嫌だと思うと余計に家事ストレスがかかります。でも、動きにくいからこそ工夫のしがいもある。今はそんな後悔もなくなりました」
また、掃除機がけも、いちいち扉つきのクローゼットから掃除機を出し入れするのが手間となり“やりたくない家事”となっていた。
「何かをするとき、手間がかかるとか、ムダな動きがあると“苦手”と感じます。だからすぐに使えるようリビングの壁にかけて、手に取りやすい位置へと変更」
さらに床に置いてあるモノが多ければ多いほど、それらをいちいちどかして、通路を確保しなければならない苦痛も解消。
「床には一切モノを置かないよう、ゴミ箱やソファ代わりに使っている大きなクッションもすべてつったり、立てかけたりして“浮かせて”収納。テレビ台もなくして、壁掛けにしました」
家事の中で、めんどくさい、嫌だと感じるポイントはその人次第。
何もかもがめんどくさい! と思う人ほど家の中には改善の余地がたくさんあるということ。チェックリストを参考に、そうした家事を洗い出してみよう。
セルフチェック「めんどう家事」を洗い出し
□最近家事で、イラッとしたのは?
□最近、探し物をしたのはどんなとき?
□いちばんめんどうと思う家事とその理由は?
□ついつい掃除を放置しがちな場所は?
□掃除を始める前に、気が重くなる原因は?
□いつも使う食器をワンアクションで出せる?
□家族に“あれどこにある?”と聞かれてすぐわかる?
□“あれ取って”とよく言われない?
□家族みんなが使う道具の場所は、全員が把握している?
□家族のものが散らかりがちな場所やタイミングは?
余計なイライラに時間を割かないために“どうすればラクになる?”と考えてみて!
洗濯物のイライラ解消アクション
(1)洗剤は片手で計量でき、なおかつ液だれしない詰め替えボトルに。現在はレックの容器を愛用。
(2)洗濯するもの、乾燥した洗濯物を一時置きできるよう、マグネット式の折り畳みかごを洗濯機前に設置。洗濯機や乾燥機から移すのが簡単になり、しゃがむ必要がないよう腰高に設置。
(3)折り畳みかごから、振り返ってそのまま背面にある収納場所へタオルや下着を収納。開けて閉めるというムダなアクションを減らすために、収納場所に元あった扉は撤去。
(4)タオルや下着は畳まず、放り込むことで、洗濯物を畳んで収納する手間を大幅カット。
最小限の動作で家事が完了するシステムづくりを
ポイントは「どこに何を入れるべきかを明確にする」「取り出すときのことまで考えて配置」の2つ。ここまで整えておけば子どもでも収納のお手伝いができる。
自分や家族の日常を観察する
動きに合わせ収納場所をアレンジ
「片づけは、自分だけが頑張るのではなく、家族それぞれが自分のものを自分で片づけてもらえるようにするのが“自分がラクをして”きれいを保つ秘訣です」
例えばakiさん宅では、忙しい朝や帰宅後に家族がどう動いているかを考えて、収納場所とともに寝る場所をチェンジした。
「昔は家族そろって2階で寝ていましたが、今では1階の和室に布団を敷いて寝るように。ですから、家族全員が毎日ほぼ1階のみで過ごしています。
階段を上がって下りてのアクションがなくなるだけで、着替えもスムーズになり、学習グッズも取り出しやすくなって、最短動線がすごく捉えやすくなりました」
家族それぞれのモノの収納場所については、動線を考えてakiさんがまず場所を提案。それから、実際に使う家族に相談しながら調整する。
「自分のみの考えを押しつけては片づけは長続きしないと思います。相談すると、子ども自身が困っていることや、不便だなと思うことを話してくれて、一緒にどうするかを考えたり、よりよい収納アイデアを提案してくれることも多いんです」
さらに、夫が普段使うものも2階のクローゼットから玄関入って正面の場所へと移動。
「階段下収納は、元は日用品のストックに使っていた場所ですが、突っ張り棒を設置して小物も収納できる夫の簡易クローゼットに変えました」
おのおのの行動に沿った収納法で、夫と子どもの動きがスムーズになり、自分のものは自分ですぐに片づけるように。結果、リビングが家族のモノで散らかることなく、整った状態にキープ。
「とにかくリビングがすぐ片づく。子どもに『コラッ!片づけなさい』と声を上げることは、ほとんどなくなりました」
“ここにあるべき”という固定観念をなくす
思い込みを外すと家事ラクが見えてくる
akiさんの家では、子どもたちのランドセルや学校グッズは子ども部屋ではなくリビング、それもアイランドキッチンのカウンター下を収納場所にしている。
「子どもたちは、下校するとまずリビングにランドセルを置いて宿題やらプリントやらを広げます。そのままになると“戻して”とつい言葉をかけたくなります。
ですから、置きグセのある場所の近くにしたのです。ランドセルを広げたすぐ後ろにしまう場所があるので、一歩も動かず、本人が無理せず片づける習慣がつきました」
また、ダイニングテーブルのすぐ後ろの引き出しには、文房具とともにふりかけが。
「食事中、子どもに『ふりかけ取って』と言われることがよくあるので、そのときに座ったまま取り出せる位置にしまっています。文房具とふりかけ?と驚かれることもありますが、たとえ食品でもキッチンに置いて不便なら、使う場所の近くがいいですよね」
さらに、風呂上がりのドライヤーは、落ちた髪がすぐ掃除できるよう、掃除機が設置してあるキッチンでかけるという。
「え!ドライヤーは洗面所でしょ!? と思いがちですが、髪の毛をサッと掃除機で吸えますし、リビングに近く、子どもの様子が見られるメリットもありますね」
場所と目的に合わせた収納グッズを使い分ける
死角を使い「スッキリ」と「秒片づけ」を両立
使う頻度が高いものをすぐ取り出せるよう、あらゆる収納グッズを駆使。例えば食事をするダイニングテーブルまわりには、ティッシュ類やカトラリーを座ったまま取ることができる位置につるす、かける、マグネットで張るなどして工夫。
「食事中も振り向くだけで取れるので、立って座ってのムダな動作がなくなりました」
他にも、ダイニングテーブルで子どもが勉強をすることから、天板下に手作りの収納を作り付け、毎日使うノートやプリント置き場に。テーブルの脚にも強力アクリル両面テープでペン立てや鉛筆削りを取り付け。
「サッとしまえる場所にあれば、子どもも自分でモノを自然に戻すので、学習が終わればダイニングテーブルの上は何もない状態に」
キッチンの食器棚はアクリルの仕切り棚を使って2段にし、上下それぞれお皿を置けるように。そのうえで、よく使う食器は自分が一番出し入れの動きがスムーズな胸の位置に置き、取り出しやすくするため器の上部に余裕がある量にキープ。
「『すぐ使うもの』は、出しっぱなしにせず、うまくスペースを使ったり、テーブルの下など死角を利用したりして収納。このひと工夫で、帰宅したときにモノがたくさん目に入ってイライラ……ということもなくなります」
見た目に左右されず目的に合わせて厳選
「色の統一感は意識しますが、収納グッズは見た目よりも機能を重視。同じメーカーの手に入りやすい定番品でそろえておくと、買い足しや買い替えも簡単です。使う当てのない収納グッズが増えると、結果、部屋が散らかるので、衝動買いには要注意ですね」
さまざまなグッズの工夫によりリビングに入ったときのスッキリ感を保ちつつ、収納力抜群を叶えたakiさん宅。
「普段から片づきやすい部屋にしておけば、年末掃除もぐんとラクになりますよ。わが家は毎年大掃除なしです!」
すぐ出せるを叶えるおすすめの収納グッズ
使う場所の近くにモノをしまうための便利グッズをご紹介。どれも100円ショップやニトリなど、身近な場所で手に入りやすいものばかり。
1.強力両面テープ
アクリルケースをテーブルの脚にぺたりと付けたり、マグネットの補強にも、ありとあらゆる場所で使える両面テープ。貼ってはがしてができて、さらに粘着跡が残らない“超強力両面テープ 魔法のテープ”を多用している。
2.マグネット付きケース
マグネット付きのケースは引き出しの開閉の手間が省けるほか、そのまま持ち運べる。カトラリーは食洗機周りで洗い上がったものを収納し、食事時にはそのままダイニングへ移動。
3.フック
壁面や扉、バーに取り付けられるものなど、場所に合わせたフックを用意。取りやすく、戻しやすいようつるすのは1フック1アイテムがポイント。
取材・文/仲川僚子