春の園遊会は和装だったが、秋は淡い黄色のスーツの雅子さま(11月2日)

 都心では夏日に迫るなど季節外れの暑さとなった11月2日。東京・赤坂御苑で天皇、皇后両陛下が主催される秋の『園遊会』が開かれた。

5年ぶりの『園遊会』

秋篠宮ご夫妻をはじめとする皇族方が一堂に会し、招待者と和やかに懇談された

「両陛下が各界の功労者を招いて慰労するガーデンパーティーです。コロナ禍の間は開催を見合わせていましたが、今年の春に再開。秋に催されるのは'18年11月以来、5年ぶりでした」(皇室担当記者)

 今回は、シンガー・ソングライターの松任谷由実や、元プロ棋士の加藤一二三、漫才師の西川きよしなど、約1000人が出席した。

「強い日差しが照りつける中、両陛下は約1時間、歓談を楽しまれていました。その間、招待客は立って待っているのですが、みんな汗だくだくで……。ご年配の方が多かったこともあり、体調不良者も出てしまったそうです。春の園遊会よりは格段に穏やかな気候でしたが、暑すぎるのも困りますね」(招待客の女性)

 毎回、招待客が変わる園遊会。雷雨に見舞われた今年5月の園遊会に出席した、レスリングの須崎優衣選手に話を聞いた。

「悪天候で大変だったと思うのですが、両陛下はそういったことを感じさせないくらい、1人ひとりに向き合って丁寧に会話してくださいました。

 東京五輪に関する質問が主でしたが、雅子さまからは“レスリングを始めたきっかけ”や五輪がコロナで延期になった際、どんなモチベーションだったか”といった質問がありましたね。最後には“また次も頑張ってね”とお声がけいただいて……。ご表情も物腰も柔らかく、素敵な方だと感激しました」

 同じく、春の園遊会に招かれた『上原樹苗』代表の上原和直さんは、こう振り返る。

「私は、令和2年度の『農林水産祭』林産部門で天皇杯を受賞したのですが、両陛下から“大変な功績、おめでとうございます”とのおことばをいただきました」

 雅子さまからは具体的な仕事内容を問われたといい、

「サクラやモミジといった自然の植物を種から育て、苗木を生産し、販売していると申し上げると、“種から育てているんですね!”と、驚きつつ興味を示していただきました。皇族方は皆さま植物に対して豊かな感受性がおありでしたが、雅子さまは特に、自然を愛でることを大切にしていらっしゃることが伝わりました」(上原さん)

 このように招待客との交流を楽しまれたこともあり、終了時刻は予定より1時間以上も遅れてしまった春の園遊会。

「令和になってから初めての園遊会だったため、タイムマネジメントに関する課題が残りました。一方、秋は予定どおりの進行となり、春よりも1時間ほど早く終了。両陛下は主催者として、前回の反省を生かされたのだと思います」(前出・皇室担当記者)

注目を集めたユーミンとのご交流

 注目を集めたユーミンとのご交流では、陛下が“好きな曲”に言及されるひと幕も。

「1976年にリリースされた『翳りゆく部屋』がお気に入りのようです。《どんな運命が愛を遠ざけたの》というフレーズで知られる曲ですが、陛下がおっしゃると重みが違いますよね」(宮内庁OB)

 しかし、雅子さまは言葉少なだったようだ。園遊会後に雅子さまの印象を問われたユーミンは、「皇后さまは、わりあい寡黙な方でいらっしゃって。でも、すごく優しくほほ笑まれていました」と振り返った。

 雅子さまはあいづちを打たれるものの、基本的に陛下が会話をリードされていたという。

 元プロテニス選手の吉田(旧姓・沢松)和子さんは、雅子さまとの会話について、「お話ししたかしら。はっきり覚えていません」と申し訳なさそうに語った。

「疲れがしばらく残ることもある」

「雅子さまが終始控えめに交流されていたのは、終了時刻を気にされて……という理由だけではなさそうです」

 そう話すのは、前出の宮内庁OB。

「秋に園遊会が開かれるのは、令和初。秋は行事が立て続けとなる季節で、両陛下が重きを置かれる『四大行幸啓』と呼ばれる公務のうち、3つが行われます。会場は、47都道府県で毎年持ち回りですが、今年はそれぞれ、北海道、鹿児島県、石川県と遠方だったため、ご負担も大きかった。連日の公務でお疲れがたまっている中、“極限状態”で迎えられた園遊会だったともいえます」(同・宮内庁OB)

 今年2月に開かれた陛下の誕生日会見では、雅子さまについて「快復の途上で、体調には波がある」「疲れがしばらく残ることもある」とのご発言もあった。

「園遊会の当日までに、招待客の経歴などを事前に予習する必要もあります。春は余裕を持って準備できた雅子さまも、秋は疲労の蓄積や過密なスケジュールにより、切迫した状況だったのでは」(前出・皇室担当記者)

招待客からの印象は「寡黙な方」「お話ししたかしら?」

 一方で、園遊会での雅子さまのご表情に安心感を抱いた人もいる。元宮内庁職員で皇室解説者の山下晋司さんだ。

マスクをしておられましたが、目元の表情から、ごく自然な笑顔だとわかりました。以前は、笑顔もこわばっておられるように感じることが多かったのですが、最近は園遊会をはじめ、ご視察先などでも自然体の印象です。国民との交流で相手が喜んでくれたことが自信になり、それが自然な笑顔につながり、それを拝見した国民はさらに喜ぶ。そのような相乗効果が感じられた園遊会でした

園遊会で照明デザイナーの石井幹子さん(右から2番目)と交流される両陛下

 今回の園遊会に出席した照明デザイナーの石井幹子さんも、

雅子さまは、お元気になられたようで……とてもおきれいで頼もしかったです。今年1月に亡くなった私の主人は、東京大学法学部の教授でした。

 かつて在籍されていた雅子さまは、そのことをご存じだったようで“在学中に講義は聴けませんでしたが、お悔やみ申し上げます”とのおことばをいただきました」

 石井さんは、'90年代にも園遊会に出席したことがある。

「上皇ご夫妻の時代ですが、そのときはもっと緊張した空気でした。今回はリラックスした雰囲気で。雅子さまとは初めてお目にかかったのですが、本当に和やかで、このような方が皇后であられるのは、日本にとってありがたいことだと実感しました」(石井さん)

 雅子さまの“渾身の愛”は、招待客にしっかり届いている。

山下晋司 皇室解説者。23年間の宮内庁勤務の後、出版社役員を経て独立。書籍やテレビ番組の監修、執筆、講演などを行っている

 

園遊会で照明デザイナーの石井幹子さん(右から2番目)と交流される両陛下

 

秋篠宮ご夫妻をはじめとする皇族方が一堂に会し、招待者と和やかに懇談された

 

'18年、学校の運動会で扇子を持ちながら『千本桜』の曲に合わせ同級生とダンスを披露された愛子さま

 

平成5年1月天皇陛下(当時は皇太子さま)と雅子さま(当時は小和田雅子さん)のご婚約内定記者会見。プロポーズのお言葉は「雅子さんのことは、僕が一生全力でお守りしますから」だったと明かされた

 

天皇陛下と雅子さまはアフリカ開発会議のメンバーを皇居に招きお茶会を('19年8月)。「花かごは幸せを呼ぶ吉祥文様」(日置千弓さん)

 

皇后として初めての園遊会は雨空にも雅子さまの装いと笑顔は晴れやか('23年5月)

 

雅子さまがご静養の際によくお召しになっていたストライプ柄のスーツ。平成18(2006)年7月

 

鮮やかな色と淡い色を対象的に着こなされる雅子さまと紀子さま。平成10(1998)年5月

 

ご結婚30周年となる6月9日に公開された天皇ご一家の“団らん”写真

 

お手植えのお手伝いは『岩手県緑の少年団』の子どもたち。やさしい微笑みで雅子さまはお声がけを 撮影/JMPA