在日三世として東京に生まれ、人気シンガー、クリスタル・ケイ(37)を女手ひとつで育てたシンシア(60)。個人事務所を設立し、娘と二人三脚の日々を送る。
母から見たクリスタル・ケイの転機
「9枚目のアルバムに収めた『Good bye』を作曲してくれたのがJYPエンターテインメントの代表で音楽プロデューサーのパク・ジニョンさん。録音は韓国で、パクさん立ち会いのもと行っています。それはクリスタルにとってひとつの転機になった。
クリスタルのレコーディングには何百回と立ち会ってきたけれど、あんなにうわっと感情を出すのを見たのはあれが初めてのことでした。クリスタルがデビューしたころはCharaさんが人気で、彼女のようにふわっと囁くような歌い方が流行ってた。娘はそれに慣れ、腹から大声を出す、ということをしてこなかった。パクさんはそれが不満で、“もっと感情を出せ!”とさかんに娘を駆り立てます。パクさんが何度もやり直しさせるものだから、娘も次第にイラついてきたようです。あまりにしつこく“感情!”と言われ、そこでうわっと出た声だった。
パクさんはきっと世界を見ていて、こんな歌い方ではこの先クリスタルのためにならないと考えてのことだったと思います。パクさんに引き出された声でした」
海外の大物シンガーと共演!!自宅豪邸に招かれる
「最近になって、パクさんが“日本との縁ができたのはクリスタルのおかげだ”と言っていると人づてに聞きました。パクさんは当時すでに韓国では活躍していたけれど、まだ日本進出前。あのアルバムをきっかけに日本市場にも活躍の場を広げ、その後TWICEやNiziU、2PMなど数々の人気グループを世に送り出しています」
韓国行きの翌年、ライオネル・リッチーとのデュエット曲『エンドレス・ラブ』に参加が決定。録音のためクリスタルとロスに出向く。
「ライオネルのいたバンド『コモドアーズ』は昔からずっと聴いていて、レコードも持っていたし、来日したときはライブにも駆けつけています。だからライオネルとの共演は私の中で特別なものがありました。
ビバリーヒルズにあるライオネルのスタジオに向かいました。ビバリーヒルズの中でもライオネルのお宅はとりわけ大きく、もうお城のよう。観光バスのコースになっているほどです。スタジオはお宅の敷地内にあり、まずそこを訪ねています。出迎えたのは2人のマネージャーで、『ライオネルは支度に時間がかかる。少々お待ちください』と言う。控室で待機していると、お手伝いさんが来ては、コーヒーはいかがですか、お茶はどうですか、と聞かれます。
2時間近く待たされ、ライオネルのご登場です。彼はひと目で娘を気に入ったようで、3テイクで早くも収録を終え、『自宅を案内してあげるよ』と言い出した。ライオネルにエスコートされ、お宅にお邪魔することになりました」
ライオネルは当時二度目の妻と別れた後で、娘のニコールはパリス・ヒルトンとともに週刊誌のゴシップ記事で騒がせていたころだった。
「リビングはオールドイングランド風のシックな雰囲気で、壁にはマイケル・ジャクソンや大統領など著名人との記念写真が並んでいます。目の前にはプールがあり、その向こうには青々としたゴルフ場が広がっている。圧巻のひと言です。ライオネルはご機嫌で、『娘が今日帰ってくる。だから泊まっていきなよ、一緒に飲もう』とクリスタルを誘います」(次回に続く)