「もともと埼玉が好きですし、いいところも多いですから、(映画に携わったことで)特別に“埼玉愛”が深まったということはないですね。なぜ、みなさんがそれほどまでに埼玉をディスっているのかが、いまだにわかりません」
本当の意味でのBLシーンを実現!
'19年に同名のディスマンガを実写化し大ヒットした映画『翔んで埼玉』で麻実麗(あさみ れい)を演じたGACKT(50)。
東京都民から迫害を受けていた埼玉県人の自由のために立ち上がる、埼玉解放戦線のリーダーとして奮闘した麗。みごと東京への通行手形制度が撤廃された3か月後から、待望の続編『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』の物語が展開していく。
前作に続き、麗を愛し、埼玉解放戦線と共に戦った東京都知事の息子で名門私立高校の生徒会長・壇ノ浦百美を演じた二階堂ふみらも続投。
ほかにも、埼玉県に海を作る計画のために関西へ向かう埼玉解放戦線を迎える“滋賀のオスカル”桔梗魁を杏が、関西を牛耳る大阪府知事・嘉祥寺晃を片岡愛之助が演じるなど、豪華出演者が集結した。
「杏ちゃんとの共演は初めてでした。撮影の合間にフランスの好きな場所などの話をしましたね。あそこが良いとか、ここが良いとか。愛(之助)さんの演技を実際に目の前で見たときには、その演技の精度の高さに驚きました」
そう語る愛之助とは“麗の口元から垂れたたこ焼きソースを嘉祥寺がなめる”という濃厚なシーンがある。
「この作品は、もともとBLが主体になっていて。ただ、実際に演じているのはふみちゃんや杏ちゃんという女性たち。
だから、本当の意味ではBLが成立していないかもしれない。そんななか、唯一、からみがあった男性が愛さんだったので。
本当の意味でのBLを表現できるのが、あのたこ焼きソースをなめるというシーンなので、BL感が垣間見える感じに撮りませんかと(武内英樹)監督に話したら、“やってみましょう!”という流れで」
愛之助とも話しながら作っていったという。
「“(ボクが)顔にたこ焼きのソースをつけるので、 それを愛さんがなめまわす感じでやりましょう”とお伝えしたら、“なめていいんですか?”と。
“どうぞ、ご自由におなめください”“じゃ、なめさせていただきます”“ちょっと(なめが)足らないかもしれないですね”みたいな(苦笑)。そういうことをまじめにやってました」
麗との共通点は顔と適応能力
前作と同様、全力でまじめに演じる役者たちにクスクスと笑ってしまうシーンが続く。
「ボクら(俳優)は、ひたすら真剣にやっているだけなので“これは面白いものになる”と実感することがないんですよ。
監督がやりたいことや、求めていることに100%応えているとは思うのですが、それがはたして面白いものになるかどうかっていうのは、おそらくボクだけじゃなくて、ほかの役者の方たちもわかっていない。
それに、現場を面白くしようと思って演じる役者は、監督に怒られる。どうしても、現場で面白いと感じるものは身内ウケする内容になってしまうことが多いので。スクリーンの外に届く面白さっていうのは、客観性が非常に必要なんですよ」
自身の演技が不安になると、監督に確認した。
「“これで大丈夫ですか?”と聞くと、監督がニヤニヤ笑っている。“いや、いいですね~”という言葉を聞いて、これでいいんだと思えるんです。それは、前作も一緒。
ボクは終始、映像をチェックするモニターの前で“くだらない”と言っていたと思います(苦笑)。基本的に、監督にこういうことをやってほしいと言われたときに、“それはできない”というやりとりはない。求められたことは全部やるので」
前作で作り上げた麻実麗を今作でも忠実に演じている。それは、旋風を巻き起こすほどに全国に広がっていった映画ファンへの熱い思いから。
「麻実麗を好きな人がたくさんいるので。(続編だから)バージョンアップだと考えて過剰表現するとキャラクターが壊れる、もしくは見えなくなる。それがいちばん本末転倒なこと。
たぶん、ふみちゃんも同じで、すごく大きなキャラクターの変化ということをなるべくやらないようにしていると思います。愛してくれている方たちを裏切りたくない思いが強いと思うので」
役作りへの熱い思いを語ってくれたGACKTに麗との共通点を聞くと、
「顔ですかね……。あとは、目の前で起こるトラブルに対して、自分のできる限りの方法で解決していく、いわゆる適応能力というか、包容力という部分は似ているんじゃないですか」
白い砂浜を手に入れたいと和歌山へ向かう麗たちのように、自身が計画していることや、最近、起こった事件を聞くと驚く話が!
「釣りが好きなので、(移住先の)マレーシアで池を買おうかと真剣に考えていたことがあります。正直、いまだに考えています。
これもマレーシアでの出来事ですが、ワニがいるといわれているジャングルの中で釣りをしている最中に、ボートから転落しまして。おそらく落ちてからボートに戻るまでの時間は世界最速でした」
GACKTの口から出たエピソードにビックリしながら、最後にさらなる続編を期待していると伝えると「全力で阻止させていただきます……」と真顔で返してくれた。
映画に関してGACKTにQ&A!
――映画の舞台のひとつ“琵琶湖”での思い出は?
毎年、ルアーフィッシングに行きます。4台ほどバスボートを使って、仲間たちと釣りをするってことが定期イベントになっていて。
仲間のひとりに「船酔いは大丈夫か?」と聞くと、「問題ない」と言っていたのですが、出航して3分後にはゲロまみれでした。
――劇中に出てくる吉本新喜劇のネタ。特に印象に残っているものは?
埼玉解放戦線の下川信男を演じる加藤諒くんが、ある理由から身体を張った新喜劇のギャグをするんです。
失敗しないように、本番前にひとりで一生懸命、何度もギャグの練習をしている彼を見たときに、「大丈夫か?」と心配になりました。
――クランクイン時に感じたこと
(体調不良と発声障害の治療で活動休止後の仕事)声の調子が100パーセント戻っているわけではなかったので、どれぐらいもつのかなとか、不安はありました。とにかく、やれるだけのことはやろう、やってしまおうという気持ちでした。
(c)2023 映画「翔んで埼玉」製作委員会
撮影/矢島泰輔
ヘアメイク/タナベコウタ
スタイリスト/大友洸介