宝塚歌劇団の本拠地である『宝塚大劇場』。徒歩圏内に多くの団員が住む『すみれ寮』も(写真/産経ビジュアル)

 今年9月末、宝塚歌劇団の劇団員女性・Aさんが自宅マンションから身を投げ、命を絶つという痛ましい事件が起こった。Aさんは同2月、「週刊文春」(文藝春秋)に、上級生からヘアアイロンでやけどを負わされたと報じられた宙組の娘役だが、劇団側は一貫していじめを否定。11月14日に行った会見でも、外部の弁護士による調査チームによる報告書を読み上げ、「故人に対するいじめやハラスメントは確認できなかった」と明言した。

 Aさんの遺族側や世間からは再検証を求める声が上がっている中、SNS上では、過去にタカラジェンヌの私設FCの運営スタッフをしていた人物のブログが注目を集めている。

 宝塚歌劇団は11月14日、Aさんが自死した事件について記者会見を開催。上級生によるいじめ・パワハラは完全否定し、これらは≪指導≫であると説明したうえで、≪必要性が認められ、想定の範囲内≫と結論付けた。

 一方、≪長時間の活動と上級生からの指導が重なり》≪精神障害を引き起こすような心理的負荷が故人にかかっていた可能性が否定できない≫として、劇団員の安全配慮義務については≪極めて不適切な部分があった≫と責任を認め、今後は≪劇団員の負担を減らすため稽古や公演のスケジュールを見直す≫という対策を掲げた。

「つまり劇団サイドは、Aさんの自死の原因は、過密スケジュールにあったとしたわけです。『文春』を中心に週刊誌には劇団関係者からのいじめ・パワハラ告発が相次いでいるだけに、これを『はい、そうですか』と受け取る人はほとんどいないのではないでしょうか。

 ほかにもSNS上では、ヘアアイロン事件について、劇団側が≪劇団内では日常的にある≫と一蹴したこと、また宙組生4人が外部調査チームの聞き取りを辞退した理由を明かさなかったこと、さらには、再検証を要求する遺族に対し、≪そのように言われているのであれば、証拠となるものをお見せいただけるよう提案したい≫と挑発するようなコメントをしたことに批判が噴出している状況です」(芸能記者)

 そんな中、SNS上ではいま、タカラジェンヌの私設FCの元運営スタッフが、そのブラックすぎる実態を告発したブログが、人々を戦慄させている。

 そのブログのタイトルは≪ジェンヌの個人FC運営で鬱になった話≫。宝塚歌劇団には、阪急電鉄株式会社が運営を行う「宝塚友の会」以外に、タカラジェンヌ個別の私設ファンクラブ、通称「会」が存在しているのは有名な話だ。この「会」のスタッフは、タカラジェンヌの入待ち・出待ちを取り仕切ったり、公演チケットの取次、タカラジェンヌとファンの交流の場となっているお茶会の運営、グッズの製作を行うほか、「代表はタカラジェンヌのマネージャー的役割を担う」(前・同)そうだ。

「一般には信じがたい組織かもしれませんが、このスタッフは無給が当たり前。つまり“贔屓”(いわゆる推しの意)に対するファンの愛で成り立っているのが、この『会』というわけです。時間的にも金銭的にも余裕のあるファンがスタッフをしているのかなと思っていたんですが、今回、ブログを書いた人物は≪平日フルタイム会社員≫というから驚き。≪睡眠時間も金も体力も心の余裕も何もかもなくなった。倒れて運ばれ、スタッフを辞めた≫と明かしています」(前・同)

 ブログでは、投稿主が担っていた業務の詳細もつづられている。入待ち・出待ちは≪毎朝7時前後、早いときは6時前に毎朝集合場所で立ち合いをして会社に出勤≫し、夜にはまた出待ちに立ち会うという日々を過ごしていたそうだ。タカラジェンヌから翌朝の入り時刻の連絡が来るのは平均深夜1~2時、その後、ファンクラブ会員への情報発信、他ファンクラブ運営への報告を行っていると≪3時を回るのもザラ≫で、≪毎朝5時前には起床≫≪公演期間中は1日1時間眠れたら御の字≫というだけに、そのハードさは想像するに難くないだろう。

亡くなった劇団員が出演していた舞台。死の翌日には公演の中止が発表された

「またイベントの企画・運営においては、上級生会(上級生の私設FC)に≪逐一お伺いを立て、実施許可を得、内容も重箱の隅を最早ぶっ壊れるまでつつかれまくる≫といい、≪ようやく実施まで漕ぎつけたと思ったらジェンヌ本人の機嫌ひとつで全部イチからやり直しになる≫そう。グッズ製作でも本人や会員からダメ出しを食らい、さらには≪毎回数万~場合によっては数十万円も立て替える≫こともあるといいます。会の中には、派閥争いや揉め事もある中、≪何故か同じ運営という立場で苦楽を共にしている他会運営やジェンヌ家族・関係者対応など、これが本当に一番きつかった≫と吐露していました」(前・同)

 Aさんの自死に関する一連の報道により、宝塚には厳しい上下関係が存在していることが世間に広く知られることになったが、投稿主いわく≪ほぼその文化がそのまま会運営にも持ち込まれている≫とのこと。

「投稿主の≪何が愛だ。何が清く正しく美しくだ。何も清くも正しくも美しくもない。ただのパワハラ過重労働異常上下関係いびりしごきいじめ。社会的な常識が一切通用しない、異常な文化が形成され受け継がれ、異を唱えるものは全て排除され隠蔽されてきた≫という痛烈な組織批判は、多くの人々に衝撃を与えたようです。SNS上ではこのブログが大拡散されており、

≪完全に解体したほうがいい≫
≪言葉にならない内容に呆然としました≫
≪流石にこれを無償のボランティアでやってるのはアカンやろ≫
≪噂で聞いたり想像してたののはるか上を行く壮絶さ≫
≪ファンタジーの世界なのか目を疑ったけど現代の日本で起きている話ということが胸にブッ刺さりました≫

 など、私設FCの実態にショックを受けたという人の声が飛び交っています」(芸能メディア編集者)

 このように一般のファンが無償でファン組織を取り仕切るというのは、宝塚だけでなく、旧ジャニーズ事務所にもある文化だという。

「旧ジャニーズのファンが、タレント個人の私設FCを作っているわけではないのですが、『オリキ』と呼ばれる追っかけファン集団を取り仕切る『トップ』という存在がいます。すでに死語になっているものの、旧ジャニーズのファンにはよく知られた話ですよ。

 帝国劇場などで公演が行われた後、会場周辺で、女性ファンが列を作り、その前でタレントが話をする……という光景を見たことある人はいないでしょうか。それを仕切っているのが『トップ』です。事務所サイドはこれを黙認しており、『トップ』とはある程度つながっているとみられます」(前・同)

東京宝塚劇場での入り待ち。ファンを整列させ、生徒への手紙を順番に渡すよう促すのも会の仕事

 オリキ集団、または「トップ」は、ストーカーじみた悪質なファンを制裁する役割を担っていたそうで、「事務所にとってはある意味、ありがたい存在なのではないでしょうか」(前・同)という。

「とはいえ、一般の人から見ると理解しがたい世界でしょうね。宝塚の私設FCの中には、健全な運営がされている会もあると思いますが、これだけ大々的に物議を醸すと、今後メスが入るかもしれません」(前・同)

 批判の矛先が、劇団だけでなく私設FCにも向けられるようになった宝塚。劇団側の再検証の有無とともに、今後の展開を注視していきたい。