「もし、あのバンドが再結成してくれたら……」
推しバンドに対し、ファンがこんな思いを持つのは世の常。だったら誌上で実現してしまいましょうと、アンケート順位をもとにカウントダウン形式で出演順を決め、『紅白“バンド”歌合戦』を勝手に開催! 音楽評論家・スージー鈴木さんと一緒に妄想を広げながら、夢のバンド紅白がスタートです!!
渋谷系を代表するユニット
白組トップバッターは13位のTHEE MICHELLE GUN ELEPHANT。彼らを語る際に外せないのが、'03年の『ミュージックステーション』での事件。
「ロシアの女性デュオ・t.A.T.u.が出演をドタキャンしてしまい、穴埋めで彼らが『ミッドナイト・クラクション・ベイビー』を演奏しました。音楽番組史上、あんなにカッコいいパフォーマンスはない! バンド紅白はぜひこの曲で、因縁のあるt.A.T.u.にも出てもらいましょう」(鈴木さん、以下同)
対する紅組トップバッターは13位のチャットモンチー。ノリのいい『シャングリラ』で華々しく幕開け。
「女性だけのスリーピースバンドですが、楽器の組み合わせや編曲がすごくユニークで素晴らしいんです」
続いて白組は同じく13位のBLANKEY JET CITY。'90年に『三宅裕司のいかすバンド天国』で第6代グランドイカ天キングに輝き、不良のカッコよさで人気を誇った。人気曲『赤いタンバリン』でロックの衝動を再体験したい! 紅組12位は今は女優の濱田マリがボーカルを務めたモダンチョキチョキズ。
「関西出身のにぎやかなバンド。『自転車に乗って、』も底抜けに楽しい曲なので、歌合戦を盛り上げてくれるはず」
そして序盤の目玉が、白組12位のフリッパーズ・ギター。小沢健二と小山田圭吾による、'90年代の渋谷系を代表するユニットだ。
「聖地だった渋谷、例えばタワーレコードのイベントスペースから中継で『恋とマシンガン』が聴きたいですね」
次いで紅組11位は『夏祭り』が'00年に大ヒットしたWhiteberry。
「北海道北見市出身の彼女たちは、北見を全国に知らしめた立役者。活動時は中高生でしたから、大人になった今の姿を見たいですよね」
白組11位は今や本物の紅白に毎年出場する星野源と、俳優としても人気のミュージシャン・浜野謙太らが組んでいたSAKEROCK。
「バンド時代に大人気というよりは、メンバーの人気ですね。白組の中では若手なので、本来なら本編前の前座が妥当かも(笑)」
タイムリー、再評価など“玄人好み”のバンド
コアな音楽ファンの注目の的となりそうなのが、紅組9位のサディスティック・ミカ・バンド。'74年に解散したが、'89年に桐島かれんを、'06年には木村カエラをボーカルに迎えて再結成している。
「ボーカルは初代のミカが一番。素人っぽい舌たらずのボーカルが魅力です。加藤和彦さんや高橋幸宏さんなど、のちに大成功するミュージシャンが集まった歴史的意義も大きい。個人的には『タイムマシンにおねがい』でトリを取ってもらいたいくらい」
別格ということで、特別企画枠での出場でもいいかも。続く白組10位は宮沢和史率いるTHE BOOM。
「『島唄』には反戦メッセージが込められているので、ウクライナやガザ地区の戦争が続く今、より意味を持ちますね」
同票数で紅組9位のLe Couple。夫婦の離婚で活動終了したが、ここは水に流して再結成を。
「『ひだまりの詩』は'97年のドラマ『ひとつ屋根の下2』の挿入歌でした。'90年代、ドラマ最強時代の遺産ですよね」
対する白組9位は'90年に『さよなら人類』が大ヒットした、たま。
「実は今、再評価ブームが来ています。当時は色モノ扱いで一発屋として消費されましたが、一部では日本のビートルズという声も。全員が曲を書けて、独創性もある。今こそ、たまの音楽に耳を澄ませてみては」
紅組8位は一気に若返ってZONE。'01年のヒット曲『secret base~君がくれたもの~』に《10年後の8月》という歌詞があり、'11年に再結成した。
「今回は《22年後の12月》という歌詞にして再々結成を。Whiteberryとは同じガールズバンドで北海道出身というのも似ているので、並んだところも見たい。新球場のエスコンフィールドから中継で!」
白組8位はTOKIO。山口達也と長瀬智也の脱退以降、音楽活動は行っていない。
「曲は『AMBITIOUS JAPAN!』を。筒美京平さんの最後のオリコン週間1位獲得曲で、なかにし礼さんの未来を見ている歌詞がいいんですよ。東海道新幹線のチャイムに使われていましたが今年2月で終了してしまったので、新幹線からの中継でお願いしたい」
さて、妄想によるバンド紅白も折り返し。紅組7位は『東京は夜の七時』で知られるピチカート・ファイヴ。
「フリッパーズ・ギターと並んで渋谷系のトップを張ったバンドですから、こちらも渋谷のタワレコから中継で。本物の紅白は7時20分から始まるので、こちらの紅白でも『東京は夜の7時20分』と替えて、本編の最初に出てもらう手もありです」
続いては白組7位の爆風スランプ。
「コミックバンドのイメージが強いですが、江川ほーじんという初期のベースがファンキーですごく演奏がうまかった。『Runner』はサンプラザ中野くんが脱退する江川さんに向けて書いた曲なんですよ」
紅組6位はLINDBERG。
「曲は'90年のドラマ『世界で一番君が好き!』の主題歌だった『今すぐKiss Me』で。三上博史さんと浅野温子さんが渋谷のスクランブル交差点でキスするシーンは印象的でした。ここは渋谷スクランブル交差点から中継で、今の2人にキスしてもらいましょう!(笑)」
衝撃的な演出に続き、白組6位のシャ乱Qが『ズルい女』で盛り上げる。
「'96年の紅白で、キーボードのたいせいが天井から宙づりになって高速回転するパフォーマンスをしたんです! もう一度見たい」
現在は声の出なくなったつんく♂の歌声が聴け、ボルテージが上がったあとは紅組5位のEvery Little Thingでしっとりと。
「ミリオンヒットした『Time goes by』は'98年発売ですが、日本でいちばんCDが売れた年でした」
白組5位は名バラード『粉雪』を引っ提げてレミオロメンが登場。雪の降る地方からの中継で見たいけれど……鈴木さん的には出演順に異議あり!?
「SAKEROCKと同じで、レジェンドばかりのメンツの中では前座かも(笑)」
“伝説”がめじろ押し怒濤の後半戦へ突入
ステージも終盤戦へ。紅組4位は小室哲哉率いるglobe。歌手として復帰準備中というKEIKOの超高音ボイスを再び。
「曲は'96年にダブルミリオンを記録した『DEPARTURES』で。余談ですがTBSの番組『学校へ行こう!』でglobeのパロディーで軟式globeというのがありましたね。ここは彼らにも出てもらって、公式(硬式)globeとの競演を実現させたい!」
対する白組4位はTHE BLUE HEARTS。鈴木さんは、格差が広がり多様性が求められる今の時代にこそTHE BLUE HEARTSの歌詞が響くと言う。
「『TRAIN-TRAIN』の《弱い者達が夕暮れさらに弱い者をたたく》、『青空』の《生まれた所や皮膚や目の色で いったいこの僕の何がわかるというのだろう》というメッセージが胸に迫ります」
紅組3位はこの企画だからこそのZARDが登場。ボーカルの坂井泉水さんが生前、めったに人前に出なかったことから、待望視されているのだろう。
「曲は『揺れる想い』がいいですね。一色紗英さんが出ていた'93年のポカリスエットのCMソングだったんですよ。坂井さんと一緒に、今の一色さんもサプライズ登場してほしい」
続いて白組3位は、ベースのHEATHさん急逝のショックが広がったばかりのX JAPAN。バンド紅白ではフルメンバーでの『紅』を見たい。鈴木さんはYOSHIKIのビジネスの才覚も評価する。
「バンドブームの中で単に売れるだけでなく、自ら会社を立ち上げてロックをビジネスとして成立させた功績は大きい」
紅組2位は'96年に『そばかす』がミリオンヒットしたJUDY AND MARY。YUKIの歌声で名曲をもう一度。
「個人的には切ない曲の『クラシック』もおすすめです」
白組2位は今年でデビュー40周年のチェッカーズ。アイドル的存在だったが、バンドとしての実力は突出していた。
「演奏はうまいし、全員コーラスができて、ハーモニーも美しい。『涙のリクエスト』に加えて、いちばん売れたシングルの『ジュリアに傷心』も聴きたい」
そして紅組のトリ、堂々1位はプリンセス プリンセス。東日本大震災復興支援を目的に'12~'16年に再結成したが、根強い人気を誇る。
「ガールズバンドの先駆けですよね。'89年のシングルの年間売り上げのトップが『Diamonds』で、2位が『世界でいちばん熱い夏』。プリプリが制覇した1年でした。あのとき青春を過ごした人にとっては、一生もののバンドなのでしょう」
白組1位、妄想バンド紅白のオーラスは、活動期間7年という伝説のバンドBOOWY。氷室京介と布袋寅泰、二大カリスマの共演を熱望する声は絶えない。
「'86年の武道館ライブで氷室が言った“ライブハウス武道館へようこそ”が有名ですね。この紅白では“ライブハウスNHKホールへようこそ”と言ってほしい! 『Marionette』『B・BLUE』『ONLY YOU』をメドレーで」
往年のファンは感涙必至! さて、軍配はどちらに?
「紅組も豪華メンバーですが、THE BLUE HEARTS、X JAPAN、チェッカーズ、BOOWYの並びは最強。白組の優勝でしょう」
どのバンドも現実での復活を期待したいけど、バンドが復活する事情とは?
「実情は測りかねますが、金銭的な問題だったり、何万人からの喝采の快感を忘れられないというのもあるでしょう。昔は再結成はあまりなかったですが、甲斐バンドが'96年に期間限定で復活し、計5回も再結成して。そのあたりから、ファンや世間が再結成を受け入れるようになりました」
令和のバンドと平成のバンドの違いは何だろうか。
「デジタルで楽曲を作って配信するという米津玄師さんのようなスタイルが多くなった今の音楽シーンでは、バンド自体が少数派に。平成バンドが支持されるのは、あの時代へ郷愁の念といえるでしょう。逆に今、バンドの生演奏は打ち込みには代えられない魅力が詰まっている。もちろん妄想紅白もすべて生演奏で決まりです!」
(取材・文/小新井知子)