個性的な作品がそろった10月クールドラマだが、そのラインナップに異変が起こっている。大半が漫画原作ドラマなのだ。日本テレビ系の『セクシー田中さん』やTBS系では『フェルマーの料理』、フジテレビ系では『パリピ孔明』……と、民放各局で最低週1本以上が放送中。NHKを見ても『ミワさんになりすます』が放送されるなど飽和状態となっている。
10月クールは半数以上が漫画原作
「調べてみると10月クールはBSなども含めると約49本のドラマが放送されているのですが、うち約27本が漫画原作でした。半数以上というのは過去に聞いたことがないですし、やはり多すぎる気がします」
こう話してくれたのは、多数の媒体でドラマの記事を執筆するコラムニストの小林久乃さん。その要因のひとつが、近年のドラマ枠の増加にあるという。
「以前は、連ドラが終了したらDVD化して販売するしか作品の行き先がなかった。でも今は、放送したら動画配信サービスで売るという流れができたため、収益を上げるため本数が増え、制作側もこれまで以上に数を作らなければならなくなった。以前、ドラマ関係者に聞いたのですが、漫画原作は小説と比べて絵があるので作りやすいし、企画も通りやすいそうなんです。だから余計に、漫画に頼らざるをえなくなってきているのだと思います」(小林さん、以下同)
ドラマ化を断るケースも
漫画原作が増える一方で、かつてはコミックの帯に“ドラマ化決定!”と誇らしく謳われていたが、それも減ってきたと小林さん。
「漫画編集者によると、連載が始まって数話でテレビ局からドラマ化したいと連絡が来ることもあるそうです。昔はドラマ化されるとコミックが売れるし、出版社としても華々しいことだったのに、今は逆に断るケースも。それくらい当たり前になってきているのだと思います」
こういった原作ありきの作品が増えると、ドラマ界にどんな影響を与えるのだろうか。
「質の低下とまでは言いませんが、これだけ増えるとテレビ局にも危機感はあると思います。というのも、『VIVANT』もそうでしたが、話題になる作品はやっぱりオリジナルのほうが多い。でも、制作まで長い時間がかかるし力量も必要だけど、中堅以上の人気の脚本家は早い段階から押さえられている。
しかも、ドラマの枠が増えてきているという状況もあり、各局、力のある若手脚本家の育成に乗り出してきています。だから近年どの局も、新人を発掘するシナリオ大賞にさらに力を入れるようになってきたんです。もちろん漫画原作の作品にも面白いものはたくさんありますが、オリジナル作品も書けるような脚本家の充実も必要になっているのだと思います」
来年1月クールも『リビングの松永さん』(フジテレビ系)など漫画原作のドラマが放送予定。ブームは今後も続いていくのか?
「ドラマは結構早くから企画が動いているので、少なくとも数年は続くのではないでしょうか。もちろん、“オリジナルだからいい”とかそういうことではありませんが、極端に偏るのはやはりどうかと。要は何事もバランスなんだと思います」