若者の新聞離れが伝えられて久しいが、実はここにきて新聞を購読する若い世代が増えているという。
「全体的には新聞の発行部数や購読者数は減る一方なのですが、若年層の割合が微増しているんです。ある新聞社が行ったアンケートによると“本当に必要なニュースだけ読みたい”というのが理由だとか」(全国紙記者)
例えば『読売新聞』全国版の読者年齢層の割合は、60代が最も多く21・9%、次いで50代の18・5%、40代の17・8%で、30代は9・2%(昨年の調査によるもの)。年齢層の高い世代に、より多く読まれている傾向にあるが、20代は13・5%と30代よりも多いのだ。
「『あやなん』って誰やねん」
ネットニュースで事足りるとばかりに、紙の新聞を読まない若者が多いといわれていたが、今は逆にネットニュースを見たくなくて新聞に回帰しているというのだ。
新聞の購読を始めたという20代に理由を聞いた。
「連日知らないユーチューバーや、ブロガーなどのどうでもいい日常がトップニュースになることに危機感を覚えました。その裏ではインボイス導入があったり、増税が行われていたり、扶養控除制度の変更など知るべきニュースがある。
新聞のサイトでは才賀紀左衛門や東海オンエアなんか出てきませんから。だいたい『あやなん』って誰やねん。あんな人たちのニュース知りたくもないです」(24歳・男性)
「いくら無料だからといって、知らない人の知らないニュースを見るほど時間の無駄はない。新聞社のオンライン記事は無駄がないので読みやすいことに気づいた。月額数百円だし、移動中に読むようにしています」(19歳・男性)
「テレビは偏向報道が多いように思いますし、NHKも信用できない。かといって新聞が正しいとも思っていません。自分は朝日、読売、毎日と系統の違う3紙を読み比べて世の中の情勢を勉強しています。1紙だけでは信用できません」(21歳・女性)
投票率にも影響
タイムパフォーマンスを重視する今どきの若者に、ネットニュースは“タイパが悪い”と思われているようだ。
事件ジャーナリストの千葉春子さんは、
「昔は情報の大きさを知るために新聞を読め、と親や先生から教わったものです。新聞を読まない若者はどうやってニュースの重大さを判断するのかと思って尋ねたら“いいねの数”や“PV数”と言われて恐ろしくなりました。
情報源が曖昧なニュースだとしても、多くの人に読まれていたらそれが“真実”になってしまいます」
さらに、こんな危機感を覚えていたという。
「アメリカではもともと全国紙より地方紙が主流でしたが、新聞社が経営難に陥り廃刊になった地方では選挙の投票率が激減するという現象が起きました。立候補者の情報が有権者に届かないとなると、投票率が下がるのは当然のこと。日本でも立候補者の情報が少ないゆえ、ネット上の知名度でガーシーやタレント議員などが当選してしまっています。
そんな中での若者の新聞回帰は明るいニュースですね」
情報過多の時代だからこそ、大切な情報を選ぶ目を養ってもらいたい。