サッカー日本代表 X公式アカウントより

「そもそも正規で日本国内で見る手段がないんやから仕方ない」
「違法配信だろうが視聴する分には罪には問われないし有難く見させていただく」
「迷惑系の人もたまには役に立つ」

 サッカー日本代表は、21日深夜キックオフの'26年ワールドカップ北中米大会アジア2次予選でシリア代表を5-0の大勝で下した。SNS上には日本代表のかつてないほどの強さを称讃する声が多いが、冒頭のように試合以外の点についての言及も多々あって──。

「久保建英に伊東純也、今回は負傷のため離脱していますが三笘薫を擁する現在の日本代表は“史上最強”という声も多い。2戦連続5得点含み8連勝で年内最終戦を終えました」(スポーツ紙記者)

 しかし、この日本代表対シリア代表戦、日本国内では見る術がなかった。放映権料の問題だ。

「日本サッカー協会の田嶋幸三会長は試合後、経緯を説明。放映権はシリアのサッカー協会が持っており、代理店が放映権料を吊り上げたことによって国内放映の調整ができなかったとのことです」(前出・スポーツ紙記者)

日本国内では見る術がない試合をなぜ視聴できたのか

 しかし、SNS上では「試合を見た」人は非常に多い。どのようにして……。

「この試合はカタールの国営放送がウェブ上で生配信していましたが、日本国内からは視聴できない仕様となっておりました。国内での放送・配信が難しいことが判明した時点でサッカーファンを中心にさまざまな視聴方法がSNS上で検討・共有されており、カタールの国営放送の配信もその1つで、かなり期待が寄せられていました。しかしそこでは見られないと判明し、多くの人が流れたのがYouTubeでの“違法配信”です」(サッカーライター、以下同)

 日本時間21日深夜から明けて22日にかけて行われた今回の試合。YouTubeではカタールの放送を生配信するチャンネルが続出した。

「YouTubeだけでなく中国系・韓国系のサイトなどでも生配信されており、全体でどれだけの視聴方法があったか把握することは難しいですが、YouTubeだけでも生配信しているチャンネルは10個以上ありました。そのどれもがカタールの国営放送などの“正式”の動画を勝手にアップロードしているもの。いわゆる違法配信です」

 シリア戦を違法配信しているチャンネルはほぼすべてシリアの公用語であるアラビア語によるものだった。しかし、そこに群がったのは日本人だ。

カタールの国営放送が配信する動画を転載アップロードするものなど、勝手に生配信するチャンネルは複数存在した

生配信のチャット欄は日本語で埋め尽くされて

「国内で放送がなかったため、生配信のチャット欄には日本語のコメントで埋め尽くされていました。そのなかには“感謝”を示すスーパーチャットを送る人も。違法配信していたチャンネルの同時視聴者数は多いところで10数万人が集まり、YouTubeだけで全体で30万人は下らない人がシリア戦の違法配信を見ていたことに。YouTube以外も含めたら、さらに多い数になるでしょう。しかもその大多数がおそらく日本人。国内から視聴できる正式な配信もあったのですが……」

 放映権等の権利関係をクリアにした海外の配信はあり、それは日本国内からも視聴できた。有料ではあるが。

「『Fanseat』というスポーツ系のサブスクによって有料で配信がなされていました。1試合ごとに買い切りができて、シリア戦の視聴はペイパービューで4.5ドル。違法配信を嫌ってちゃんとこちらでお金を支払い試合観戦した人も少なからずいました」

 しかし……。誰だって金は惜しい。払わずに済むなら払いたくない。それは人間としての心情か。冒頭のように多くの人はYouTubeの違法配信で、久保の美しいミドルを、伊東純也のチャンスメイキングとアシストを、上田綺世のストライカーらしいゴールを“目撃”した。

「不当な放映権の吊り上げはいかがなものかと思いますが、サッカーもテレビ放映も結局はビジネス。お金がないと成り立たない。“違法でもなんでも見られればいい”、“正式な配信があろうがお金がかかるなら、無料の違法配信を選ぶ”という人が多ければ、さらにどんどん試合の放映が難しい状況になるかもしれない。悲しいのは、今回の試合は平日の深夜にキックオフだったわけです。ワールドカップであったり、その出場が決まるような試合ではない。すなわち生での視聴層はある程度のコアなサッカーファンが中心だったでしょう。一般の人よりサッカーに興味があるだろう人たちがこのような態度だった」

“ここで見られる”という違法配信の共有・拡散はSNSで散見された。そして違法配信を楽しんだのは一般のサッカーファンだけではない

「日本サッカー協会やJリーグとも仕事をしている名物キャスターのジョン・カビラさんも“怪しいサイト経由で応援ネット観戦中!!”などと拡散していました。確かに違法といえるのは放映権や著作権を無視して勝手にアップロードする配信者であって、配信を視聴者が見るのはまた異なる話かもしれません。ただサッカーに関わる人が堂々と悪びれず拡散するのは……。少年たちに教えるサッカー指導者にも拡散している人が多く見られ、子どもたちに何を教えられるのかと。

 サッカー関係者以外にもフォロワーが万単位おり、立場や所属を明らかにしているビジネス系アカウントなども平然とポストしていましたが、リテラシーはどうなっているのかと。民度が低すぎると言わざるを得ないですね……」

“史上最強”といわれる国の代表たちの応援。正直者が馬鹿を見る──でいいのだろうか。