揺れる宝塚歌劇団(写真/産経ビジュアル)

「あの人が宙組を変えた、いや、壊したんです……」

 悲痛な声でそう語るのは、ある宝塚関係者だ。宙組の娘役だったAさんが転落死したことを機に、宝塚歌劇団の“いじめ・パワハラ”体質が明らかになりつつある。

 発端は、9月30日に転落死した現役タカラジェンヌだったAさん。彼女は上級生からのいじめや、寝る時間がないほどの過重労働が原因で、自宅マンションから飛び降りたと報じられている。

 その後、宙組公演は中止となり、宝塚の理事長らが11月14日に会見を開いた。

過重労働は認めたものの、パワハラやいじめは全面否定。遺族側が再検証を求めたことについて、新理事長の村上浩爾氏は“証拠となるものをお見せいただくよう提案したい”と開き直りました。会見後、むしろ宝塚への批判は高まっています」(スポーツ紙記者、以下同)

 幹部の不誠実な態度には、タカラジェンヌの中からも怒りの声が上がっている。

宙組の有志がパワハラ環境の是正を求める意見書を提出していたのに、会見では無視されたのです。11月16日には宝塚の雪組生が集まり、新理事長やプロデューサーと話し合う場が設けられました。しかし、その場で新理事長は“法的にはパワハラに該当しませんが、いじめはあったのでしょう。一昨日の会見では言いませんでしたけど”と衝撃の発言。劇団員たちは唖然としていたそうです」

 つまり、会見ではウソをついていたことになる。さらに別の日には、裏方でもちょっとした騒動が起こっていたと11月30日発売の『週刊文春』が報じている。

 なんでも、演出を担当する藤井大介氏が稽古場と同じフロアにある休憩スペースにお酒を持ち込み、花組の上級生たちと飲み会を始めたそう。その様子を見た下級生が抗議すると、上級生は「先生(藤井氏)に対して言い方が失礼。先生に謝れ」と“逆ギレ”したというのだ。人命が失われたというのに、反省しているとは思えない状況。宝塚が自浄できる日はいつになるのか……。

宙組の陰湿いじめを蔓延させた張本人

 そんな中、冒頭で発言を紹介した宝塚関係者が主張する、陰湿ないじめを蔓延させた人物とは─。

元トップスターの真風涼帆さんが宙組の体質を変えてしまったのだと思います。彼女はいじめのターゲットに“みんな、貴方のことを悪く言ってるよ”とか“貴方のそういうところが嫌いなんだよ”と伝えるなどして泣かせていました。ただ、自分ではほとんど手を下さず、ほかの団員に指示を出していじめを実行させるのです。宙組では誰もが真風さんに怯えていました

元宙組トップスターの真風涼帆(オフィシャルファンクラブより)

 真風は5年7か月にわたって宙組のトップに君臨。絶大な影響力を持っていた。

「トップ娘役の星風まどかさんに“今日にでも辞めてもらって構わない”と詰め寄っていました。最終的に星風さんは、宙組から専科へ異動し、現在は花組の娘役トップに。異例の人事ですが、それほど真風さんの圧力が強かったということ。その後、宙組ではますます“いじめ文化”が広がっていきました」(同・宝塚関係者、以下同)

 亡くなったAさんは、103期の中で常に成績がトップだったことで、標的にされてしまったという。

「本公演で天彩峰里さんが演じていた役をAさんが新人公演で担当することに。それで挨拶に行くと、天彩さんが“私の髪型を教えるから”とアイロンで火傷させました。宙組では優秀な後輩に嫉妬していじめることが常態化していたんです。この件で天彩さんは月組に組替えと発表されたものの、天彩さんの“仲間”が“おまえのせいで天彩さんが組替えになった”と亡くなる直前までAさんをいじめ続けていたそうです。宙組は“出る杭は打つ”体質で、辞める団員も多かったんです」

真風の“流儀”を受け継いだ芹香斗亜

 2017年に朝夏まなとからトップスターの座を引き継いだ真風。彼女がトップに就任してから今年6月に退団するまでの“長期政権”で、宙組の日常は異様なものとなった。

「当時、星風さんの後に娘役トップに立った潤花さんは、自分がいじめられないように異常なほど真風さんの肩を持ち、Aさんを追い詰める発言もしていました。潤花さんだけではなく、真風さんが星風さんを執拗に責め続けていたのを見ていた宙組生は、みんな影響を受けてしまったんです。現在、真風さんに代わってトップスターの座についたのは芹香斗亜さん。気が強い性格ということも相まって、真風さんの“流儀”を受け継ぎ、下級生に厳しい言葉をぶつけることもあると聞きます」

 上級生からの“指導”でパニックに陥ったところに過重労働が重なり、Aさんは行き場を失ってしまったのか。

「Aさんのように娘役が被害を受けやすいのは、宝塚の持つ構造的問題です。男役トップスターが退団すると、相手の娘役も一緒に辞めるのが慣習。娘役は一部を除き、ファンクラブを作ることが許されず、お茶会を開くこともグッズを販売することもできない。経済的に厳しい中でチケットノルマをこなし、舞台で使うアクセサリー類を自腹で用意しなければならないんです」(芸能プロ関係者)

 常に男役の下に置かれる立場でプレッシャーを受けるのが娘役だという。ただ、

“いじめ”改善を直訴した男役スターも

2023年9月に転落死したAさん(宝塚歌劇団公式サイトより)

「すべての男役トップスターがいじめをしているわけではありません。雪組トップスターの彩風咲奈さんは、娘役の夢白あやさんがAさんの訃報を聞いて泣き崩れたのを見て、プロデューサーに“稽古はできない”と訴えました。断られても諦めず、理事長に“このままの体制なら、もうやりません”と直訴。さすがにまずいと思ったのか、雪組の稽古、公演ともに延期となったんです」(前出・宝塚関係者、以下同)

 真風がカリスマ性のあるスターだったのは事実。日常的に周囲からおだてられ、自分を見失ったのだろうか。

彼女を慕っていた下級生には優しいんですが、ちょっと気に入らないと当たりが強くなります。取り巻きも圧力をかけますから、ターゲットには逃げ場がありません。表情や体形にまで理不尽な難癖をつけるんですから、精神が壊れてしまうのも当然でしょう。

 今年1月にも、真風さんが星風さんに対するパワハラ報道が出ましたが、“なかったこと”になってしまったことが悔やまれます。その報道をもっと重く受け止め、宝塚の体制をきちんと見直していれば、もしかしたらAさんが亡くなることはなかったかもしれません。本当に悔やまれます……」

 “パワハラ”の事実関係や、Aさんへの思いを聞こうと真風の携帯電話を鳴らしたが、留守番電話にもならない。公式ファンクラブの問い合わせフォームに質問状を送るも、期日までに回答はなかった。

 才能ある女性を死に追いやった“いじめ文化”。宝塚が夢の舞台であり続けるために、一刻も早くすべての膿を出しきってほしい。

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