「物静かでありながらも、視線やほほえみに輝きがにじみ出ていらして。アメリカ最高峰といわれるハーバード大学に通う学生は、得意になっていたり気分が高揚していたりする人が多いのですが、そうした素振りはなく、大人びた雰囲気で、マチュア(成熟された)な魅力がありました」
還暦を迎えられた雅子さま
参議院議員の猪口邦子さんがそう振り返るのは、12月9日に還暦を迎えられた雅子さまの第一印象だ。
1981年、米国・マサチューセッツ州のベルモント・ハイスクールを卒業された雅子さまは、当時、父の小和田恆《ひさし》さんが客員教授を務めていたハーバード大学へ進学。
国際政治学者として上智大学で教鞭を執っていた猪口さんは、それから2年後の1983年、夫の猪口孝さんとともに、ハーバード大学国際問題研究所の客員研究員に招聘(へい)された。
「夫と私は、以前から小和田さんと面識があり、小和田さんのお嬢さんが在学していることも存じ上げていました」(猪口さん、以下同)
小和田さんのお嬢さんがどのような方か関心を寄せていた猪口さん夫妻は、とある週末に雅子さまを夕食会へお誘いした。
「雅子さまは、指導教官のジェフリー・D・サックス教授のもと、数理経済学を学ばれていました。食事の場でも、経済にまつわる話題が多かったと記憶しています」
成績上位15%の学生だけに与えられる栄誉学位『マグナ・クム・ラウデ』に輝き、ハーバード大学を卒業された雅子さまは、1986年に東大法学部に学士入学。『男女雇用機会均等法』が施行された翌年の1987年に、外務省に入省された。
「私の上智大学での教え子が外務省に入省し、雅子さまの部下として働いていた時期がありました。その教え子から聞いた話ですが、雅子さまは夕食の時間になると、省内にある売店でスイーツを部下のぶんまで買ってきてくださったそうです。遅くまで残業する部下の苦労を、少しでも癒せたらとお考えになったのでしょう」
天皇陛下が惹かれた雅子さまの姿勢
猪口さんは、雅子さまのお心遣いを“周囲に対する認識形成”と捉えている。
「スイーツを贈って労うという行動をとおして、“職場に苦労がある”ということを暗に示されていたともいえます。雅子さまは、皇室入りされる前から、社会の大切な部分に光を当てるようなご努力をなさっていました。そうした姿勢に、天皇陛下も惹かれたのではないでしょうか」
1993年に皇室入りされてからも、猪口さんが抱いた雅子さまの第一印象が変わることはなかった。
「女性皇族として、さまざまな服装規定がおありでしょうが、雅子さまは常にオーセンティックなスタイリングで、どのような場面でも周囲に安心感を与えてくださいました。
そうした雅子さまの雰囲気は、愛子さまにも引き継がれていると感じます。前のめりではなく、1歩控えめな姿勢でありながらも、実直で前向きなお人柄。雰囲気もキャラクターも、皇太子妃時代の雅子さまにそっくりです」
愛子さまのご誕生後には、ほほえましいエピソードも。
「政治家である私は、園遊会などの公的な場にも参加させていただくことがあるのですが、雅子さまにお会いするといつも“お元気ですか?”とお声がけしてくださります。愛子さまのご誕生からまもなく、どこかの場面で交流する機会があったのですが、その時に私が“敬宮愛子さまとは、本当に素晴らしいお名前ですね”と申し上げると、雅子さまは“そうでしょう”といったご様子で、本当にうれしそうにしておられました」
還暦を迎えられた雅子さまに対して、猪口さんは最後にこう締めくくる。
「ハンディキャップを持つ人や、特別な境遇を乗り越えて努力している人、まだ日の目を見ない文化や伝統、最先端の技術……。両陛下が自ら大切だと思うことに着眼し、寄り添われたり、各地へ赴かれたりすることが、自然と国民の認識形成に示唆を与えていくことになります。雅子さまが、これからも社会が見落としていた点に光を当て、あたたかい影響をもたらしてくださることを願っております」