「ビルの1階にはペットボトルが飾られていて、奥には箱が山積みになっていましたよ」(近隣住民)
警視庁生活環境課と中央署、巣鴨署、本所署、下谷署の共同捜査本部は11月28日、東京都港区の医療機器販売会社『エムオーシー』社長の杉山公一容疑者(82)、専務で長男の杉山知彰容疑者(53)、同社の子会社・健康食品販売会社『Craftsman(以下、クラフト)』社長で次男の杉山陽介容疑者(45)、同社社員の先崎友朗容疑者(44)を医薬品医療機器法違反の疑いで逮捕した。
今年3月から7月にかけて、4人は医薬品の販売の許可を得ずにインターネットのサイトで医薬品『エレメントアクア(以下、アクア)』53箱を約23万円で販売していたのだが、
「実はアクアはすでに6年余り販売されていて、のべ1365人が購入、約3200万円を売り上げていた。とくに健康被害は確認されていないが、とんでもないインチキ、詐欺商法ですね」(全国紙社会部記者)
エムオーシーのHP(すでに削除)では、
《熊本県阿蘇郡の地下水に海洋ミネラルを混ぜており、腫瘍やアトピーなどの予防効果がある》
と医薬品のような効果効能があるとうたっていた。さらには、《がんが治った》という顧客の声まで掲載していた。だが、
「警視庁の鑑定では、アクアは通常の水と同じ成分だった。とんだクワセモノですよ」(同・社会部記者)
警察の取り調べに対して、4人の容疑者はすべて容疑を認めているという。
複写機の会社がなぜか医薬品にまで手を出して…
エムオーシーは、1965年に創業。当初は複写機の販売とメンテナンスを行う会社だったが、次第に事業を拡大していき、医薬品、医療機器にまで手を出した。
冒頭の近所の住民は、こう話す。
「40年くらい前に土地を購入して、5階建てビルを建てた。4、5階は自宅で、そこに光一さん夫妻、長男の知彰さん、長女、次男の陽介さんの5人で暮らしていた」
会社兼自宅ビルを訪ねた。
社長以下4人が逮捕されたにもかかわらず“営業中”だった。女性従業員に話しかけるも、
「事情がわかる者がいないので、申し訳ありませんが、取材はお断りします」
と取材拒否。別の近所の住民によると現在、ビル上階に住んでいるのは光一容疑者と妻だけだという。とはいえ、
「逮捕された父、長男、次男だけではなく、光一さんの妻、長女、次男の妻も事務職で働いていた」(別の近隣住民、以下同)
まさに家族みんなでインチキをしていたことになるが……。
みんな優しくて、とてもいい方ばかり
「みなさん優しくて、とてもいい方ばかりですよ。公一さんは私が病気で入院した時なんて、退院した際に“よかったね! 元気になって”と声をかけてくれた。心遣いのできる人なのよ……」
次男でクラフト社長の陽介容疑者は、同社から約2キロメートル離れた、港区のタワマンに住んでいた。2LDKで家賃は月30万円ほど。分譲であれば、1億5000万円もする築浅の超高級マンションだ。陽介容疑者のものと思われるSNSには、洒落たカフェでパソコンを叩くイケイケな写真がアップされている。
唯一、杉山一家ではない先崎容疑者は、品川区の分譲団地に両親と3人で住んでいた。容疑者の人となりを知るべく、父親らしき人物を直撃するも、
「わかんねぇから、取材はだめだぁ……」
と取材拒否だった。同じ団地の住人によると、
「40年ほど前から住んでいますね。容疑者は昔からとてもおとなしい子でね、親にも口答えできるような子じゃなかった。ご両親も真面目で、優しいいい方ですよ」
事件については、
「上の人の命令に逆らえるタイプではなかったからね……。こんな目にあって、可哀想そうですよ」(同・住人)
たとえ詐欺一家の言いなりになっていたとしても、いちばんの被害者は“ただの水”を高額販売された客であることは間違いない。