「野生の動物だろうと、人に飼われている動物だろうと、生きている動物をみだりに殺すことは、絶対にあってはならないこと。人が動物に接する際の大前提ですよ」
ある自然愛好家はこう言い放った。
警視庁新宿署は3日、東京都中野区に住むタクシー運転手のA容疑者(50)を鳥獣の保護、管理、ならびに狩猟鳥獣の適正化に関する法律違反(鳥獣保護法違反)の疑いで逮捕した。容疑者は11月23日、新宿区の道路上で、タクシーで狩猟鳥獣以外の鳥獣・カワラバト1羽を殺傷したというもの。
「信号待ちをしていた容疑者の前方にハトの群れがいた。信号が青に変わると急発進させて、約60キロのスピードで故意にハトの群れに突っ込んだようです」(全国紙社会部記者)
司法解剖された結果、ハトの死因は外傷性ショックによるものだった。
「事件現場を目撃した通行人女性が110番通報。目撃情報と、防犯カメラやドライブレコーダーの解析によって容疑者の逮捕に至ったわけです」(同・社会部記者)
警察の取り調べに対し、A容疑者は容疑を認めた上で、
「道路は人間のもので、避けるのはハトのほう」
と言い張っているという。
実名まで晒すほどの事件なのか
本件は実際には実名出し、さらには送検される容疑者の姿まで報じられたのだが、このニュースに対してSNSではさまざまな意見が飛び交った。「しっかり罰するべき」という声と同じくらい「実名まで晒すほどの事件なのか」「やりすぎ」などと違和感を示す声があがった。
タクシー関係者はこう話す。
「ここまで大ごとになっては、おそらく容疑者は会社をクビになると思う。会社のほうもそれで従業員が減ったら、たまったもんじゃないよ」
野鳥の死がこれほど問題化するのはかなり珍しい
冒頭の自然愛好家も野鳥の死がこれほど問題化するのはかなり珍しいという。
「1981年、広島市の平和記念公園で、園が飼っていたハト65羽を、市が委託していた民間の清掃車がひき殺したときぐらいではないか」
その後、清掃車の運転手は動物管理法違反(保護動物であるイエバトの虐待)を問われ、罰金を支払ったというが、
「今回も、容疑者はおそらく起訴されず、罰金刑になるはず。だが、言い方は悪いですがその程度の事件とも言えますよね」
ある弁護士も、今回の逮捕は解せないと語る。
「むろん、無闇に動物を殺傷するのは許されるわけではないが、いくら故意だったとはいえ、顔をさらし、名前まで公表するのは疑問。見せしめのように思える」
一部報道では、警視庁新宿署がこの事件に関して「徐行したりクラクションを鳴らしたりせず、スピードを出してハトをひいた。プロの運転手で、模範になる運転をすべきだった」と説明したとも。
やはり、警察側には見せしめの部分もあったのかもしれないが、それでもなぜここまで主にテレビで大々的に報じられたのか?
理由の一つとして考えられるのは、この事件を約239万人のフォロワーを誇るインフルエンサー・滝沢ガレソ氏が面白おかしく取り上げたこと。テレビ局関係者は、こう話す。
「ワイドショーは常にネタを探して、スタッフたちはX(旧Twitter)をパトロールするのが日課。この事件に関するガレソ氏の投稿のインプレッション(投稿が表示された回数)は驚異の1600万越えでした。そもそもガレソ氏もテレビで報じられた本件を取り上げたのですが、その投稿が大バズりしたため、他の局も飛びついたんでしょう」
A容疑者は事件現場から3.5キロほど離れた中野区にある2階建てアパートで暮らしていた。築1年のワンルーム、家賃月6・7万円ほど。複数のアパートの住人に話を聞くも、「見たこともない」とのことだった……。