「その日、覆面パトカーとみられる車が近くに何台もスタンバイしていたので事件だと直感した。高齢者の多い静かな住宅街だから驚いた」(容疑者宅近くの住民)
11月26日のこと。神奈川県警葉山署は同県逗子市沼間のスケートボード選手・吉岡賢人容疑者(24)の自宅で逮捕状を執行。大麻取締法違反(所持)の疑いで逮捕した。
県警によると、吉岡容疑者は7月12日、同県葉山町の海岸で乾燥大麻を若干量所持した疑い。自宅から約5.2キロ離れ、夕日に照らされる葉山灯台や富士山の眺望が美しい絶景スポットだ。
「同日正午から午後3時ごろにかけて数人と海岸に遊びに来ていたところ、近隣住民から“挙動不審なグループがいる”と通報があり、警察官が駆けつけ職務質問。所持品検査で吉岡容疑者の持ち物から約0.4グラムの植物片が出てきた。鑑定の結果、乾燥大麻と判明。“間違いありません”と容疑を認めており、大麻を使用する目的があったとみて入手経路などを調べている」(全国紙社会部記者)
自宅周辺の住民によると、目立たない存在だったという。留守がちで、たまに複数の友人が来訪するぐらい。近所でスケボーに乗る姿も目撃されていない。
「普段はダボッとした大きめのトレーナーなどを着て、すれ違うときボソッと“こんにちは”と挨拶する程度。スケボーの選手だなんて知らなかった」(地元の女性)
所属事務所のプロフィールなどによると、吉岡容疑者は愛媛県松山市の出身。身長160センチと小柄な体躯でトリッキーな技を繰り出し、“ジャパニーズ・スーパー・ラット”の異名を持つ。
有名アパレルブランドとプロとして契約した有名選手
ユーチューブに投稿された動画では、街中の壁をスケボーで駆け上がったり、階段の手すりを滑り下りたり、警察官役に追いかけられる“悪ノリ”演出も。
「東京駅周辺など都内オフィス街のストリートで滑っていました。発想が柔軟で旧式テクニックを自己流にアレンジし、動画撮影や編集、配信までiPhone1台でこなすため“スケボー界の革命児”とも呼ばれています。有名アパレルブランドとプロとして契約し、ファッションブランド『ケントハードウェア』を立ち上げました」(都内のスケートボード関係者)
スケートボードの乗り手は大別すると、専用施設の『パーク』で技を磨く“競技系”と、主に街中を滑るカルチャー色の濃い“ストリート系”に分かれるといわれている。2021年の東京五輪で初採用され、金3、銀1、銅1のメダルラッシュとなった日本代表選手が競技系のトップならば、吉岡容疑者はストリート系の頂点に君臨する存在とみられていた。
実際に東京五輪では、競技には出場していないものの、閉会式でモヒカン姿によるスケボーパフォーマンスを披露して盛り上げた。
「賢人くんは米スケートボード専門誌に取り上げられたスケーターで、世界中のスケボー愛好家にとって憧れの存在といえる」(愛媛県のスケートボード関係者)
歌手・UAのミュージックビデオに出演したり、アーバンスポーツに精通する俳優・野村周平の動画配信番組にゲストとして呼ばれたことも。番組で野村は《オリンピック出てたよね? 閉会式でなぜか無茶苦茶な動きしてる奴がひとりいるなって思ったら賢人だった》と突っ込んでいた。
スケボーを始めたのは小学生のころ。自宅にインテリアとして置いてあったボードに乗って周辺を滑るようになり、10歳のとき愛媛県今治市で開かれた競技会で優勝。県内の大会で毎年のように好成績を収めるようになり、日本スケートボード協会(AJSA)が主催する地方大会で結果を出すようになった。
中学卒業後、より滑れる環境を求めて東京へ。友人宅を転々としながらスケボーざんまいの生活を送ったとされる。
確固たる地位を築きながら、五輪メダリストの活躍に発奮する発言も。
俺らも一発カマしたいって
サブカルチャー分野のウェブマガジンの対談企画では、
《日本人が金メダルを取ったことはスケーターとしてアツいことだし、めちゃ刺激を受けて。表というか、スケートのスポーツとしての側面が盛り上がっている中で、カルチャー寄りの動きをしている俺らも一発カマしたいって気持ちが湧きました》
と威勢がいい。
逆三角形にしたスカーフで口元を覆うなどギャングのようなスタイルを好む一方、意外な一面もあったようだ。
「実家に帰省したときは、地元の子どもたちにスケボーを教えたり、イベントにも積極的に参加し、生まれ育った故郷への恩返しをしてくれた。根はめちゃくちゃいい子なんですよ。ブランディングで尖った感じをみせていたけど、愛嬌もあるし、斜に構えたりもせず、地元ではヒーローです。これからがたいへんでしょうが……」
と前出の愛媛県のスケートボード関係者は言う。
はたして容疑者は何をカマすつもりだったのか。影響力があることを自認しながら、犯罪行為に走るのは、どう考えてもクールではない。