「ここまで私がしゃべってしまったら派閥から追い出されるかもしれませんけれども、(派閥からキックバックを記載しない)指示はございました!」
12月13日、国会内で多くの報道陣に囲まれたのは自民党議員・宮澤博行防衛副大臣。自身も所属する安倍派「清和政策研究会」の政治資金パーティーをめぐる“裏金”問題で、政治資金収支報告書への不記載が派閥指示だったことを証言したのだ。
直近の5年間で5億円にものぼると見られる安倍派の裏金疑惑。松野博一官房長官、西村康稔経済産業相、萩生田光一政調会長、高木毅国会対策委員長ら4人の閣僚を更迭した、岸田文雄内閣も大打撃を受ける格好に。
他にも4000万円超のキックバックを記者に追求されては「頭悪いね」と逆ギレ発言をして炎上した谷川弥一議員を代表するように、自民党の悪しき習慣と議員の醜態を晒した、国民の政治不信をますます深めかねない大騒動。
そんな折での、現役の安倍派による証言。当該議員への一斉聴取の方針をとる東京地検特捜部にとっても、政界に蔓延する不正を暴く重要な証言になりそうだ。
箝口令を出したのは誰か、を聞かれて
「一見、正義を貫いたように見えますが…」と何か引っかかった物言いの全国紙・政治部記者。同記者も現場に立ち会った、宮澤氏の一世一代の証言に違和感を覚えた部分もあったという。
「最大派閥の安倍派を“裏切った”格好に宮澤議員だけに、本人も話したように“追い出される”ことを覚悟した上での証言なのは間違いありません。国民を代表する政治家としての“正義”が起こした判断だと思います。
ただ、気になったのは不正の指示役ではなく、その後の“箝口令を出した指示役”を問われた際の受け答えでした」
裏金問題について派閥、自身のことも含めて力強く雄弁を振るっていた宮澤氏。一連の事実に対して口止めされた、箝口令が敷かれたことも明かしては「しゃべるな!しゃべるな!これですよ!」と捲し立てる様子がニュースでも映し出されたのだが、その“指示役は誰か”を問われるとーー、
“数秒の間”を置いて「総理は違う」
「……総理は違いますね、はい。まあ、派閥、のほうから、でございます」
実際の受け答えでは質問から数秒間の間を置いた後に、一転して声のトーンを下げて岸田首相の指示ではなく、“派閥の指示”と証言したというのだ。
「派閥の象徴だった安倍晋三元首相、細田派から安倍派に“衣替え”後も派閥内で大きな影響力をもっていた細田博之前衆院議長らトップが亡くなったことで一枚岩ではなくなりつつあり、今後の身の振り方を考える議員も多いと聞きます。
そもそも政治資金パーティーの“悪習”は細田派時代に培われたとの声もあります。安倍派への風当たりは強まっていくわけで、安倍派からの“鞍替え”が増えてもおかしくはありません」(同・政治部記者)
裏切り、寝返りが当たり前。魑魅魍魎が蠢く政治の世界で生き残っていくためには、時に大勝負に出ることも必要ということか。