過去に大動脈解離を経験し、狭心症を患ったこともあった加藤茶さん。
薬が増えたことの影響もあってか腎臓も弱り、血圧が高いため2年前、主治医から本格的な減塩をすすめられたという。
“おいしくない!”と言われた減塩食
「それまでも減塩は気にしてはいたのですが、いよいよ本腰を入れなければと。最初は、ただ塩やしょうゆなどの調味料を減らせばいいのだと思っていたんです。それでは味が薄く、加トちゃんの食が進まない。
“おいしくない!”と、量を食べてくれないし、食べてもすぐにしょうゆを足してしまって!」(綾菜さん、以下同)
減塩料理の本を片っ端から買っては作ってみたものの、思わぬ落とし穴が……。
「器に盛られた完成写真は2人分や4人分。1人分にすると、塩分だけでなく全体量も少なくて食べた気がしない。それに、レシピを読むだけでゲンナリするほど、手間がかかるものが多くって」
しかも、家庭で味の薄い減塩食を続けた反動か、茶さんは番組収録後にこっそりラーメンを食べて帰ってくることもあった。
日々頑張って料理を作っても、茶さんの血圧などの数値は少しずつ悪化していくし、だるさやめまい、足のむくみ、冷えなどに悩まされるようにもなり……。
「特に足のむくみがひどくて、靴を履くだけで痛むほどでした。さらに気になったのが、肌がパッサパサになってきたこと。塩分を極端に減らすと、肌の乾燥も進んでしまうんですよ」
主治医も驚いた!減塩でみるみる元気
おいしい減塩料理を作るヒントを得ようと、専門家の先生がそろっている大阪の『北大阪健康医療都市(健都)』へ学びに行くことに。そこでの知識をもとに料理家さんの協力も得て、オリジナルレシピを完成させた。
「最近では、加トちゃんの体調もよくなってきて、降圧剤を飲んでいても180~200だった血圧が、120~130くらいに下がっています。透析も検討していたという主治医の先生もびっくりしたぐらい。
この減塩食を3か月ほど続けたところで足のむくみもまったくなくなりました。血行がよくなったのか、皮膚が健康的なピンク色に。冬なのに肌が乾燥しにくくなりました」
茶さんからは“仕事のあとの疲れ方が全然違う。体調がいい! 減塩ってやっぱり効果があるんだね~”と喜びの声が。
「現在80歳の加トちゃんですが、やはり加齢で臓器が弱ると食べても食べてもやせちゃうことがあるんですよ。だから栄養たっぷりで身体にいいものをたっくさん食べさせてあげたい! これからも食事でしっかりサポートしていきたいです」
減塩レシピを簡単においしくする秘訣は「万能氷だし」にあり!
加トちゃんが「料理の腕を上げた!」と大絶賛!
かつて減塩料理を作る中で、“手間がかかる”“おいしくなくなる”“食が細くなる”この3大苦にぶちあたった綾菜さん。
「せっかく作っても食べてくれないと意味がない。だんだん追い詰められて、料理を作ることに毎日すごくストレスがたまってきてしまって……」
そこで、毎日続けるポイントを「手間がかからない」「満足できるうまみがある」「栄養がしっかりとれる」の3点にし、これらをクリアすべく、1年かけて『綾菜流万能氷だし』にたどり着いた。
「健都の病院で試食した食事が減塩なのにとてもおいしかった。コツを伺うと“しっかりとだしをきかせることで素材の味を引き出しているんです”と。
それまでも、だしはとっていたのですが、かつお節の量が少なかったのか、うまみの強い濃いだしになっていなかったんですね」
かつお節をベースに、酒かす・玉ねぎ・しょうがなどを入れて凍らせたのが『万能氷だし』。作り置きして、調味料として使うことで格段に料理がおいしく、時短にもつながった。
「京都の料亭みたい」と加トちゃんも大喜び
「最初に、氷だしを使った料理を加トちゃんに出したら、減塩料理だと気づかなかったんです。“だしがきいていてうまい!京都の料亭みたいな味だね”と喜んでくれたので、私も“もう減塩料理はやめたのよ”と。
加トちゃん、しっかりだまされてくれました(笑)。万能氷だしは、和食以外にも洋食、中華、エスニックとなんでも合うところも使いやすいと思います」
もともとしょっぱくて味が濃いものが好きだった茶さんでも、氷だしを使った減塩料理がおいしいので、すぐに舌が慣れたそう。
「最近では“外食するとすごく味が濃く感じる。この店もこんなにしょっぱかったかな?”とか言っています。加トちゃんのお気に入りは、万能氷だしを練り込んでうまみ倍増の和風ハンバーグ。いつも完食してくれます」
加藤家では、週末に製氷皿3皿分くらい万能氷だしを作り、1週間で使いきるそう。
「年末年始は暴飲暴食しがちだし、おせち料理などは塩分も多い。冬はどうしても血圧が上がりやすいですよね。だからといって、薄味のおせちではみんな喜ばない……。万能氷だしを上手に使って、手軽に減塩しましょう!」
減塩でも料理を絶品に仕上げる秘訣「氷だし」の作り方
ポイントは4つの健康食材
・玉ねぎ
オリゴ糖や食物繊維で腸活! 血液がサラサラになるし高血圧予防にもなりますね。煮詰めて入れることで料理に甘みとコクをプラス。
・酒かす
加トちゃんの生まれ故郷福島の郷土料理をヒントに。こちらもオリゴ糖と食物繊維たっぷり。塩分ゼロなのに、入れるだけでコクが出て身体も温まる!
・しょうが
悪玉コレステロール値を下げてくれるし、こちらも身体を温める効果あり! しょうがは料理の味を邪魔することなくピリッとしたアクセントに。健康効果の高い皮ごとすりおろして使います。
・かつお節
だしの風味がしっかりすれば、しょうゆや塩は少しでもうまみを感じる! 昆布や煮干しよりも塩分含有量が少ないので、たっぷり入れて、香りも豊かに。
キューブ10個分の材料と作り方
材料/10個分
・玉ねぎ……1/2個
・しょうが……5g(1/2片)
・酒かす……6g(約小さじ1)
・かつお節……6g
・しょうゆ……大さじ1
・水……1カップ
【作り方】
(1)小鍋に、玉ねぎと、しょうがを皮ごとすりおろして入れる。水、酒かすも入れて中火にかけ沸騰させる。沸騰したら5分弱火にかけ、玉ねぎの甘みを引き出す。
(2)火を止め、かつお節、しょうゆの順で入れ、鍋を回してなじませる。かつお節が沈むまで1分ほど待つと味が出やすい。
(3)ざるでこす。うまみや塩分が入っているのでしっかりしぼり落とす。
(4)製氷皿に流し入れる。粗熱が取れたらラップをして冷凍庫で冷やし固める。
※製氷皿がない時は、ペットボトルなどに入れて冷蔵庫へ。保存期間は3日ほど。氷だしのキューブ1個分は大さじ1のイメージで。
肉汁じゅわ~!和風おろしハンバーグ
加トちゃんが2個も3個も食べます
材料/2人分
・氷だし……2個
・豚ひき肉……200g
・玉ねぎ……1/4個
・大根……200g
・大葉……5枚
・こしょう……少々(多め)
・パン粉……大さじ2
・油……大さじ1
・水……大さじ2
A〔酢……大さじ1、しょうゆ……小さじ1、氷だし……1個〕
【作り方】
(1)氷だしは解凍し、玉ねぎは細かくみじん切りにする。大根はすりおろして水けをきり、千切りにした大葉を混ぜる。
(2)ボウルに豚ひき肉とこしょうを入れて粘りが出るまでこね、(1)のだしと玉ねぎ、パン粉を入れてよく混ぜ合わせて、2等分にして形を整える。
(3)フライパンに油を熱し、(2)を入れて焼き色がついたらひっくり返して水を入れ、ふたをし、弱火で7分ほど蒸し焼きに。火を止めて5~10分ほどおき、余熱で中まで火を通す。焼きあがったハンバーグを、器に盛りつける。(1)の大葉を混ぜた大根おろしをのせる。
(4)フライパンに残った肉汁とAを加え(氷だしは凍ったまま)、煮立たせてソースを作る。少しとろみがつくまで煮立ったら、(3)にかける。
ハンバーグって外食とかだと塩分が1個6gぐらい入ってるんですがこれはなんと1個1g!2つ3つ食べてもいいよ♪と言ってあげられるのがうれしい。
とろ~り青さのりと大根おろしのお吸いもの
私が絶大な信頼を寄せる!身体リセット汁
材料/2人分
・氷だし……2個
・大根……50g
・青さのり(乾燥)……3g
・しょうゆ……小さじ1/3
・水……3/4カップ
【作り方】
(1)大根はすりおろして水分ごと、水と氷だしと一緒に鍋に入れて1分ほど煮る。大根汁を煮込むと甘みが出てくる。
(2)青さのりとしょうゆを入れて混ぜたら火を止めて完成。
年末年始は暴飲暴食が多い時期。どうしても食べすぎてしまうのですが、翌朝これを作って飲めば本当にお腹がスッキリ整うんです! 青さのりのとろみで身体も温まるので本当におすすめ。
かつおの手ごね寿司
1品あれば華やかに!
材料/2人分
・氷だし……2個
・かつお……120g
・ご飯……300g
・酢……大さじ1
・砂糖……小さじ2
・しょうゆ……小さじ1/2
・みょうが……1個
・大葉……4枚
・ごま……小さじ1
【作り方】
(1)温かいご飯に酢、溶かした氷だし1個、砂糖を加えて混ぜ、酢飯を作る。
(2)かつおは7mm幅程度に切り、しょうゆと溶かした氷だし1個を混ぜたものであえる。みょうがは小口切りに、大葉は千切りにする。
(3)(1)と(2)にごまを指でひねりながら加えてざっくりと混ぜ、器に盛る。もの足りない場合は、酢を少し混ぜて調整を。
これは高木ブーさんもとっても気に入ってくれた一品。かつおと同じようにまぐろに下味をつけて作ってもOK!酢飯って意外に塩分が多いのですが、これならたくさん食べても大丈夫!
しょうが風味のカレイの煮つけ
おしょうゆたっぷりなイメージの煮物でも減塩で大満足に
材料/2人分
A〔氷だし……3個、みりん……大さじ2、しょうゆ……小さじ2/3、水……1/2カップ〕
・カレイ……2切れ
・しょうが……1片
・ごぼう……40g
【作り方】
(1)カレイの皮目に切り込みを入れる。しょうがの半分は飾り用に針しょうがに。残りは2mm幅くらいの千切りにする。ごぼうはたたいてひびが入ったら、4cmの長さに切る。
(2)フライパンにAとごぼう、千切りしょうがを入れてひと煮立ちさせ、カレイの皮目を上にして入れる。さらにひと煮立ちしたら、アルミホイルなどで落としぶたをして、中火で7~8分煮る。
(3)落としぶたをとり、煮汁を魚の表面にかけながら煮詰め、煮汁がトロッとしてきたら完成。器に盛り、飾り用針しょうがとごぼうを添える。
お魚の煮つけはおしょうゆたっぷりのイメージですが、これなら1切れで約1g。おだしが香ってホッとする味です。付け合わせのごぼうも、食感もよく食物繊維たっぷりで、すごくおすすめ!
“氷だしのっけるだけ”おひたし
朝食にプラス1品でバランスアップ
材料/4人分
・氷だし……2個
・ほうれん草……1束
・かつお節……少々
【作り方】
(1)ほうれん草は熱湯でゆで、冷水にとって冷まして水けをしぼる。4cmの長さに切って、ふたたびしっかりと水けをしぼる。
(2)バットや保存容器に(1)をほぐし入れ、氷だしをのせて、溶けたらよく混ぜる。
(3)器に盛り、かつお節をふる。
加トちゃんは朝食はパン派なのですが、この小鉢を1つ加えるだけでも、栄養価がアップするので助かります。
加藤家思い出のひき肉レタス包み
加トちゃんに初めて作った中華の味!
材料/作りやすい量
・氷だし……2個
・豚ひき肉……100g
・セロリ……1/2本
・紫玉ねぎ……1/4個
・パクチー……30g
・にんにく……4片
・ナンプラー……小さじ1/2
・ライム汁(お好みで)……大さじ1
・レタス……適量
・油……大さじ1
・輪切り唐辛子……適量
【作り方】
(1)セロリは筋を除いて斜め薄切りにし、葉も刻む。紫玉ねぎは薄切り、パクチーは1cm幅に切る。にんにくはみじん切りにする。
(2)フライパンに油とにんにく、輪切り唐辛子を入れて、香りがしてきたらひき肉を入れてほぐしながらポロポロになるまで炒め、セロリを入れてしんなりするまで炒め合わせる。
(3)氷だしとナンプラーを入れて、味がなじむまで炒めたら火を止め、紫玉ねぎとパクチー、ライム汁を入れて混ぜ合わせ、器に盛りつける。レタスを添えて、巻きながらいただく。お好みでライムを搾る。温かいままでも、冷たくてもおいしい。
氷だしは、中華にもよく合います!このレタス包みは昔からよく作っていましたが、おいしさはそのままですごーく減塩できました。見た目も華やかで作り置きにもいいですよ。
加藤家のある日の晩ごはん♪減塩、温活をしっかり意識
作れる日はなるべく自宅で減塩の手作り料理を……と日々、奮闘する綾菜さん。
「年を取ると、食も細くなるし、便秘にもなりやすい。なので“胃腸の負担なく、栄養バランスのとれた腸活にもいい料理を”となるとやはり、なるべく手作りがいいかなと」
土日に氷だしなどは作り置くが、おかずは都度作る。
「同じおかずが2日続くと嫌なんですね(笑)。だから、日々作ります。氷だしがない日も、にんにくや減塩調味料を使って味を工夫したり、身体の中から“温活”できるメニューを意識しています」
最近の加藤家の食卓をちょこっとのぞき見!
定食スタイルにしても全部減塩!
ご飯を炊き込みにすると、入れた具材それぞれのおだしを感じて食が進みますよ!
アスパラの牛肉巻きレシピ
アスパラ3本を半分に切ってそれぞれしゃぶしゃぶ用の赤身の牛肉を巻く。
フライパンに油を少々いれ牛肉の色が変わるまで焼いたら、減塩しょうゆ・みりん・酒・メープルシロップ各大さじ1、にんにく1片を入れ、水分がなくなるまで煮詰めて完成です。
わが家の冬の定番は鍋!
にんにくみそ鍋レシピ
鍋のつゆは、水800mlに対し、おろしにんにく4片分、すりおろしりんご150g、減塩みそ70g、すりごま大さじ4を入れて作ります。
そこに、ホタテ、牡蠣(塩水で洗ったあとに片栗粉をまぶしもみ洗いを)、イカなど好きな魚介をお好みで250gぐらい。
野菜はごぼう、白菜、しいたけ、春菊、長ねぎなどをたっぷりと。豆腐もお好みで入れて煮込めば完成です!
取材・文/中村裕美 撮影/三田村 優 レシピ協力・料理作成/田村つぼみ