「スケバンまで張ったこの麻宮サキが、何の因果か落ちぶれて今じゃマッポの手先。笑いたければ笑うがいいさ!」
これは人気ドラマだった『スケバン刑事』(フジテレビ系)の決めゼリフ。第1作が放送されてから38年が過ぎ、主演を務めた“少女”たちも年を重ねた。そんな彼女たちが、今じゃ何の因果か波乱の人生を歩み─。
「ここのところ、かつてのトップアイドルたちにトラブルが相次いでいます。斉藤由貴さんは、不倫相手である医師のクリニックのドアを叩き“入れて!”と叫ぶ姿が報じられました。南野陽子さんは夫が横領容疑で逮捕され、離婚。2人とも『スケバン刑事』で主演を務めていましたね。テレビ局関係者の中には“スケバン刑事の呪いだ”なんて話す人もいますよ」(スポーツ紙記者)
“こんなドラマ大丈夫か?”
『スケバン刑事』は、女子高生が、警察の捜査に協力して悪を裁く物語。武器は重合金で作られたヨーヨーで、側面のフタをパカッと開けると特命刑事である証し“桜の代紋”が出現する。マンガ原作のこのドラマが1985年に斉藤主演で放送され、一世を風靡。ヨーヨーが爆売れし、社会現象にもなった。こうした人気を受け、2作目は南野が、3作目は浅香唯、中村由真、大西結花らが主演で制作された。
「放送当初は“こんなドラマ大丈夫か?”という声もありましたが、主人公が悪役と対峙するときの決めゼリフが子どもたちの間で流行し、人気番組となりました」(テレビ誌ライター、以下同)
とはいえ、ドラマの内容を不安視する声があがるくらいだから、その設定は荒唐無稽だった。
「1作目では、母親が父親を殺した罪で死刑囚となり、娘は不良になって少年院へ。母親の死刑執行を延期することを条件に、警察に協力することに。2作目では、悪の組織から素性がバレないようにするため、子どものころから17歳まで鉄仮面をつけて生活を送っていたという設定。3作目に至っては、ドラマ内で亡くなった人が最終回で生き返る……。ほかにもいろいろありますが、ツッコミを入れるのも野暮なお話でした」
そんなトンデモ設定をも吹き飛ばす痛快ドラマを、毎週多くの人が楽しみにしていた。が、そのウラで犠牲になった人がいる。
「それこそが、主演女優たちです。華々しく芸能界デビューした彼女たちに課せられたのは、休みなく働かされる殺人的スケジュールでした」(芸能ライター、以下同)
当時はアイドル全盛期。それまで右も左もわからない、ごく普通の高校生だった少女たちが、次々と新人アイドルとしてデビューしていた。
「斉藤さんに与えられた休みは、1年間に1日だけ。日付が変わってから帰宅するのが日常でした。歌手としてもデビューしていましたから、歌番組やイベント出演の仕事もあった。そうした合間にセリフや殺陣を覚えるなど、ドラマの準備が必要になる。地獄の日々だったと思います。当時は主演映画の撮影が何本も控えており、常に痩せている必要もあった。育ちざかりなのに満足に食べることもできなかったそうです」
“セリフが覚えられない”
ドラマが放送された期間にも問題があった。今では3か月1クールで放送される連続ドラマが普通だけど、『スケバン刑事』は違っていた。
「斉藤さん主演の1作目は1985年4月にスタートし、終わったのは同年10月末で、計7か月間も続いたんです。南野さん主演の2作目に至っては、1作目の放送が終了した翌週に始まって、終了したのは1986年10月。実に1年間にわたって放送されました。今では考えられないスケジュールです」
当時、『スケバン刑事2 少女鉄仮面伝説』で南野と共演した俳優の当山彰一氏もこう証言する。
「撮影の休憩時間も南野さんはマネージャーから水と台本を受け取って読み込んでいました。南野さんは“セリフが覚えられない”と、よく弱音を吐いていましたね。当時は移動の合間にすら歌番組に出演していました。駅のホームから中継で歌ったり……。移動中ですら仕事なわけですから、眠る時間なんて、ほとんどなかったと思います。NGを出せば、何十人といるスタッフの顔も険しくなっていく。そうとうなプレッシャーがあったはず」
10代の少女たちが、こうした過酷な労働を強いられていたのだ。
当時を知るドラマ制作会社の社長は、眉をひそめてこんなことを言う。
「今は改善されつつありますが、それでも体調を崩す芸能人は少なくない。当時は過酷なスケジュールでの撮影が当たり前のように行われていたんです。10代の女の子が、突然スターになり、休みなく働かされ続ける。青春も何もないですよ。こうした中で、人間性が歪められてしまった部分もあったと思います」
スケバン刑事の因果
スター街道を歩み始めた彼女たちに、少しずつその異常が現れる。
「斉藤さんはたびたび不倫が発覚し、世間を騒がせてきました。尾崎豊さんに始まり、川崎麻世さん、そして最近も話題となっている男性医師と……。宗教も熱心に信仰しており、さまざまな制限があったことも関係しているのかもしれませんが、芸能界でやっていくうちに突然、張り詰めていた糸がプツンと切れてしまったのかも」(同・芸能プロ社長、以下同)
南野もTUBEの前田亘輝や米米CLUBのカールスモーキー石井など、さまざまな芸能人との熱愛が報じられてきた。
「不倫ではないので問題はないのですが、どの恋も成就しなかった。最終的に結婚した夫は、犯罪の容疑で逮捕されるハメに。悪いのは、元夫ですが、南野さんにもまったく問題がなかったとは思えない。どこか“世間とのズレ”があるのだと思います。仕事で謳歌できなかった青春を、取り戻そうとし続けているのかもしれません」
1986年から1年間放送された3作目の『スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇』に出演した浅香も、ボロボロだった。
「1993年に突如、事務所を辞めて休業を宣言します。浅香さんは精神的にも肉体的にも限界がきていた。この休業宣言で事務所とトラブルに。“浅香唯”という芸名の使用は禁止され、活動再開は難航。和解を経て、芸能界に復帰できたのは1997年でした。しかし、浅香さんに、その後のトラブルはありません。心身共に壊れる前に、休みに入ったことが大きかったのでは。長年にわたって交際していた、現在の夫であるドラマーの西川貴博さんによる支えもあったのだと思います」(前出・芸能ライター)
スケバン刑事の因果なのか……女優たちが背負った十字架は今も重くのしかかる。