「被告席で背筋をピンと伸ばし、真っすぐに前を向いて座っていたので、模範的に見えた。だが、裁判で彼の残虐で猟奇的な犯行が明らかになって寒気がしました……。しかも最後まで反省の言葉がひとつもなくて、後味の悪さしか残らなかった」
12月12日から2日間にわたって、大津地方裁判所別館第21号法廷(滋賀県)で開かれた、とある公判を傍聴した人の言葉だ。
滋賀県警草津署は今年6月29日、同県大津市の会社員・中西大樹被告(31)を強制性交などの疑いで逮捕した。6月22日、被告は同県栗東市のアパートに30代女性を連れ込み、手足を粘着テープで縛った上で、性的暴行を加えた。被害女性には鼻部、顎部、頸部に擦過傷などのケガを負わせたというもの。
計画的、かつ極めて非道な犯行
「幸いにも女性は軽傷で、その場から自力で逃げ出して、警察に被害届を提出。警察が捜査を進めて、逮捕に至った。犯行に使用したアイテムを事前に準備したとみられ、計画的、かつ極めて非道な犯行だといえます」(全国紙社会部記者)
中西被告は警察の取り調べに「間違いありません」と素直に容疑を認めていた。
事件現場のアパートは、被告の自宅でも、被害女性の自宅でもないという謎が多かった本件。『週刊女性』は事件発生時から取材していて、中西被告が不動産会社社員で賃貸営業担当者だったため、物件を内見中の女性客を襲ったのではないかと推測した。
だが、前述の公判でまったく違う真実が明らかになった。中西被告が毒牙にかけたのは、同僚の30代女性Aさん。被告はAさんとともに行った空き部屋の水道検針で凶行に及んだというのだ。
検察官の冒頭陳述によると、被告は犯行日の前日に事件現場である空き部屋を訪れていて、
「ロープ、粘着テープ、三脚に固定したビデオカメラ、猿ぐつわなどを室内に用意していたようです」(前出・傍聴者、以下同)
「俺は4人殺したことがある」と徹底的に脅して…
犯行日から遡ること3か月、周到な準備は始まっていた。中西被告は大手ショッピングサイトでバイブレーター、ローション、SM用の拘束具など犯行で使用する道具を購入していたのだ。
事件当日、Aさんがアパート裏にある水道の検針を始めたところ、背後からAさんの頭に布状の袋をかぶせて、いきなり殴る蹴るの暴行。そのまま“空き部屋”に引きずり込んだ。そして中西被告はAさんに「俺は4人殺したことがある」などと徹底的に脅してから、性的暴行に及んだ。その詳細は、出廷しなかったAさんに代わって検察が読み上げた供述調書によって明かされた。
『口淫(こういん)させられ、口内で出された精液を飲まされました。“(すべての行為を)録画している”とも伝えられた。バイブレーターなどいろいろな性具で長時間、もてあそばれました。そして、拘束されていた両足の粘着テープを剥がされて、性交させられた。“避妊具をつけることを約束する”と伝えられたが、性交後に口淫させられて、避妊していないことがわかった』
犯行後、中西被告から“自分が部屋を去ったあと、15分後に出るように”と伝えられたという。
『被告は会社の同僚だったので、会社にも行けなくなり、辞職せざるを得なかった。とにかくできるだけ重い処分を望みます』
こう締めくくられた供述調書に、中西被告の弁護人は、
「被告は横田という男から暴力、脅迫を受けていた。犯行はその男に指示されていて、仕方なくやったこと。家族の支援で更生していくことも考慮してほしい」
と擁護したのだが、
「横田という人物はどうやら被告がでっち上げた実在しない架空の人物のようです」(前出・傍聴者)
被害女性に「何も思わない」
法廷では、中西被告の前科も明らかにされた。9年前の2014年に住居侵入、強盗、強姦の罪で懲役6年の実刑判決を受けて収監。2019年に仮釈放された直後に入社したのが、現在の不動産会社だった。
被告と2人暮らしをしていた母親は、証人として証言台に立った。
「私には示談金、賠償金を支払う余裕がありません。本人にきっちり責任をとってもらいます。出所したら、更生の支援はしていきますが……」
と弱々しく答えたという。最後にAさんに対して何を思うかと問われた中西被告は、驚くべき発言をしていた。
「Aさんには、何も思わない。前の犯行のときは無関係の女だから何も思わなかったが、今回は同僚であってもやはり何も思わなかった」
家族と、自分の前科を知りながらも雇ってくれた不動産会社に謝罪するも、Aさんに対する謝罪の言葉はひとつもなかった。そればかりか、
「夜、寝る前に、こんな犯行をすることを妄想している。相手が困るからといっても、思いとどまることはなく、またやる可能性がある」
とも……。検察側は中西被告に懲役15年を求刑。おぞましい所業を平然と行う怪物の判決は19日に下る。