'24年に110周年を迎える宝塚歌劇団。記念行事は中止とのこと

 節目の年の祝い事にも影響が出た。2024年に110周年を迎える宝塚歌劇団が、記念行事の中止を発表したのだ。

中止の理由は“スケジュールの過密回避”のためとしていましたが、劇団員Aさんの死で明るみに出た、いじめ問題も大きな理由でしょう」(スポーツ紙記者)

 11月に「いじめ・パワハラはなかった」とした劇団の釈明会見が、むしろ世間の不信感を募らせる結果に。失敗の原因を企業不祥事に詳しい森大輔弁護士に聞いた。

「客観性を担保するためには、複数の法律事務所に依頼すべき事案であった。ところが現状では9人の弁護士が対応しているのに、1つの法律事務所に依頼しているのは違和感があります」

 週あたりの公演回数を減らす方針も的外れだという。

公演回数ではなく、役割分担の比率が特定の人、もしくは下級生に偏りすぎていることが重要な問題なのです。舞台に立ちながら、裏方の仕事もするという体制を変えていくことが求められているのだと思います」(森弁護士)

 2023年9月に亡くなったAさんがヘアアイロンを押し当てられて火傷をした件について、宝塚問題で複数のメディアに出演している遠藤元一弁護士は明らかなパワハラだと答えた。

“故意かどうかにかかわらずパワハラである”との遺族側の弁護士の見解のとおりと思います。優位的な関係があること、必要かつ相当の範囲を超えること、就業環境を害すること、という、厚労省の指針にいう3つの要件を満たし、明らかにパワハラでしょう」

 企業価値を回復するために、劇団が取るべき方策が3つあるという。(1)徹底した事実関係の解明(2)今回の事態の原因分析(3)実効的な再発防止策の設定だ。

「(1)に関して、調査報告書は“事実を曲解して書いているな”という印象でした。遺族側が提示したAさんの火傷の写真では、皮膚がただれていて、この火傷の症状は意図的に押し当てたのでなければ、説明がつかないでしょう。徹底した事実関係の解明が不可欠です」(遠藤弁護士、以下同)

対策を講じなかった親会社・阪急阪神HD

'23年9月に転落死したAさん(宝塚歌劇団公式サイトより)

 (2)については、“真の原因”を分析することが必要不可欠とのこと。

親会社の阪急阪神HDは、劇団内でパワハラ問題が深刻化していたのを把握していたはず。それなのに何も対策を講じなかった。その真因を分析するべきです」

 電鉄事業の親会社は、専門性の強い宝塚歌劇団の内情がよくわかっていなかったのか。

“聖域”には手を出せなかったのではないか。でも、それでは閉鎖的(誰も口出しできない)部門になり淀みが出てくる。構造的な部分まで、真因を追究して膿を出しきらないと、(3)の再発防止策の策定はできません」

 宝塚歌劇団に自浄能力がないのなら、親会社がしっかりと対応するしかない。

「いちばん“本気度”が伝わるのは、阪急阪神HDの幹部が会見に同席して宝塚を再生させる決意を見せること。あくまで“宝塚内部の話だからHDには関係ない”という態度であれば、グループ会社トップとしての資質が疑われることになりますね」

 禁断の“聖域改革”を行えるかどうかに、宝塚の命運がかかっている。

取材協力/東京霞ヶ関法律事務所 遠藤元一氏、森大輔法律事務所 森大輔氏