年末年始、親戚一同が集まるとどこからともなく始まるお国(故郷)談義。なかでも、各地に住む人々の“県民性”の話題は鉄板ネタ。
「私たちには日本という共通の土壌があり、そこに歴史や地理、自然条件という要素が複雑に絡み合って“県民性”を培います。もちろん、すべてが県民性で説明できるわけではありませんが、人間関係を構築する際の指標として捉えると参考になるかもしれません」
そう話すのは、これまで県民性に関する著書を多く執筆してきた、岩中祥史さん。
そこで今回は、政府調査や民間のアンケートデータを基に各都道府県の県民性をひもといていく。
やっぱり気になる「収入・貯蓄の多い県」
「貯蓄額からわかる各県民の危機感」
まず取り上げるのは、各地のお財布事情と県民性の関係。収入が多い地域の第1位は埼玉県さいたま市。
「収入額については、都内の給与が高い仕事に就いている人が、さいたま市に住んでいるという状況が数字に反映されています。そのため、県民性との関係は薄いでしょう。一方の貯蓄額に関しては各県民の性質が色濃く表れています。
1位の愛知県民は、お金に関して非常に敏感な気質があり、本能的に“いざというときに備える”という傾向があります。自分の身に何かあったときに焦りたくない、という思いが、貯蓄に向かわせているのです」(岩中さん、以下同)
2位の兵庫県民は、港があり、都に近い地理的な要素が関係しているという。
「兵庫、奈良・京都などかつての都では、その立地から、昔は貴族や武士の権力争いが絶えなかった。はるか昔のこととはいえ権力者の栄枯盛衰のもの悲しさを肌で感じてきて『明日何があるかわからない』という危機意識が強い。
脈々と受け継がれてきた危機感が、貯蓄額にも表れているのではないでしょうか」
収入が多い都道府県
第1位:埼玉県 832万円
第2位:東京都 756万円
第3位:神奈川県 734万円
貯蓄額が多い都道府県
第1位:愛知県 2659万円
第2位:兵庫県 2582万円
第3位:神奈川県 2461万円
心配性?医療にお金をかける県は
「元を取りたい愛知県民、自然に任せる青森県民」
貯蓄額に続き、愛知県が1位を獲得したのは「保健医療」への支出額。家計調査で保健医療費とされているのは「健康の維持や疾病の治療、身体の矯正のために必要な商品およびサービスへの支出」。医療機関の受診料や、市販薬や栄養剤も含まれる。
「愛知県民は、いざというときの備えに対する意思に加えて“人生の元を取りたい”という気質も持ち合わせています。人生を謳歌し、元を取るには健康でなければなりませんね。
そのため、不安があればすぐに病院に駆け込み、健康維持のためにサプリメントも愛飲するのでは。
2位の京都府民の特徴は個人主義。自分自身の健康管理への熱心さゆえに医療費支出が増えるのでしょう」
愛知県民が、年間約23万円を健康維持にかけているのに対し、青森県民は約11万円と最少額を記録している。
「青森県の人々には“健康に執着しない”という特徴があります。よくいえば自然の流れに身を任せ、悪くいえば諦めが早い人が多い。“健康に悪いから”という理由で食べたいものを我慢せず、好きなもの、目の前にあるものを食べて暮らす。
そうした突き抜けた県民性が、保健医療費の金額にも表れています」
年間保健医療費が多い都道府県
第1位:愛知県(名古屋市) 23万5283円
第2位:京都府(京都市) 22万1139円
第3位:東京都(東京都区部) 20万8441円
第4位:静岡県(浜松市) 20万7243円
第5位:石川県(金沢市) 20万4074円
意識が高い系?SDGsな県
「正義感の強さが街中を清潔にする」
持続可能な社会への取り組みが注目される昨今。都道府県別に“ゴミのリサイクル率”を割り出した結果、中国地方の山口県が1位に。
「山口県には“正義感が強い人”が多くいます。そんな彼らが、近年の環境配慮に対するトレンドを受け入れれば『環境のために、ゴミは減らさなければならない!』と、リサイクルや分別に尽力する可能性が高い。
加えて、負けず嫌いな気質もあるので、それぞれが競い合うようにゴミの分別に取り組んでいる様子もうかがえます」
同県のリサイクル率は33%とずば抜けている。山口県民の正義感と負けん気の強さが絡み合い、堂々首位を獲得。
「2位の鳥取県は、高齢者が多く、時間的な余裕を持ってゴミの分別に取り組む人の割合が高い地域。
また『古事記』に由来する神社があり、古来、神様と縁が深い土地で、神様がいるわが町をゴミであふれさせるわけにはいかない、という意識がリサイクル率にも表れていますね」
ごみのリサイクル率
第1位:山口県 33.0%
第2位:鳥取県 28.6%
第3位:神奈川県 24.9%
第4位:岡山県 24.6%
第5位:埼玉県 24.4%
身だしなみ大事!美意識高い県
「美意識の高さは雪深さに比例する?」
理美容サービスの年間利用料額が高い1位は新潟県。
「この調査結果は、気候条件に関連している可能性が高い。冬は雪が多く、行動範囲が狭まり、家で過ごす時間も増えます。そうした環境下では、自分自身に関心が向きやすい。巣ごもりもたまにだとズボラになりがちですが、期間が長いですからね」
実は、ある調査(*)では、人口あたりの美容院の店舗数がもっとも多いのが秋田県、次いで鳥取県……と“日本海側”に美容院が集中しているという結果もある。
(*)…「【2022年版】美容関連の店舗数が多い都道府県ランキング」/調査元:日本ソフト販売株式会社
「昔から日本海側の地域は、美容関連の出費が多い傾向があります。さまざまなデータを見ても、雪深さと美容意識の関係は否定できません」
ちなみに、理美容院をあまり利用していないのが、静岡県浜松市の方々。
「静岡県は、温暖な気候に恵まれて富士山がどっしり構えているという土地柄、のんびりした人が多い。そのため、他人と自分の容姿を比べたり、関心を寄せたりしないマイペースさが、理美容院関連の支出を抑えているのかもしれません」
静岡県民のおおらかさは富士山譲り?※一番使っていないのが静岡県(浜松市)→3775円
理美容サービス利用
第1位:新潟県(新潟市) 1万3326円
第2位:山口県(山口市) 1万2889円
第3位:高知県(高知市) 1万2128円
第4位:香川県(高松市) 1万1035円
第5位:山形県(山形市) 1万234円
意外!衝撃!な県民性あれこれ最新ランキング
ここからは民間企業が実施したアンケートから県民性を深掘り!
今までに浮気をした人数
「寒いと浮気がしたくなる!?」
マッチングアプリ「Omiai」が行った“浮気した人数”に関するアンケートでは、男性は秋田県、女性は青森県が1位に。くしくも東北地方の2県が上位に入った。
「これに限らず、浮気関連のアンケートでは、北海道を含めた北日本が上位に入る傾向があります。東北人の気質として義理堅い、というのがあるので相手から思いを寄せられたら、断るのが悪くて応えてしまう、という可能性も」
冬場は厳しい気候で行動範囲が限られ娯楽が少ない、という事情もひそかにからんでいるのでは、とも指摘する。
「男性2位の京都府民は医療費でも触れたとおり、個人主義の傾向がありますから、自分で完結できて他人に迷惑をかけなければ問題ないとの考えから、浮気もバレなければOKという感覚なのかもしれませんね」
浮気した人数【男性編】
第1位:秋田県 2.10人
第2位:京都府 1.61人
第3位:北海道 1.30人
第3位:千葉県 1.30人
浮気した人数【女性編】
第1位:青森県 1.73人
第2位:北海道 1.50人
第2位:埼玉県 1.50人
円満?険悪?夫婦仲をひもとく
「夫婦円満度と離婚率の上位が同じ結果に」
県民性は、夫婦関係にどのような影響を及ぼすのか。夫婦に関するアンケートの結果から考察していく。
「夫婦円満度ランキングで気になったのが、1位北海道、2位沖縄県、3位高知県と、実は、この3県は人口実態調査(*)で例年、離婚率上位に入っている県です」
円満と回答する人が多い一方で、離婚する夫婦も多いということになる。
「県民性からこの結果を読み解くと、女性が持つ“自立心の強さ”が影響している可能性が高い。普段は円満な夫婦関係を築いていても、パートナーに対して違和感を抱けば、ダラダラと夫婦関係を続けるのではなく、すぐに別れて自分の力で生きていく。
そんな思い切りのよさが、客観的なデータの離婚率と、アンケートからなる夫婦円満度からうかがえますね」
『夫婦げんかの平均回数ランキング』については、岩中さんも納得の結果だったという。
「鹿児島県は、今なお男社会が根強く残っている県です。『薩摩隼人(はやと)』と呼ばれる鹿児島の男性は気性が荒く、一方の女性は『薩摩おごじょ』いわれ、男性を立てつつ、コントロールをするのが上手です。
近年の“男女平等”を目指す社会の傾向について、鹿児島男児は表面上ではわかっているふりをしていても、本質的には理解していないところもある。薩摩おごじょも男を立てるだけではなくなっており、夫婦の衝突が増えているのかもしれません」
鹿児島県は離婚率でも5位と上位。時代に沿った柔軟な意識変化が夫婦円満のコツのようだ。
夫婦円満度の平均点
第1位:北海道 76.9点
第2位:沖縄県 74.5点
第3位:高知県 74.4点
1か月間の夫婦げんかの平均回数
第1位:鹿児島県 4.5回
第2位:埼玉県 3.9回
第3位:愛知県 3.5回
倹約家の裏に歴史あり
「戦地となった過去が慎ましい生活に影響」
倹約志向になる理由については「歴史と深い関わりがある」という。
「戦国時代、岐阜は幾度となく戦場になりました。自分の住む地で戦があったからこそ“備えの大切さ”が身にしみている。さらに小さな村単位で行動してきた歴史もあり、身内への意識が高い。
倹約は“生活を切り詰めても、子孫に財産を残す”といった意識が高い結果では」
奈良もまた歴史ある古都。
「自分の世界観をしっかり持ち、他人の意見に振り回されることが少ない傾向が。流行りものに惑わされることなく、本当に自分に必要なものを買う。その精神が倹約につながっているのでしょう」
自身を倹約家だと思っている割合
第1位:岐阜県 61.0%
第2位:奈良県 60.0%
第2位:宮崎県 60.0%
第4位:新潟県 58.0%
第5位:愛媛県 57.0%
家族を大事にするのは?
「博愛精神の強さが家族仲にも影響する」
家族仲の良さランキングで1位を獲得したのは熊本県。
「明治時代、熊本県は西南戦争の戦場でした。西南戦争中には、日本赤十字社の前身となる『博愛社』が設立されています。
曽祖父の時代だとしても、戦争で大切な人を失った経験が身近だから、熊本県民には“より多くの人を救いたい”という博愛の精神が備わっている傾向が。
そのため、大切な家族と仲良く暮らしたいと考えるのはごく自然なこと。熊本県民の愛情深さがランキングの結果として表れている印象です」
家族仲がいいと思っている人の割合
第1位:熊本県 78.0%
第2位:和歌山県 77.0%
第3位:宮崎県 76.0%
第4位:富山県、愛知県、山口県、福岡県 74.0%
中毒性あり!?ネットショッピング好きな県
「広島県民はネットでポチる新しモノ好きな県民性」
和歌山県民は、生来の「のんびり気質」が、ネットショッピングの利用頻度を上げる要因になっている、と岩中さんは話す。
「和歌山県の人々は、外出せずマイペースに買い物ができる通販とは相性がいい。しかし、2位の広島県は便利さよりも『新しもの好き』という県民性が影響しています。少しでも時間があれば、ネットで目新しいアイテムを見つけて購入する。
それが楽しみのひとつになっているのです」
年末年始の散財には要注意のようだ。
ネットショッピングの頻度が増えた割合
第1位:和歌山県 43.0%
第2位:広島県 35.0%
第3位:栃木県、神奈川県、長崎県、宮崎県 34.0%
取材・文/とみたまゆり