「自分が今受け取れる金額を我慢して」と契約金の後払いについて語った大谷翔平

 一般庶民には想像しがたい金額の1015億円。大谷翔平がドジャースと結んだ契約だ(10年総額)。

「7億ドルという、プロスポーツにおいて史上最高額で契約したこととともに、その97%を“後払い”にしたことも話題に。大谷選手の年俸は200万ドル。日本円にして約2億9000万円ほど。残りの6億8000万ドルは、契約が満了した後の2034年から'43年にかけて10分割。日本円で年間約98億6000万円が支払われます。これは自分の契約によってチーム編成の妨げにならないようにと、大谷選手側からの提案だと報じられています」(スポーツ紙記者、以下同)

「脱税」と揶揄する声も

 大谷の判断には称賛の声が上がっているが……。

「あまり日本では報じられていませんが、現地の一部では、大谷の巨額契約にかかる税金も話題になっています。スポーツ専門チャンネル『ESPN』の名物記者も“大谷の決断はチームに大きなメリットだが、自身にとっても天才的”と評しています。その理由としては、“後払いが始まった時点でカリフォルニアに住んでいなければ、カリフォルニア州税が重くのしかかることはない”というものです」

 大谷は現在、カリフォルニア在住。同州はアメリカ国内で最も所得税率の高い州だ。

「現地の人を中心に一部から、“tax evasion”すなわち脱税だと揶揄する声もあります。まあ大谷選手にそのような意図はないでしょうが」

帰国後に受け取ったほうが「お得」

 大谷がカリフォルニア在住のまま、総額を契約年数で割った金額を受け取る一般的な形で報酬を得た場合、支払う税金はどの程度になるのか(1ドル145円で計算)。

「1015億円に対し、アメリカでの連邦税37%、カリフォルニア州の州税13・3%の合計50・3%の税率がかかるため、計約507億円の税金がかかります」

 そう話すのは、岡野相続税理士法人の岡野雄志氏。

 大谷は花巻東高時代に、卒業後の18歳から42歳まで1年ごとの目標を記している。思いどおりとなったものもあり話題となった“未来予想図”だが、それによると彼は、今回の契約をまっとうしたタイミングとなる“39歳で引退を決断し、その後日本に帰国する”としている。そうなれば、大谷は後払いの大部分を日本で受け取ることになる。この場合の税額は……。

会見時の大谷翔平(ドジャース公式インスタグラムより)

「アメリカ国内で1015億円の3%にあたる29億円を受け取ることとなります。その場合、29億円に対して50・3%の税率がかかるため、計約14億円の税金がかかります」(前出・岡野氏、以下同)

 では、後払い開始時にカリフォルニアではなく、計画どおりに帰国していた場合の税額は(今回は、米国で30%の源泉徴収が必要な場合を仮定)。残りの97%は日本円で986億円となる。

「986億円には日本での所得税の最高税率45%がかかるため、約443億円の税金が発生します。そこから986億円に対するアメリカでの源泉徴収額の約295億円を外国税額控除(国際間での二重課税を防ぐため、外国で支払い済みの税金を一定額控除する仕組み)すると、残りは148億円です。したがって、アメリカと日本で合計約162億円の所得税がかかります」

 1015億円を一般的な契約で10年間で受け取るより、日本に帰国後に受け取ったほうが“お得”なわけで、

「結果、約348億円の所得税の差が発生することとなります」

 やっぱり天才的?

(※税額はあくまで一般論として明らかになっている金額と税率を基に算出)