法政大学・武田和馬選手のインタビューで、キャラを持つ手で隠れて『ぬた歯科』に(箱根駅伝公式『X』より)

法政大学監督のアウターのきぬた歯科何?w
《きぬた歯科と法政ってなんか関係あるの》
《トレンドにきぬた歯科!?》

 1月2日〜3日に行われたお正月の風物詩『箱根駅伝』。レース中から終了後までSNSのトレンドには駅伝の様子以外になぜか“歯科医院”の名前が……。

 東京都・西八王子にある『きぬた歯科』。都内在住であれば一度はその存在を目にしたことがあるだろう。都内や隣県に掲げられた同歯科の看板、その数260箇所以上。各地の看板を見るために“聖地巡礼”するマニアもいるほどだ。多くは院長である羅田(きぬた)泰和さんの顔写真がデカデカと掲げられている。そんな“なんか見たことある歯科医院”が、箱根駅伝によって話題に。出場した法政大学のスポンサーとなり、ユニフォームに『きぬた歯科』の文字が記されたからだ。

「今まで正直、箱根駅伝って見たことなかったんですよ。熱狂している人の気持ちがわからなくて」(きぬた氏、以下同)

 箱根駅伝は2021年から、ユニフォームへのスポンサーロゴ掲出が解禁に。法政大の前スポンサーが降り、“看板をやたらと見る”きぬた歯科に大学側から声がかかった。

「駅伝は見ないし、たった2日やって知名度が上がるとも思えないし。でも1度会ってほしいと言われて、坪田(智夫)監督に会って。当然スポーツマンで、なんか僕もノリで良いなって思ってやってみようと。結果正解でしたね。1年目は広告効果というよりも知らない世界を見られた。学生が一生懸命走る姿。また駅伝自体も面白くて

 今でこそ街にきぬた歯科の看板はあふれているが、当初は妻や子どもの反対に遭ったという。肉親の顔の看板は恥ずかしいと。しかし今回は迷っていたところ……。

妻から「学生の応援、社会活動」を勧められて

「看板をやめろと言い続けてきた妻が久しぶりに口を出してきたんです。子どもたちも合わせてあまりに反対するから、『看板離婚』しようかなとお互い思っていたら妻が、“今は十分認知度があるんだから、学生を応援するとか、社会活動にもつながるようなこともやる年齢になったんじゃないの”と。

 またうちの歯科の目の前には『法政大学行き』のバス停がある。だからまったく関係がないわけではなく、20年以上、学生を見てきたんです。これまでアルバイトには法政大生もいましたし」

 法政大は今年、総合6位に。6区を走った武田和馬選手は同大学の6区としては77年ぶりとなる区間賞に輝いた。看板&スポンサー院長はレースをどう見たのか。

「初日、青学と駒沢がいい勝負になっちゃった。駅伝って“1人旅”をしちゃうとテレビにあまり映らないんですよ。1人じゃなくて競るとテレビによく映る。今年は青学と駒沢が競った。日本テレビとしては最高の場面。それを見ながら、早くどっちかが行って、どっちがが落ちてくれ、とにかく早めに決着つけてくれと。脱落すれば今度は後ろが映りだす。

 でも、結果的に1日目は青学と駒沢のドラマになっちゃった。もっとほかも映してくれよと思っていましたね」

 しかし、その風向きは2日目に変わる。

「初日が終わった後、『X』に“俺の運を持ってすれば、明日は露出全開間違いない”って投稿しましたけど、本当になっちゃった。武田くん効果ですね」

 区間賞の武田選手はレース後、きぬた歯科のロゴの入ったジャケットでインタビューを受けた(法政大監督も同様)。

日テレにロゴを隠されて“ぬた歯科”に

区間賞獲得できぬた院長より賞金ゲットの武田選手。なおこちらも『きぬた歯科』の文字は隠れ……(きぬた院長の『X』より)

「でも頭にきたのが、スポンサーロゴの前に法政のマスコットの人形があって……。それで見え隠れして、“ぬた歯科”とか“きぬ”とかそんなふうに見えてたんですよ。後から聞いたら、日本テレビの人が“きぬた歯科の前で(マスコットを)持って”って言ったと。武田くんは最初胸の真ん中に持ってたんだけど、“ここに置いて”と言われて移動させてインタビュー映像が始まった。

 とはいえ隠し続けることはできないから、“ぬた歯科”だろうが、結果トレンドに入ってくれた(笑)。だからあれが逆に良かった。隠れてると“なんて書いてあるのか”と見たいじゃないですか」

 この理論は看板にも通じるという。

「有名なマーケターがSNSでうちの看板がなぜバズるかについて言ってくれてました。デザインの奇抜さとかもあるけど、いちばんは看板に『JR西八王子駅前』とあるのが効いていると。銀座だったり、青山だったりすると途端にしらけちゃう。それが“西八王子なんていう田舎の歯医者が何? なんで?”となる。

 近いことが今回もあって。“何なんだよ、このよくわかんない歯医者は?”って。だから日テレは失敗。おかげで目立てた(笑)」

1月21日に投開票の八王子市長選の投票を呼びかける新しい看板(八王子市内)。上の某不動産会社の看板も“きぬた”を意識したものに……

 きぬた氏はスポンサー料だけでなく、賞金も用意。ロゴの見えやすいタスキ右掛け、5位以内、区間賞獲得などで賞金が設定された。

「“武田くん10万円ゲット!”なんてバカなことは普通のスポンサーはやらないですからね(笑)」

 地元・八王子市の盲学校の援助なども行う予定になっているきぬた氏だが、看板のプロとして行っていることがある。八王子市に最近掲げられた看板。いつものきぬた歯科に見える看板だが、文字が違う。

《市長選、はじまるぞ! 今回も他人事でいいのか? おれは出ないけど!》

 1月21日に投開票の八王子市長選の投票を呼びかけるもの。

今後も法政大のスポンサーを継続

「このような社会問題に関するメッセージを入れた看板を今後も出して、半年ごとに変えたら、結構バズってくれるんじゃないかと思っています。メッセージは『X』で募集していて、すでにかなり届いています。AEDの普及、子どもの貧困対策などですね」

 駅伝のスポンサーになったことによる医院への直接的な効果は特に考えていない。

「持論ですが、募金や寄付とかは生活や心に余裕がなければ1円もやる必要がないと思っています。税金を収めているなら十分じゃないですか。僕自身、稼ぎながらも5年くらい前までは社会貢献とかやる気は全然なかったです。そう思うようになったときにやればいい」

 駅伝については、今後も法政大のスポンサーは続ける方針だ。

いい成績を出すと、“もっと高い金を出すから”とスポンサーに手を上げてくる別の会社が出てきたりするらしいです。そういう大きな会社が出てきたら僕は降りるつもりです。法政にとって良いことですから。そうなったら役目は終わりというか。結局うちは看板なんで。でも、その会社が降りたら、また声をかけてくれたらやりますよと伝えてます

 さらには、別の“世界線”も……。

「現状、スポンサーロゴは1校につきユニフォームに1つしか入れられないところ、実は来年から2つ(2社)入れられるようになるそうです。青学の原監督が“青学にもやってくれない?”って(笑)。2校のスポンサーになるのは規定的に問題ないようですが、それをやっちゃうのはイメージが良くないですからね(笑)。効果も薄れますし」

 最後に。本取材中、“看板のプロ”きぬた氏から他大学のスポンサーロゴに多くのダメ出しが。

●(A大学)ユニフォームとロゴの色合わせが悪すぎ。
●(B大学)文字数が多すぎ。◯文字って……。
●(C大学)“デザイン”が入りすぎて視認しづらい。走ってるんだから。
●(D大学)よくわからないロゴ、ダメ。検索もしづらい。

 大学名は伏せるが、各大学の担当者およびそのスポンサーはよろしければご参考に……。

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