「死ねばよかったのにな」
18歳の力士に、そう冷たく言い放ったとされているのは九重親方(元大関・千代大海)だった。
「2023年10月、名古屋場所に同行していた九重部屋の力士・千代獅子が、飲食店で支援者からすすめられ20歳未満にもかかわらず飲酒をしてしまったことが発覚しました。兄弟子の千代天富もいたのですが、支援者の強いすすめから断り切れなかった。店を変えて酒を飲み続け、2人は朝方にタクシーで愛知県内の巡業会場に入ったのですが、千代獅子の体調が悪化し、救急車で運ばれたのです」(スポーツ紙記者、以下同)
2022年4月から成人年齢は18歳に引き下げられたが、酒とタバコは20歳から。この騒動を受け日本相撲協会は、九重親方と2人の力士に謹慎処分を下す。千代獅子は、しっかりと反省をして、再び活躍する姿を見せてくれると思ったのだが……。
「不祥事から約1か月後の11月29日、相撲協会は千代獅子の引退を発表しました。これ以外にも問題行動があるなら別ですが、今回の1件のみで引退というのはおかしい。どうもその背景には、親方から“死ねばよかった”と言われたことと、部屋で無視されるようになったことが原因との話が聞こえてきました。千代獅子はその状況に耐えきれず、部屋から逃げ出したようなのです」
無理に飲酒をすすめた支援者も悪いが、九重親方の対応が特によくなかったのではないかと続ける。
自身も相撲で“更生”したはずの九重親方
「キチンと話して反省させるべきところを、無視するように接するのは親方の在り方として問題がある。中学卒業後の15歳で部屋入りした千代獅子にとって、九重親方は親代わり。違う指導の方法もあったはずです。九重親方も角界入りする前は、暴走族のリーダーを務めるワルだったのは有名な話。自身も相撲を通して“更生”できたはずなのに……」
未熟な力士の過ちを正すことも、親方の“仕事”。にもかかわらず、見捨てるかのように接したというのだ。さらに九重部屋の近隣住民は、眉をひそめて、こんな衝撃の事実を明かす。
「部屋のそばにある喫茶店では、20歳未満の力士がよくタバコを吸っているんです。千代獅子さんだけでなく、20歳未満の力士はほかにもいました。店主は気を使い、力士が訪れているときはカーテンを閉めて外から見えないようにしていました。違法喫煙が常態化していたのでは」
喫茶店を訪れたことのある女性客も、こう証言する。
「力士は主にタバコを吸いに来ていたようですが、20歳未満で喫煙している力士についても店主は黙認していたそうです。飲酒騒動後、店主は“力士たちを甘やかしすぎた”と話していました」
この店主も店主だが、九重親方は弟子の“指導”を放棄したうえ、20歳未満の喫煙に気がつけなかったなら“監督怠慢”以外の何物でもない。
2023年12月下旬、週刊女性は自宅から出てきた九重親方を直撃し、話を聞いた。
親方は「千代獅子が他の弟子に強要」
─九重部屋にいる20歳未満の力士が喫煙しているとの話を聞きました。
「知らないよ」
ネクタイ姿の九重親方は、記者の問いかけにも足を止めずに歩き続ける。
─喫茶店で日常的に、問題を起こした千代獅子さんのほかにも、未成年の力士が喫煙していたようですが。
「悪いけど、俺に隠れてカゲで吸っていたらわからないよ。その喫茶店の存在は知っています。千代獅子がほかの子に(タバコを)強要していたんじゃないの? ウチの部屋にはちゃんと喫煙所があるし、20歳以上にはそこで吸うように指示しています」
─喫茶店サイドも力士の違法喫煙を認めています。
「20歳未満の力士に関しては、俺の目の前でタバコを吸ったことなんてないから」
九重親方は「知らなかった」の一点張りだが、週刊女性はこの発言に違和感を持っていた。なぜなら、次のような証言を得ていたからだ。
「20歳未満の力士もタバコを吸っていて、親方は“部屋ではいいけど外では吸うなよ”と話していたそう。なので、親方が知らないはずがないし、おかみさんだって知っていたはず。何より、そんな異常な状態で、キチッと指導ができるはずがない。そもそも、弟子たちを管理する気がないと思われても仕方ありません」(九重部屋の関係者)
違法喫煙を容認していたのなら大問題だ。こうした監督怠慢は、千代獅子の引退にも関係していたのではないか。記者がその点についても九重親方に尋ねると、
「千代獅子に“死ねばよかった”なんて言ってません。心配して“(飲酒で)死んだらどうするんだバカ野郎”と怒ったんです。それは、みんな聞いていますよ。千代獅子が部屋を辞めたい口実に、嘘をついたんでしょう」
と話すだけだった。
千代獅子本人が明かす飲酒事件の真実
しかし、これに反論する人間がいる。
「親方に“そのまま死ねばよかったのにな”と言われたのは、巡業先から東京の部屋に帰ってきた昨年の10月18日です。一緒にいた千代天富さんと3人だけで親方に事情を説明した中でのことでした。経緯を説明して、親方も理解してくれたと思ったら、1年間の外出禁止に加え、本場所ごとにもらえる手当も1年間は没収すると言われました。そして“死ねばよかった”と……。その言葉を聞き、もうこの人にはついていけないと思ってしまったんです」
そう話すのは、当事者である千代獅子だ。なぜ飲酒してしまったのか。
「お酒をすすめてきた支援者が、一緒にいた天富さんとはまた別の兄弟子の知り合いだったこともあり、断ったら面子をつぶしてしまうと思ったんです。最初は断っていましたが、“飲め、飲め”と言われ、飲まないといけない空気になって……」(千代獅子、以下同)
20歳未満で飲酒するのは言語道断。しかし、それを周囲の大人が“強要”するのは、モラルを疑う。その結果、1人の若者の未来を狂わせた。
親方やおかみさん、部屋から無視された
「10月19日には、相撲協会に説明に行きました。協会の八角信芳理事長も“頑張ろう”と励ましてくれてホッとしました。しかし、その後の稽古では九重親方に“腕立ての体勢で30分いろ”と言われ、それからいっさい声をかけてもらえなくなったんです。おかみさんにも謝罪をしたら“受け付けません”と言われたばかりか、部屋の力士たちも声をかけてくれなくなって……。10月21日は、稽古で親方に無視されたことから“今後、ちゃんと稽古ができなくなるなら力士としては無理だ”と思い、部屋を出たんです」
タバコについても吸っていた事実を認め、こう話した。
「親方には“タバコ吸っていたら、背が伸びないぞ”って言われたことがあります。知らないわけがありません」
九重親方は記者に、
「1%も嘘は言ってない」とも話していたが……。
真実は一体どこにあるのだろうか─。