「最近、街で見かけることが多くなったので興味が出て、試しに乗ってみようかなと思ってレンタルするところに行ってみたら、ナンバープレートが折れ曲がったりベコベコになっている車両がいくつも……。もう半分以上がそんな感じで、数字見えないじゃんってレベルのものもあって」
そう話すのは、都内在住の男性。シェアリングサービスで利用できる“電動キックボード”を使おうとした際の出来事だ。昨今、都市部を中心に多く見られるようになった電動キックボードだが、男性と同様の感想を持った人が少なくないようで……。
《ぶっ壊れ率高い ナンバーもベコベコでどっかにぶつけられてるし》
《電動キックボードのナンバープレートは平らかでないのが通例とはいえ、山も谷もできてる》(以上、『X』より)
折れ曲がったナンバーは法的にいかがなものか。
「道路運送車両法により意図的ではなくてもナンバープレートが折り曲げや汚れなどで見えない場合には、番号表示義務違反となり50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。折れ曲がりにせよ、汚れにせよ、全ての番号を識別できなければ違反になるでしょう」(杉並総合法律事務所・三浦佑哉弁護士)
“違法車両”にLuupが正式回答
電動キックボードのシェアリングサービスの最大手といえるのが『LUUP』。現在8都市でポート(貸し出し場所)数は5100か所に上り、渋谷区や目黒区などではコンビニの数を超えるという。それだけの数を誇るゆえ、「ナンバーがおかしい」電動キックボードの話題はほぼすべてLuupに関してのもので、かつそれは全国的なものだった。
《私の知っている広島市内のLUUP ナンバープレート全てこんな感じです(ナンバーがボコボコの写真)。路面電車の石垣を渡るのは危険すぎる。広島市内の道路の路側帯ってガタガタ、ボコボコ。》
サービスを展開する株式会社Luupにナンバーの現状や問題点について問い合わせた。
「ナンバープレートについて、ご指摘のとおり段差などで傷がついてしまったり、折れ曲がるケースがあることは把握しております。プレートの折れ曲がりを含め、ご利用者様からご報告をいただくなどして不具合が確認された車両は利用できない設定に変更し、ご利用者様が乗車しないようにした上で、適宜回収の上整備を行っております(車両の不具合を報告するフォームがアプリの利用導線上にございます)。
また、他のシェアモビリティと同様に、ご利用いただく際には必ず乗車前に車両の点検をお願いしております。不具合のある車両はご利用を控えていただくよう、今後も周知に努めてまいります」(Luup広報担当者、以下同)
電動キックボードのナンバーは、2023年7月に道路交通法改正に伴って定められた『特定小型原動機付自転車』専用の新しいサイズのものと、それ以前に使用されていた原動機付自転車のものがある。
「LUUPを含むシェアリング事業者のキックボードは、2023年6月まで政府によるルール整備のための実証実験に参加しており、道路交通法上は『小型特殊自動車』扱いでしたが、道路運送車両法上は『原動機付自転車』扱いだったことから、原動機付自転車のナンバープレートをつける必要がありました。
しかし、既存の原動機付自転車のナンバープレートは電動キックボードの車幅に対して合っておらず、ご指摘のとおり段差等で不具合が生じてしまうケースがありました。そのため、今回の道路交通法改正を機に、電動キックボード等のマイクロモビリティに合った小さなサイズのナンバープレートが採用されたのだと理解しています」
現在も“旧ナンバー”は使用が認められており、混在しているのが現状だ。
問題は利用者のマナーにも
ナンバーの破損と同様に問題視されているのがマナーだ。
《都内のLUUPは自転車のような感覚で車道を逆送する様子を毎日見かける 歩道をふつうに走るしイヤホンつけたままだし交通ルール無視 一方通行逆送気持ちよさそうに》
《渋谷区の自転車と電動キックボードは交通ルールを守らなくていいみたい 信号無視して突っ込んでも取り締まりの対象ではないようだ》
《横浜(みなとみらい)にも、渋谷区ナンバーのLUUPが走行してるんですが、歩道走行禁止の設定で歩道をかっ飛ばすもんだから危なくてしょうがない…》
「弊社では、誰もが安全・安心に移動できる社会の実現を目指しております。一部の悪質な利用者が違反をしている状況は認識しており、弊社としても遺憾であり、重く受け止めております。そのため、繰り返される違法走行に対しては啓発や罰則をはじめとした不断の取り組みが重要であると考えています」(前出・Luup広報担当者、以下同)
対策としてLUUPでは乗車するためには走行ルールのテストの合格、また年齢確認書類の登録などを必要としている。
一方で、本件取材中に記者も夜間に利用する若者3人を目撃。3人が横並びになって走行し、信号での停車時は、横断歩道まではみ出していた。テンションと声の音量が異様に高かったのは気のせいか……。
「飲酒運転など、交通事故につながりかねないような重大な違反をした利用者に関しては、そのような行為を把握次第、アカウント凍結などの対応を行なっています」
サービス提供側だけでなく、利用者側の意識、マナー、協力が加わって安全は生まれる。何かあってからでは遅い。対策や取り締まり、対してマナー違反や抜け道──いたちごっこにならぬよう……。