「10代のときに思い描いていた30歳は、もっと大人だろうなと思っていたんですけど。子どものまま来ているなという感じはしますね。もっと落ち着いた男性のイメージだったんですけど、真逆の方向に来ているなと」
KONAMIの『野球ゲームアンバサダー』就任を記念したインタビューで、今年7月に30歳を迎えるにあたって、イメージとのギャップを語った大谷翔平。自己評価は“子ども”だが、その生き方は教育の題材となるほどの影響力を持っている。
大学の教材にも起用
「日本ではこれまで多くの教科書に大谷選手が登場しています。小学5年生の道徳の教科書に登場した際は、大谷選手が高校時代、夢を達成するために具体的な目標や行動を記した“目標達成シート”が取り上げられていました。
'24年度から全国の小学校で採用される教科書では算数や社会、英語など、10冊以上に掲載されています。また小学校だけでなく、国公立大学や早稲田大学、慶応義塾大学などの全国の大学で'25年度に採用予定である英語教材にも大谷選手が起用されています」(教育系ライター)
全国の小学校へグローブを寄贈。さらに能登半島地震の被災地支援のため、所属するドジャースと共同で寄付を行った大谷。そうした行動やメジャーリーグで大活躍するに至った生き方など、学ぶべき点は多い。その影響は日本国内にとどまらず……。
「台湾の小学校の試験問題とされる画像がネット上で拡散されたのですが、問題文の中に大谷選手が登場していたと日本で話題に。実は、日本やアメリカ以外でも大谷選手は大人気。台湾では大谷選手の試合が生中継されていて、知名度も高く、子ども向けの伝記も発売されています。大谷選手がどうやって困難を乗り越え、目標を達成してきたかなどが書かれており、“人間性を養い、教育に最適”と紹介されています」(スポーツ紙記者、以下同)
韓国でも異例の扱い
そして今年、ドジャースの開幕戦が行われる韓国でも大人気のよう。
「相手選手にも配慮し、敬意を払うところや目標にひたむきに努力する姿などが韓国メディアで取り上げられ、人気を集めているようです。韓国でもメジャーリーグで成功した秘訣を分析した本や子ども向けの学習マンガが発売されています。韓国で特定の日本人選手だけが特集された本が発売されるのは、異例のことだそうです」
アジア以外でも評価は変わらないようだ。
「カナダでも道徳教育の題材として取り上げられていました。グラウンドに落ちているゴミを拾う大谷選手の姿から“ゴミを拾うことは運を拾うこと”と紹介されました。アメリカでも昨年、大谷選手のこれまでの歩みを地元放送局『バリー・スポーツ・ウエスト』がアニメにし、日米で話題になっていました」
実際、アメリカでは大谷の人柄や行動について、どのように取り上げられているのか。現地で取材をするスポーツライターの梅田香子さんに話を聞いた。
「本人は特別なことをしたと思っていないかもしれませんが、グローブの寄贈や被災地支援のための寄付はアメリカでも話題になり、称賛の声も多かったです。グローブは特別支援学校にも配られたそうで、子どもたちも喜んでいました。これだけ世界で通用し、社会にも大きく貢献する日本人が出てきたのは歴史的なことです」
ドジャースに移籍したことで、大谷のこうした活動は定期的に行われるという。
「ドジャースは、遠征先で子どもが入院する病院を訪問するなど、伝統的にチャリティー活動を行っています。そういったことに大谷選手も参加するはずなので、寄付やチャリティー活動はこれからも継続して行うでしょう」(梅田さん、以下同)
“野球不毛の地”やサッカー大国でも話題に
アメリカでも“人格者”とされる大谷だが、親しい人には違った一面を見せているという。
「日本ハム時代に投手コーチとして大谷選手を指導した吉井理人・現ロッテ監督は大谷選手について、“ジャイアンみたいなガキ大将っぽい性格をしている”とよく話していました。選手に聞いても同じようなことを話していたので、気の合う仲間たちだけに見せるちゃめっ気もあるのでしょう」
日本や韓国、台湾、アメリカなど、野球が盛んな地域ではなく、競技人口の少ない国々でも注目される存在になりつつある。
「“野球不毛の地”とされるヨーロッパでも大谷選手について、スポーツ専門メディアだけでなく、一般的なニュースを扱うメディアも報道しています。ドイツやオーストリアでは“世界でもっとも無名のスーパースター”と紹介。小学校へのグローブの寄贈や背番号を譲ってくれたチームメートの妻にポルシェをプレゼントした話などが伝えられていましたよ」(前出・スポーツ紙記者、以下同)
南半球の国にも、その名はとどろいているという。
「サッカー大国で野球がマイナースポーツのブラジルでもトップニュースになっているそうです。ドジャースとスポーツ界最高額となる総額7億ドル(約1015億円)の契約を結びましたが、それまでトップだったサッカー選手、リオネル・メッシの母国・アルゼンチンでもこの契約が大きく報道されました。“神の子”とも称される母国の英雄の契約総額を抜いた大谷選手について、“スポーツの価値観を尊重する謙虚さによって、野球を愛する国民を虜にした”と魅力を伝えています」
ただのすごい野球選手ではないからこそ、世界中で愛されるのだ。
「多くの国で野球や巨額の契約を結んだことだけでなく、グラウンド以外での人柄や行動についても取り上げられています。世界中で“人生のお手本”となる存在になっているといえるでしょう」
まだ現役バリバリながら、すでに“最高の教育者”となった大谷。これからどんな姿を見せ、何を教えてくれるのだろうか。