'70年代、日本のみならず、世界で大ブームになった『モンチッチ』。1月26日で、なんと誕生から50年!製造元のセキグチにその歴史と秘話を聞いた。
モンチッチ誕生からなんと50年
「当社は人形メーカーとして1918年に創業。主に海外に向けてセルロイドの人形を作っていました。ただ、セルロイドは可燃性があるため、ソフトビニールの人形やぬいぐるみを製造するようになりました」
と、セキグチの担当者。当時のぬいぐるみは綿やオガクズなどをパンパンに詰めて形を整え、タンスの上やガラスケースの中で“飾る”ことを目的とされていた。
「試行錯誤を重ね、'72年に『くたくたモンキー』を発売。その名のとおり身体がくたくたしていて、ぬいぐるみ自体を動かして遊べるとあってヒットしました。このぬいぐるみが、モンチッチの前身です」(セキグチ担当者、以下同)
もうひとつの前身が'73年に発売された、指をしゃぶるポーズの『マドモアゼル・ジェジェ』。
「当時の少女たちには“抱き人形”の文化があり、お友達と“ごっこ遊び”を楽しんでいました。そんな両方のよいところを合わせて新しいキャラクターを作ろうと、'74年に生まれたのが『モンチッチ』です」
柔らかな身体&人形のようなソフトビニールの顔・手・足。愛らしくも画期的だったモンチッチは、
「日本のみならず、もともと販路を持っていた海外でも爆発的ヒットとなりました。予想以上の売れ行きに製造が追いつかず、大金を手に “これで売ってくれ”と本社にいらっしゃるお客様もいたとか」
販売休止となるも復活ラブコールが殺到
モンチッチの友達『おしゃぶりクマ』や『おしゃぶりチムタン』('75年)、双子の弟と妹『マイチッチ』('77年)なども誕生し、派生グッズも多数作られた。
'79年にはレコードデビュー、'80年にはテレビアニメ化と一大ムーブメントを牽引し続けるも、'86年に販売休止(パリを除く)。ひょっとして、売れなくなっちゃったの?
「いえいえ(笑)。もちろん、最絶頂期と比べれば販売数は落ち着きましたが、当時、当社としては他のことに挑戦しようとしていました」
以後、セキグチはオリジナル商品だけでなく、ライセンス商品を手がけるように。
「版元さんから権利をお借りしての、ぬいぐるみや雑貨の製造です。具体的には『ミッフィー』や『ムーミン』など。ただ、モンチッチをお休みしている間も“また作って”という熱烈なラブコールをいただき続けまして。
誕生から20周年となる'94年に再販を決め、準備期間を経て'96年に再デビューしました」
なんと30か国以上で、累計約7000万個が販売されたという。
「国内外を問わずコレクターは多く、限定商品は予約完売します。自国のキャラクターだと思っている海外の方もいらっしゃいます(笑)」
独自進化が止まらないモンチッチ、CEOに就任!?
キュートなキャラの復活劇なら類似した話もあろうが、モンチッチはここから独自の道を歩み始める。
「誕生30周年('04年)に、モンチッチくんとモンチッチちゃんが結婚。シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテルで挙式&披露宴をリアルに行いました。その10か月後には『べビチッチ』が誕生しました」
そして、なぜか'10年にはエアギターの日本大会で準優勝。
「実はモンチッチくんはセキグチの社長室長、モンチッチちゃんは社長秘書という肩書きがあり、販売イベントなどでお手伝いをしています。そんな中、ご一緒したエアギター協会の会長さんから誘われまして。猛特訓をした結果の準優勝です。
優勝していたらフィンランドでの世界大会だったんですが、通常業務もありますので、ちょうどいい結果だったと思っています(笑)」
'12年にはセキグチのお膝元である葛飾区の観光協会の広報課長に任命されるなど、ファンタジーではなく“リアル世界”に溶け込み、活躍の幅を広げていく。
「地元の消防団のイベントや、警察署の交通安全キャンペーンなどにも参加していますし、企業などとのコラボも積極的に行っています。NGはほとんどありません」
多くのキャラクターはその世界観を守るべく、色や比率などに厳密な規定がある。しかしモンチッチの場合、原型をほぼとどめていないアート作品が完成しようとも、OK。
「前例でいえば、(『仮面ライダー』シリーズの)ショッカーとコラボした際には、目元しか(モンチッチらしさは)残っていなかったんですが、そのあたりは柔軟に(笑)。モンチッチは自由度が高いので。
昨年は『株式会社モンチッチ』を設立し、モンチッチくんがCEOに就任しています。その活躍にぜひ注目していただきたいですし、“モンチッチに会える街・葛飾”の顔としてこれからも頑張っていきますので、応援よろしくお願いします!」