1月18日に放送された『櫻井・有吉THE夜会』(TBS系)の企画をめぐって大論争が勃発し、同局が釈明に追われる事態に発展している。
発端は女優・二階堂ふみが挑戦した「方言禁止記者会見」。沖縄県出身の二階堂が、沖縄弁で質問を投げかける記者につられることなく最後まで標準語で回答できるかというもの。この「沖縄県の方言を禁止」する内容に放送前より、
《誰も、これ、マズイですよ、って言わないでそのまま宣伝していること自体が、信じられません。。。》
脳科学者の茂木健一郎氏が、自身のX(旧ツイッター)にて番宣投稿を引用して危惧していたように、番組放送後のSNS上では、
《こんな企画が通ってしまう無神経さ。『方言札』という沖縄差別を知らないのだろうか》
《沖縄出身の人に『方言禁止記者会見』を課すのは、戦前に日本帝国が方言を禁止した史実をなぞる差別行為です》
かつて琉球王国の廃止に伴い、沖縄の方言を口にすることを禁じた「方言札」の歴史背景を持ち出しては、番組による「差別行為」を指摘する声が散見された。
これらの差別指摘を取り上げた『J-CASTニュース』の取材に、TBSは《沖縄の歴史的背景についての十分な検討ができておりませんでした。今回の企画が差別的であるとのご指摘は、私どもとして真摯に受け止めており、今後の番組制作に活かして参ります》と釈明。
しかし、同局が《過去に別の俳優さんで同様の企画を放送した際は好評だったこともあり》と触れたように、この「方言禁止記者会見」は初めて実施されたわけではなく、2023年12月7日の放送で仲里依紗が長崎弁を禁止されたばかり。
この時は、今回のような批判に見舞われる騒動には至らなかったのだが……。
他県はOKで沖縄はNG、それこそ現代の差別
《この企画、色々な芸能人の方の出身の方言を引き出すゲームですよね。他県の回のときも今回も見ていましたけど、他県はOKで沖縄はNGってそれこそ現代の差別では?》
《番組を見たけど、地元の言葉につられないようにするってだけで、差別ではないでしょ たまたま二階堂ふみさんが沖縄出身ってだけで、他の都道府県なら良いの? 沖縄だけを特出するなら、それこそ差別だと思うけど… TBSもそんな意図はないと突っぱねないと何でも差別になるよ》
ネット上では企画趣旨を理解した上で、沖縄の時だけ「差別」の声が上がったことに「それこそ差別」との番組を擁護するような論調も。
自身も視聴していたという芸能評論家の宝泉薫氏は「はたして差別の声は沖縄から上がったものなのか」と、問題提起がなされた背景に疑問を持つ。
「もっと言えば(番組を)見ていた視聴者から出たものなのか。ここ数年、いやもっと前でしょうか、テレビだけでなく人に対しても粗探して叩きたい人が増えていて、少数派なんですけども声が大きい意見ばかりがネットメディアで取り上げられている印象です。
こうして番組側もコメントせざるを得ない状況になってしまうと、例えば今後は東北や大阪弁などで企画しようにも二の足を踏んでしまう。制作側も萎縮してしまい、バラエティ番組をおもしろく観たい視聴者にとって迷惑千万な話だと思います」
時代とともに差別意識も変化してきている
視聴者の多くが「楽しめた」「気にならなかった」との感想を述べている一方で、沖縄方言を禁止とする企画を“差別”と捉えた一定の世代がいたのも事実だろう。とはいえーー、
「終戦から今年で79年、現在も基地問題を抱える沖縄の歴史を語り継いでいくことはもちろん大切ですが、戦後の昭和に生まれた人、平成、令和で生まれて育っていく人にとってみれば“昔のこと”であって、差別意識も変化してきていると思います。
それでも沖縄の歴史背景、特質性を多少頭に置いておくと(番組は)やや冒険的な感じだったとは思いますが、それが(放送)できるようになったということはある種、沖縄が特別ではなくなってきたとも感じましたね」(宝泉氏)
ヤフーニュースで騒動が大きくなったことを受けてか1月23日、Xを更新して《沖縄で方言禁止という歴史があったことを考えると、今回の案件は一発アウトだと思う》と、あらためて言及してみせた茂木氏にとっては許しがたい“差別”に映るのだろう。