警視庁板橋署は14日、東京都板橋区に住む会社員の牧野利充容疑者(51)を過失運転致死と道路交通法違反の疑いで逮捕した。昨年12月5日午後1時40分ごろ、容疑者は板橋区の路上で横断歩道を歩行中だった同区の無職・塩井久美子さん(88)を乗用車ではねて逃亡。被害者の塩井さんは転倒して急性くも膜下出血などの傷害を負った。
はねた後、車から降りて被害者を見てから逃げ去った
「被害女性は搬送先の病院で10日間も生死の境をさまよった末に、15日午前5時27分に死亡が確認。目撃者の証言によれば、容疑者は塩井さんをはねた後、いったん車から降りて塩井さんを見たあとに逃げ去ったといいます」(全国紙社会部記者)
しかし、警察の取り調べに対して、容疑者は「歩行者にぶつかってはいない」と容疑を否認。
事故後、車を降りたことについては、「外で音がしたので、車を降りた。ほかの人が駆け寄ったのを見て、なんだろうと思っていただけ」などと“被害女性を見ていない”と供述している。
被害女性は事故現場から徒歩10分程度の距離にある都営住宅に住んでいた。
「塩井さんは毎朝、1キロほど離れた大山駅のほうまで買い物がてら散歩をするのが日課でした。高齢だから、20分以上はかかるでしょうね。足元はおぼつかないのに、杖もつかずにふらふら歩いていくんです。その帰りの事故だったんでしょうね……」(近隣住民)
塩井さんは独り暮らしだったようで、
「7年ほど前に旦那さんをがんで亡くされたんです。娘さんが1人いて、ときどきは会いにきますが、それ以外は独りだったから寂しかったと思います」(別の近隣住民)
異変があったのは、去年の12月10日ごろ。
「塩井さんの部屋を若い人が整理していたので、どうしたのか尋ねると、“病院へ入院してしまったので”って。まさかひき逃げにあったなんて思ってもいなかった」(同・住民)
すぐに通報していれば、助かったかもしれない
一方、牧野容疑者は、事故現場から6.5キロほど離れた同区の一戸建てに住んでいた。本人のSNSによれば、東京都中央区の出身で、都内の私立高校卒業後に就職。1997年からはレジャー会社に勤務し、2006年には結婚。その翌年に、一戸建てを購入している。近隣住民によると、
「付き合いが全くなくて、ほとんど会話したことないです。大柄なかたで、見た感じはごく普通、柔和そうだった」
容疑者は一体どのような人物だったのか。容疑者の妻に話を聞くために2日にわたって自宅を訪ねるも、インターホンの応答どころか、明かりさえ一度もともらなかった。
そこで、牧野容疑者が勤務していたレジャー会社を取材することに。同社のホームページには電話番号がないため、マンションの一室にある本社を直接訪ねたが、社員は一人もおらず5時間待つも不在。次に容疑者が勤務していたと思われる大山駅近くの店舗へ。すると、同店の店長は、
「容疑者がここの社員だったかどうかを含めて、私のほうからお話することはできません。また、私のほうから社長と連絡をとって、社長のほうから話すということもできませんので」
と言い放った。
「塩井さんは10日も昏睡状態のままだったんでしょう? もし容疑者がすぐに119番通報していれば、助かったかもしれないよね……」(前出・住民)
“不誠実な対応”が人を死に至らしめることもあるのだ。