裏金問題の発覚で大ブーイングを受けている岸田内閣。時事通信が1月中旬に行った最新の世論調査によると、自民党の支持率は14.6%。1960年の調査開始以来、野党だった期間を除いて過去最低の数字となった。
露呈した「金権政治」の問題だけでなく、能登半島地震への対応の遅さも加わり岸田首相に対する国民からの信頼はガタ落ち状態に。
「もう税金は払いたくない!」
「官邸での意味のない防災服コスプレにも腹が立つ」
と、SNSなどでは怒りの声が相次いでいる。今年9月には自民党総裁選が予定されている。支持率低迷で「ポスト岸田」候補が注目される中、初の“女性首相”誕生の機運も高まっているようだ。そこで週刊女性は読者を対象に「首相になってほしい女性政治家」について緊急アンケートを実施。18~60歳の男女1000人から回答を得た。
首相になってほしい女性政治家
トップ5の結果は表のとおりだが、意外なのは5位にランクインした田中眞紀子氏。2012年の衆院選落選以降は事実上、政治家を引退し、現在は国会議員ですらない田中氏だが国民の人気はいまだ根強いようだ。
「歯に衣着せないところがいい。強い女性というイメージ」(静岡県・55歳・女性)
「田中角栄の娘だから」(東京都・60歳・女性)
などの意見が聞かれた。昨年12月には久々に国会内で会見を開き、
「11年ぶりに永田町の土を踏んだが相変わらずきな臭い」
と眞紀子節で一刀両断。健在ぶりを見せつけた。政治評論家の有馬晴海さんは、
「昔のままのズバリとした物言いでしたね。すでに国会議員でないからこそ無責任にあれこれ言える部分はあると思いますが、久しぶりに見せたあの痛快さが国民の方々の印象に強く残り、今回のランキングに反映されたのかも」
と分析する。父親である田中角栄元首相は卓越したリーダーシップを持った政治家だ。51年前に著した『日本列島改造論』が昨年復刊した際も大きな話題となり、いまも増刷を重ねている。
「やっぱり眞紀子さんの顔を見ると、日本の強いリーダーだった角栄さんが思い起こされるんですよね。そっくりですし(笑)。実は眞紀子さん自身は、政治家時代に何か思い切った改革をやったわけでもなんでもない。でも、政治に勢いがあった角栄さんの時代を思い出させてくれる存在であることは確かです」(有馬さん、以下同)
4位にランクインしたのは、外務大臣を務める上川陽子氏。
「国家安全保障の課題が今の日本にとって、もっとも重要な問題と考えるから」(東京都・58歳・男性)
などの声があがった。
「政治家然としておらず、あまりメッセージ力もない方なので国民の知名度はいまいち。なんとなく上品そう、賢そうに見えるけどよくは知らない、という国民の方がほとんどなのではないでしょうか」
安倍内閣、菅内閣で3度にわたり法務大臣を務めた実績がある。オウム真理教事件に関わった麻原彰晃ら、13人の死刑囚の刑を執行した当時の法務大臣としても知られる。
「岸田内閣の支持率低迷で、最近になって上川さんが“女性首相候補”として急浮上しています。今回は4位という結果でしたが、次の選挙までにどれだけ上川さんが認知度をアップできるかでしょう」
発言力と行動力で存在感“大”の2人
3位は野党からランクインした蓮舫氏。
「発言力があって、論戦になってもズバリ発言している」(大阪府・45歳・女性)
など、特に女性からの支持が厚い。
「総理待望の話題では野党議員は場外になりますが、その中での蓮舫待望論にビックリ。自民党に人材がいないということもありますが、それほど期待が高いという表れでしょう。メディア出身ということも加勢し、国会での質疑では発信力やトーク力はピカイチ。
歯切れの良さで、大臣の答弁を切っていくイメージです。そこが国民の評価につながっているのでしょう」
立憲民主党の前身である民進党では、'16年に党首を務めた。
「とはいえ、自身がもともと水着のキャンペーンガール出身ということもあって、そこに少なからず矛盾を感じている国民がいることも確か。加えて現実的な問題として、このまま立憲民主党が野党であり続ける以上、蓮舫さんが女性首相になることは極めて難しいですね」
2位は現在、東京都知事の小池百合子氏。'92年の参院選初当選以来、女性初の防衛大臣就任、女性初の自民党総裁選出馬、女性初の都知事当選など、日本を代表する女性政治家として長年にわたり存在感を発揮し続けてきた。
「都知事としての経験が評価できる」(大阪府・45歳・女性)
など、男女問わず幅広い年齢層から人気だ。
「小泉内閣では環境大臣を務め、政財界のトップを巻き込んでクールビズを定着させるなど、とにかく政治センスのある方です。続けて、もったいない運動、エコ社会の大切さなどを提唱するアイデアマンでもあります。
豊富な語彙力に加え会話力にも長けていて、多方面に発信することで社会に大きな影響を与える。加えて、ゴルフも歌もプロ級と、なんでもできる人ゆえに人を見下すところも指摘されます。能力があるだけに嫌みな性格が災いして、同僚議員からの評価が低いのが残念です(笑)」
今年7月には都知事選が控えている。小池氏が3期目の当選を目指すか、あるいは国政に復帰して長年の野望である“初の女性首相”を目指すか、その動向が注目される。
「小池さんは自民党を出て都知事になったあと、当時の民進党と組んで自民党をひっくり返そうとするなど仲間を蹴落とすようなことも平気でやってきました。最近は国民民主党の玉木代表と組んで自民党に戻る策を立てたりもしていましたが、なかなかうまくはいかなかったようですね」
党や選挙区を渡り歩く様子から“政界渡り鳥”とも“女帝”とも称されている小池氏。だが、昨年は都独自の新たな子育て支援が評価された。0歳から18歳までのすべての子どもに月額5000円を支給するもので、国に先行したスピード感のある施策に子育て世代から多くの支持が集まる。
「そうはいっても、これまでの行動が災いして政界での人望が圧倒的に薄いのは事実。71歳という年齢から考えても、女性首相を目指すよりこのまま都知事3選を目標とする可能性が高いと見ています」
人気やキャリアで一歩先を行くのは……
137票を集め堂々1位に輝いたのは、現在、経済安全保障担当大臣の高市早苗氏。
「安倍元総理の遺志を承継する政治家だから」(兵庫県・60歳・男性)
「難癖つけてくる中国にもしっかり反論してくれている」(東京都・58歳・男性)
と、特に50代以上からの信頼が厚い。あまり知られていないが、高市氏は蓮舫氏や小池氏と同じくニュースキャスター出身。初当選は'93年の衆院選で、無所属での出馬だった。
「'21年に総裁選に出馬し、一気に知名度がアップしました。ほかの女性政治家と違うのは“女性”を強く意識した政策をあまり前面に出さないところ。男女関係なくひとりの政治家として勝負したいという思いが感じられます」
前回の総裁選出馬にあたっては、安倍晋三元首相の全面的なバックアップがあった。安倍氏が亡くなり、さらに派閥の解散も決まった今、高市氏の党内での立場が気になるところだ。
「当時は確かに安倍さんの協力もあり、高市さんを応援する多くの議員が集まりました。しかし派閥が解体されたからこそ、次回の総裁選では議員一人ひとりの意向がより大切になります。
永田町では結局、能力や学歴などより仲間が一人でも多いほうが勝つんです。国民的には石破茂さんが人気ですが、女性議員に限っていえば、知名度やキャリア、年齢を総合的に鑑みると高市さんがほかの方より少しリードしているといえるでしょう」
政治家に対する不信感は増すばかり
6位以下のランキングでは、野田聖子氏、片山さつき氏らの名があがった。しかし、今回のアンケートでもっとも多かった意見は「首相にふさわしい人物はいない」という厳しい意見。422人に上った。
「男女問わず、今の政治家に首相が務まる人材はいない」(神奈川県・49歳・女性)
「選挙の時だけ頭を下げている人たちとしか思えない」(東京都・24歳・男性)
など、今の政治に対する不信感、怒りのにじむ言葉が並んだ。
「安倍さんが銃撃されたあとに旧統一教会の問題が浮上し、それ以来ずっと自民党支持率は低迷しています。今回の裏金問題がさらに追い打ちとなり、党内では“もう岸田さんでは戦えない”という声もあります。初の女性総理を打ち出すことはある意味、自民党の最後の砦ともいえるのです」
しかしながらこのアンケートの結果を見る限り、国民の間に「女性首相待望論」が巻き起こっているとも思えない。
モリカケ問題、旧統一教会問題、莫大なコロナ予備費の使途不明金問題、さらに今回の裏金問題を経て、もう国民の間には“あきらめムード”が漂っている感もある。
「第2次安倍政権下で、テレビでの政治報道のあり方をめぐり政府から圧力があったかどうかが問題となりました。それ以来、テレビでは政治にまつわる放送がぐんと減り、思い切った発言をする政治の専門家の出演も少なくなりました。こういったことが、政治に対する国民の興味をますます薄れさせているようにも思います」
投票率も低下傾向が続いている。昨年行われた統一地方選挙では前・後半戦ともに過去最低の投票率となり、半数を割ってしまった。今回のアンケートで、千葉県在住の27歳女性は、
「政治家なんて男も女も関係なく、自分たちの既得権益のことしか考えておらず、国民のことなんて何も考えていない」
と回答。衆院解散がなければ、次回の国政選挙まであと1年半。政治を変えるための方法は唯一、投票しかない。
首相になってほしい女性政治家ランキング
1位 高市早苗(自民党) 137票
2位 小池百合子(都民ファーストの会) 115票
3位 蓮舫(立憲民主党) 49票
4位 上川陽子(自民党) 43票
5位 田中眞紀子(元民主党) 33票
取材・文/植木淳子