松本人志

 昨年末に『週刊文春』が報じたお笑いコンビ・ダウンタウンの松本人志(60)の性加害疑惑に端を発し、今年1月8日、松本は裁判に注力するために芸能活動の休止を発表した。

 この一連のスキャンダルについては多角的な視点でさまざまな記事が出ているが、“松本引退”の可能性に言及するネットニュースもあり、コメント欄には次のような意見も多い。

《望んではないけどこのまま引退だろう。ここまで暴露話が出てきて2割増で話が盛られてたとしても、やってきた本質が悪すぎるわ。裁判で勝ったとしても、どの面さげて戻ってきたらいいかはわからんし、そこまでする必要がない。海外か沖縄でゆっくり家族とくらすがいい》

《裁判に何年かかるかわからない。その間、浜田が頑張るといってるから、引退を明言しない休業状態でいくんでしょ。で、決着ついたら引退。浜田も引退でダウンタウンは解散。そもそもお金に困ってない以上、仕事なんてどうでもいいんじゃない。紳助と似てるけど違う部分もあるよね》

《むしろまだ復帰の目があると思ってる層がいる事に驚き。コンプライアンスが厳しいこのご時世、一度付いてしまったダーティなイメージはタレントとして致命的で、裁判の結果がどうなろうとスポンサーが付かない以上復帰の可能性は果てしなくゼロに近いと思う》

 このように、松本がこのまま事実上の引退になるのではないかと考えている人は一定数いるようである。

ことあるごとに引退時期をほのめかしていた松本

 昨年12月28日には、松本本人が文春報道を受けて《いつ辞めても良いと思ってたんやけど…やる気が出てきたなぁ〜》という発言を、X(旧Twitter)に投稿していた。

《いつ辞めても良いと思ってたんやけど…やる気が出てきたなぁ〜》と投稿した松本人志(本人のXより)

 今回のスキャンダルがきっかけで松本が引退に追い込まれると見る向きはあるものの、Xで《いつ辞めても良い》と語っていたように、確かに松本は以前からそう遠くない将来に引退するという発言をたびたび繰り返していたのだ。

 ここで近年の松本の引退に関する発言を振り返っておこう。

 2019年3月、コメンテーターを務めていたワイドショー番組『ワイドナショー』(フジテレビ系)にて、「上岡龍太郎さん、(島田)紳助さん、60歳手前くらいで辞めてらっしゃるんで」「そう考えると俺もそこまで長くないんじゃないかなと思いますよ」と、尊敬する2人の名前を出して引退に言及。

 当時55歳だった松本が、上岡氏が58歳(2000年当時)、島田氏が55歳(2011年当時)で引退したことを引き合いに出し、自身も引退までそう遠くないと語っていたわけだ。

 同番組では2021年1月にも「さすがに65歳でやめようとは思っているけど」、同年9月にも「数年で辞めるよ。辞めます、辞めます」と発言。

 また昨年2月放送のトーク番組『人志松本の酒のツマミになる話』(フジテレビ系)では、「(芸能界引退まで)そんなに長くはもうないのよ」「早ければもう2年や、遅くても5年かなぁ」とも発言している。

 一方、2021年5月放送の鼎談番組『ボクらの時代』(フジテレビ系)でさだまさし(71)から引退を慰留され、昨年5月放送の『人志松本の酒のツマミになる話』でも加藤茶(80)から慰留された際には、それぞれ尊敬する先輩の言葉ということもあり、引退に迷いを見せていた。

 ただ、松本自身がまだ決めかねている部分はあったにせよ、芸能界引退を現実的に検討していたのは間違いないだろう。

昨年9月の還暦の誕生日に引退していたら……

 昨年9月の誕生日で還暦を迎えていた松本。

 過去の発言を振り返ると、引き伸ばしたとしても65歳には引退するというプランが彼のなかで濃厚だったように思えるが、おそらく以前は60歳で引退の可能性も検討していただろう。前述したように2019年の55歳の時点で、還暦前に引退していた上岡氏と島田氏の名前を出して引退論を語っていたからだ。

 “たら・れば”の話になるが、もし松本が60歳の誕生日でスパッと引退していれば、晩節を汚すことはなかったのかもしれない。

 もちろん松本が事前に還暦引退を宣言していたら、被害を訴えている女性たちがその前に彼を告発しようと考え、文春報道が早まっただけという可能性もあるので、なんとも言えないところではあるが……。

 文春報道が真実だと仮定した場合、被害女性たちの声に耳を傾けて心情に寄り添ってあげるべきだし、松本が引退する前に彼の所業が明るみになったことは、社会的意義が大きいというのは大前提ではある。

 そのため、このまま松本がテレビに帰って来ずに引退したとしても、それはある種の社会的制裁を受けたと考えることもできるだろう。

 しかし、松本がこのままなし崩し的に表舞台を去ることになるとして、彼のファンはそんな引退劇を望んでいなかったはず。松本の“笑い”を愛したファンたちは今、非常に複雑な心境であることは想像に難くない。

ダウンタウン(松本人志、浜田雅功)
堺屋大地●コラムニスト、ライター、カウンセラー。 現在は『文春オンライン』、『CREA WEB』(文藝春秋)、『smartFLASH』(光文社)、『週刊女性PRIME』(主婦と生活社)、『日刊SPA!』などにコラムを寄稿。これまで『女子SPA!』(扶桑社)、『スゴ得』(docomo)、『IN LIFE』(楽天)などで恋愛コラムを連載。LINE公式サービス『トークCARE』では、恋愛カウンセラーとして年間1000件以上の相談を受けている(2018年6月度/カウンセラー1位)。公式Twitter:https://twitter.com/sakaiyadaichi