左から松本人志、宮迫博之、加護亜依

「法的手段に訴えるつもりです」「法的措置を検討しています」

 芸能人が週刊誌等でスキャンダルを報じられたとき、本人あるいは所属事務所など、芸能人サイドが出す声明によくある文言だ。もちろん、報道内容が事実無根だと否定する場合だが。

 手間はかかるが、事実無根を証明するには裁判で争うことが最も有効な方法であることは間違いない。

 渦中の松本人志も、2023年12月に『文春砲』第1弾が撃たれた後、所属事務所である吉本興業が「法的措置を検討していく」とコメントを発表。年が明けて1月8日には、吉本のホームページで、松本は法廷闘争のため「芸能活動を休止する」と発表があった。 同日、松本も自身の公式Xを更新し《事実無根なので闘いまーす》とポスト。

訴えを取り下げるケースの裏事情

『文春』と松本サイドの全面対決が予想されるが、裁判に発展するのはどのようなケースか。

特に法律に抵触するようなスキャンダルの場合に多いですね。仮に事実でないことが報じられれば、イメージダウンは避けられない。場合によっては、犯罪者の烙印を押されることになります。当然、仕事にも影響が出ることから、スルーはできない。汚名挽回、名誉回復するためにはどうすればいいかというと、手っ取り早いのが報じた雑誌と出版社を訴えることなんです。手続きも煩雑で、場合によっては1年、2年、あるいはもっと長丁場になることもありますが、裁判は事実無根を証明する最良の手段であり、最終手段と言えます。また、世間一般に“訴える=事実無根”という印象があるので、その時点でイメージを回復することも可能になります」(老舗芸能事務所幹部)

 とはいえ、実際に裁判となるケースは極めて少ないのが実情だ。「法的手段を取ります」は事実無根をアピールするだけの場合も少なくない。“かけ声”だけで実際には訴えない場合に加えて、途中で訴えを取り下げるというケースも稀ではない。では、いったいなぜ途中で訴訟を取り下げるのか。

「いちばん多いのは、争っても勝てないということがはっきりした場合です。ほかには、裁判費用が捻出できなくなったり、仕事が忙しくなり裁判に割く時間がなくなるなどの理由も。いずれにせよ、世間の反応は“勝てないから諦めた”と捉えがちです。つまり、“記事の内容は事実だったから、裁判で争っても負けることが明白になったからだ”と」(前出・老舗芸能事務所幹部)

裁判には相応の時間が

『週刊女性』2022年4月26日号は、俳優の木下ほうかに強制性交された被害を訴える女性の告白を報じている。女性の告白は、実に生々しかった。『文春』でも性加害が報じられており、続けざまに記事が出たことで、当然だが仕事がキャンセルになるなど窮地に立たされた木下は、『週刊女性』の発行元である『主婦と生活社』を相手取り、550万円の損害賠償などを求める民事訴訟を起こしたのだった。

 しかし、木下は2023年の6月に訴えを取り下げた。理由は定かではないが、上記のうちのどれかだろう。訴訟を取り下げたことで、木下はマイナスイメージがより強くなった。上述のとおり、世間の反応は「やっぱりね」となってしまう。

「法的措置!」と声を上げものの、その後、何の動きも見られなかった例としては、「闇営業騒動」の際、反社会的勢力の会合に参加し“ギャラ飲み”と報じられた宮迫博之や、写真誌に同じく“反社”の人間と一緒にいる写真を掲載された加護亜依が記憶に新しい。宮迫は結局、訴えることを止め、加護はその後何の動きもない。

新潮社で自著をPRする爆笑問題・太田光(2010年)

 週刊誌を相手に訴訟を起こして注目を集めた裁判といえば、『爆笑問題』太田光VS『週刊新潮』だ。「太田の父親が800万円を渡して、太田を日本大学に裏口入学させた」という2018年8月の報道に対し、太田側が約3300万円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求めた訴訟は、一審判決で発行元の新潮社に440万円の支払いと、ウェブ上の記事削除を命じた。2022年12月24日に行われた知財高裁の第二審では、一審判決を支持し、判決が確定した。

 太田の裁判では、判決が確定するまで4年の歳月を要した。松本に関しては、文春側に対して5億5000万円の損害賠償と訂正記事の掲載を求める訴訟を提起したことが、1月22日に吉本から発表されたが、こちらも相応の時間がかかることが予想される。

『文春』2024年2月1日号では、松本による性加害を実名・顔出しで告発する女性まで現れた。止まることのない文春側の“攻勢”も含めて、この一件は過去に例のないほど注目度の高い裁判となるだろうーー。