「歩く百億円」とも呼ばれた88歳の現役社長・吉川さんの口癖は「これからが人生本番!」。見た目だけでなく、驚異の身体年齢を保つ秘訣はどこにあるのか。お金をかけないユニークなその健康法とは
ビジネスも身体も赤字にしたらダメ
自分の人生のピークって何歳のときかと聞かれたら、あなたは何歳だと答えますか?20代?30代?それとも40代?
飲食業や不動産業の社長として活躍し、『¥マネーの虎』で一躍有名人となった、吉川幸枝さんの場合は─。
「年だからって、ため息ついて、命の炎をちょろちょろと燃やすだけの生活なんて、まっぴらごめん。いつだって今がピークなんだから!!」(吉川さん、以下同)
満面の笑みで、立て板に水のごとく言葉があふれ出る吉川さんは、とにかく若々しい。120歳まで生きるつもりと豪語しても、それがさもありなんと納得してしまう。
「60代なんてまだまだ子どもよ。人生が楽しくなるのはこれから。誰だって“衰えたな”と思うことがあるのは当然。でも人生100年時代になって、まだまだ先の人生があるんです。私だって本音を言えば、“ずっとこのまま行けるかしら”って不安がよぎることもあります。だから、多少の努力はしていますよ。これからの人生を、元気に豊かに美しく生きていきたい方は、私の健康法をどうぞ一緒に試してくださいね」
「ビジネスも身体も、赤字にしたらダメなのよ。赤字の身体っていうのは、マイナス方向(つまり死の方向)に向かっている身体のこと。栄養が足りないのも、過多なのも赤字。自分の身体と相談しながら、今は黒字かな、赤字かなって意識するといいんじゃないかしら」
検診による骨年齢、臓器年齢、血管年齢すべてが20代並みだという吉川さんの身体の若さを支えている秘訣はなんなのか。
「食べることで、いちばんこだわっているのは、だしね。私の身体はだしで満たされているって言ってもいいくらい。私は13人きょうだいの末っ子で、母のおっぱいはもうぺらっぺら。それで牛乳を飲ませようとしたら祖母が“この子を牛にする気か”って大反対。
仕方なく母は、かつお節や昆布でとっただしを私に飲ませて育ててくれた。でも、専門家の先生によると、だしの成分のグルタミン酸は生命のもとになる栄養で、身体や脳にとっても欠かしてはならないそうです。だから、生まれたときから今日まで、だしを積極的にとってきたのがよかったんだと思うの」
他に、小腹がすいたときによく食べているのが梅干しやのり。
「のりは食物繊維が豊富で、胃や腸の働きを促進してくれるそう。梅干しのクエン酸は血管をきれいにしたり、体力の回復にも効果があるんですよね。私の内臓がいまだに若い人並みに健康なのは、だしはもちろん梅干しやのりのおかげだと思うの」
閉経しても膣ケアをする理由
日本人の3000万人以上が腰痛で悩んでいるというデータ(日本整形外科学会)があるが、腰痛も膝痛もまったくないという吉川さん。
「私の自慢は、身体がやわらかいことよ。開脚して上体がペタッと床につきます。見せてあげたいくらいだわ。身体が硬くなる原因は運動不足だそうよ。私は、いつでもどこでも身体を“動かす”“伸ばす”、ながらストレッチを50年以上やっています。キッチンで料理をしながら爪先立ちしたり、片足を真横に上げたり。横になったときは、膝を上げ下げしたりね。常に動いているの」
この身体のやわらかさと骨の丈夫さにより、転倒しても骨折知らず。さらに、いまだに全国を飛び回っても疲れひとつ残らない。
「ウォーキングは週に3回くらい30分~40分しているわ。軽く体操をして、膝をマッサージしてから歩き始めるんだけど、ただ歩くんじゃないのよ。『頑張るぞー』とか『バカヤロー』とか大声を出しながら歩くんです。大声を出すとストレス解消になり、セロトニンというホルモンも出まくりよ。
60代あたりから、健康や、お金の心配、家族の悩みなど、何かとストレスもたまってきますよね。ストレスがたまれば身体の赤字につながるので、大声ウォーキングをおすすめしたいわ」
健康な身体はもちろん、吉川さんのシミのない美しい素肌の秘訣は、専門医とともに20年近くも研究しているという、デリケートゾーン(膣)のケアにある。
「年をとると、とにかく全身が乾燥してきますよね。女性の場合は、更年期を境にデリケートゾーンの乾燥に悩まされる方が増えてくるんです。女性は閉経するとエストロゲンという女性ホルモンの分泌が低下します。膣を潤してくれるのは“デーデルライン桿菌”という菌ですが、エストロゲンの分泌が減ると、その菌も減ってしまい、潤いがなくなってしまうんですよ」
閉経したんだし、ケアなんかしなくてもいいんじゃないかと思う人が大半。でもそのまま放っておくと、どんどん乾燥が進行していくのだ。
「逆にお手入れをすれば膣は潤ってくるし、排尿トラブルや乾燥からのかゆみなどが改善して、さらに美肌効果や髪を美しくする効果があって、全身のアンチエイジングにつながります。だからデリケートゾーンのお手入れは、ぜひしてほしいの」
そもそも膣は、お手入れするという意識が薄い箇所。
「海外では専用のオイルなどがドラッグストアで売られていたりするけれど、日本ではまだまだですよね。私はデリケートゾーンケアはずっとやってるの。お肌はもちろん髪だってフッサフサになるんだから! 身体中の肌のかゆみもおさまっちゃうわよ」
年を重ねるにつれ気力が続かない……といった人も多いのでは。吉川さんのようにエネルギッシュになるにはどうしたらいいのか。
テレビとの会話は孤独感も薄らいで一石二鳥
「今からでは遅い、今さら頑張っても仕方がないって考えていませんか。年だからって諦めちゃあいけない。自分の脳みそちゃんに向かって、これから先、こうなりたいって指令を出すの。『まだひと花咲かせるわ』『このままで終わるものですか』という欲を、自分の脳みそちゃんにしっかりと伝える。そうやって自分を励ませば、その思いに従って、身体に命令を出して動かしてくれます」
この“脳みそちゃん”を鍛えるにはテレビも有効活用できるのだとか。暮らしの中でぼーっとする時間をぜひ活用したいもの。
「声を出したり、人と話すっていうのはすごく脳を活性化させると思うの。でもひとり暮らしの方もいらっしゃるわよね。そんなときは、テレビを見て笑う、テレビと会話をしてみて。お気に入りの登場人物を見つけて、話しかけたり、ときめいたり。誰に見られるわけでもないんだから楽しくね! 孤独感も薄らいで一石二鳥よ!」
また、見た目も大事。吉川さんは“無意識がいちばん老化を早める”と話す。
「もうこんな年だから、見た目も身なりもあまり気にしない、なんて人も多いんじゃないかしら。その気持ちが、グッと老けを呼び寄せるんですよ。私は玄関、リビング、トイレ、廊下……家のあらゆるところに鏡を置いて、全身を確認します。ぜひ、鏡を見るクセをつけて。その時に笑顔がつくれればなおよし。いつでもすぐに笑顔をつくれる人になれば、きっとすてきな環境に身を置けるはずですよ」
人生100年時代に向かって、歩き出そう。
愛知県出身。飲食業や不動産、さらに美容事業などをしている株式会社よし川代表取締役社長。『¥マネーの虎』をはじめ、多くの番組に出演し人気者になる。幼いころはおにぎり一つ食べられないという生活の中から這い上がった生きざまは力強い。近著に88歳で人生の楽しみ方を記した著書『人生は80歳からがおもしろい』(アスコム刊)がある。