性加害問題の告発が日本で相次いでいる。“疑惑”の加害者が故人であることから裁判や罪には問われず補償が遅れているもの、活動を休止しつつも裁判で決着をつけようとする者……経過や結果はさまざま。
「2017年にアメリカのエンタメ業界を中心に“#MeToo”をハッシュタグに使った性犯罪の告発が相次ぎました。それ以前から性的虐待疑惑のあった有名映画プロデューサーによる数十年に及ぶ行為が告発され大反響を呼んだ。その後、同じ人物に被害を受けたという告発が数十人にも及び、運動は活発化。映画プロデューサーだけでなく、ハリウッドやファッション業界の有力者が次々と告発され、活動の縮小や表舞台から姿を消さざるを得ない状況に。今の日本の状況は“日本版#MeToo”といえるかもしれませんね」(芸能プロ関係者)
告発された有名写真家
そんななか……。
《女性モデルは撮影現場に到着するなり、”酩酊物質または麻薬”が混入されていると思われる飲み物を飲まされた》
《写真家は彼女の胸を触り、下半身を露出し彼女の身体に押しつけ、オーラルセックスをするよう彼女に命じた》
《写真家側のスタッフが一連の模様を撮影した》
2023年11月、スペイン人女性モデルが、ある有名写真家を相手取り訴訟を起こした。上記はその被害の内容だ(問題を伝える2023年11月22日の『The New York Times』より引用)。
「女性モデルを撮影、またその際に性加害に及んだと訴えられているのは、アメリカの写真家であるテリー・リチャードソン氏。彼は『ヴォーグ』や『ハーパーズ・バザー』、『GQ』などファッション業界の名だたる有名雑誌で活躍。さらに『グッチ』『ミュウミュウ』『クロエ』『マーク・ジェイコブス』『イヴ・サンローラン』『トム フォード』といった有名ブランドの広告写真を担当するなど、ファッション業界、アート業界でトップオブトップと言って過言ではない写真家。1年間にわたってレディー・ガガさんのツアーに密着した写真集なども発表しています」(ファッション雑誌編集者)
そんな超有名写真家と女性モデル。その構図は“立場が上の者と下の者”、となるかもしれない。女性モデルの訴状によると、彼女は所属している事務所に「テリー氏の業界における知名度と影響力を考えれば、彼の行動を見過ごすべきだ」と言われたという……。
「テリー氏の作風はひとことで言うと“過激”“セクシャル”。どのような写真なのか、その過激さを言葉で表現するのは、このご時世なかなか難しいというか……。露出度が非常に高かったり、モデルと密着したもの、また“何か”を想起させるものなど。詳しくは自己責任で検索してみてください……という感じです。
超売れっ子写真家でしたが、2023年11月のスペイン人女性モデルの訴訟だけでなく、それ以前から女性モデルらによってセクハラが告発されてきました。しかし“業界の重鎮”という地位があったためか変わらず第一線で活動を続けていた。そこから2017年の#MeTooが大きな動きとなって状況は一転。それまで彼に仕事を依頼していた出版社やブランドなどが関係を解消、写真使用を禁じるといった措置に出た。以降、テリー氏は活動自粛を宣言したわけではありませんが、単純にクライアントがおらず、表立った活動はない。業界追放、事実上の引退状態でした」(前出・ファッション雑誌編集者)
4月に来日予定のワケ
「引退状態でした」というのはわけがある。そんな過激なテリー氏が活動を再開させる模様で、その現場は今まさに性加害問題に揺れている、この日本だ。
「4月にテリー氏が来日する予定で、現在、撮影案件を募集しています。企業案件など表立ったものになるのか、モデルを募集して撮影するのか、詳細はまだ不明ですが、#MeToo以降、表立った仕事はほぼ初めてと言っていいのではないかと思います」(アートギャラリー関係者)
テリー氏の来日について撮影案件の窓口になっているのは、『magNese』という日本人アーティストらが所属する事務所。来日はどのような経緯からか、性加害が連日取りざたされている状況で彼を呼ぶことに懸念はなかったのか──。
「このメールアドレスは20代から40代の女性スタッフ全員が確認できるメールアドレスです。現段階でこのような過激な内容を送る必要はありますでしょうか? 弊社としては、まだお仕事になるかどうかすべて確認中の案件で、お答えできることが本当にない状況です。
こういった取材を手当たり次第行うのは危険かと思います。メール文面がセクシャルな言葉が多いので問題と感じました。来日するかどうかまだ未定なので、もしも来日するとなりましたら御社にお知らせいたします。そのような対応でもよろしいでしょうか?」(『magNese』担当者)
問い合わせはテリー氏の状況及び彼に関する現地報道などをまとめ、メールにて行った。編集部からの文面にセクシャル的な表現があったことが事実だが、それは海外だけでなく日本でも報じられている、テリー氏が行ったとされる性加害であり、同氏が業界追放状態となった理由もまさにその部分である。そのような状況のなか、仕事で来日すること、またその窓口になっている経緯を尋ねた。
「弊社はTERRY氏の窓口になるかどうかは決まっていません。関係者の方からご相談をいただきまして現在検討段階で、まだ契約書も交わしていなく、来日についても未定です。TERRY氏の過去の行いや裁判についても、日本で取り上げられている性加害/性被害問題についても、とても難しい問題ですね……。
TERRY氏について、私たちが知っている範囲でお答えできることは20年前の2004年の出来事の裁判が2件終わっていないということです。その裁判の内容については、ニュースで取り上げていることがすべて真実とは限らず、告発側も金銭の要求があるので優位に立つために大きな話にでっちあげている可能性もあり、真実である可能性もあります。その内容は20年前の出来事であり、真実を突き詰めるのはとても、とても難しい問題です。
ご本人は現在58歳で双子のお子さんを授かり、奥様と静かに暮らしていらっしゃいます。いったん裁判が落ち着いたということもあり、昨年からアメリカでの活動を再開されているようです」(前出・『magNese』担当者)
担当者からの回答は追記として以下の言葉で締められていた。
「この現在の性加害/性被害問題で◯◯(担当記者)さんをはじめ週刊女性の皆様がどちら側につくこともなく、週刊誌の皆様の力で一般の方々にも公人の方々にも性加害/性被害問題が減少し、さらには防止できる風潮を生み出してもらえたらと心から願っております」(前出・『magNese』担当者)
テリー氏のアシスタントを務め、現在は写真家として活動、東京パラリンピックのドキュメンタリーシリーズや『ホットペッパービューティー』のフリーペーパーの表紙などの担当者のインスタグラムの投稿に、テリー氏の来日案件について問い合わせ窓口として『magNese』の記載があったが、本問い合わせ後、削除されていた。