3月15日の提出期限にむけ、毎年2月頭から目にする機会が増える確定申告期のテレビCMや広告。
スマホを持っているのに、時代設定が昭和
「♪キミも始めよう~」という80年代調の歌声とともに、海をバックにスーツ姿で笑いあう“アベック”。ソフトフォーカスな画質はまるで昭和の雰囲気だが、持っているのはガラケーではなくスマートフォンだ。
そして場面設定がいきなり公園に。キッチンカーの店員やバーベキューをしているグループも皆、さわやかな笑顔でスマホを見ている。e-Tax(国税電子申告)の画面を互いに見せながら笑う出演者の服装はどこか古臭い――。
SNSではその「浮世離れ感」や「絶妙にダサい映像」から「CMが頭から離れない」「昔のカラオケ映像感」といった声が。
加えて「本当に令和6年のCM?」「昭和感たっぷりな演出はあえて?」といった疑問や、「ムカつくけど中毒性があって聞いてしまう」「地方のCMソングみたい」といった投稿も。
さらに「あんな笑顔で確定申告やってる人はいない」「キャンプ場で確定申告している友達とかイヤ」「確定申告はスマホだけでできるほど簡単じゃない」という辛口コメントもあふれ……いろんな意味で今、気になってしまうCMなのだ!
「確定申告を行う幅広い世代に親しまれるものをCM制作会社に依頼し、今回の作品が作られました」
そう話すのは国税庁・広報広聴室の担当者。昨年度からの放送に合わせ30秒と15秒の2パターンを制作したが、
「限られた予算の中で、特にスマートフォンになじみがある人に訴求するものをということで、CM制作会社からの提案もあり、今のレトロな演出イメージになりました」
たしかに昭和テイストは新鮮さをもってZ世代の若者(10代半ば~20代半ば)やその上の世代にも好感を持って受け入れられてはいるが――。
なぜバーベキュー中に!? 謎なシチュエーションの意味
「確定申告はもちろん紙でもできますが、e-Taxのほうがかなりラクになっています。今はマイナンバーカードをお持ちの方も増えていますし、“スマートフォンを使えば手軽に申請できる”ことを表現してもらいました。それで、自宅で申告という設定ではなく、いろんなシチュエーションで撮影したようです」
キャンプ場、キッチンカー前などのロケーションになったのはそのため。とはいえ、バーベキュー中に確定申告するって、アリなシチュエーション?いくら手軽な作業をアピールしたいといっても仲間と和気あいあいの中、税金のこと考える?と思ってしまうのだが――。
「30秒CMのほうでは、後半にe-Taxに関する説明を加えています。YouTube(国税庁動画チャンネル)ではやり方を詳しく紹介しておりますので、ぜひご確認ください」と担当者はアピール。
ちなみに出演俳優に関しては制作会社のほうで選定。前出のようにCMのターゲットとしては20~50代を想定していたため、出演する俳優もその世代から選ばれた。特に昭和っぽい顔立ちの人が選ばれたのか、メイクによって作り上げたのかは定かではないという。
国税庁の「中の人」は確定申告の啓発活動に力を注ぐが、昨今、自民党政治とカネの問題が取りざたされ、X上ではこのCMに「(放映は)脱税議員を捕まえてからにしてほしい」「裏金問題があるから…微妙」といったイラつきの声も多々。出演者たちのように、ニッコリ笑顔で確定申告したいものだが――。
国税庁動画チャンネル:令和5年確定申告期テレビCM(15秒) https://www.youtube.com/watch?v=s2H1yjwZn5M