言語の移り変わりというのは、激しいもので、つい最近まで使っていた言葉がいつの間にか“時代遅れ”と判定されることがある。ひどいときには、その言葉を発しているだけで“おじさん”と見なされることも珍しくはない。
最近だと1月31日にX(旧Twitter)へと投稿されたポストが4.9万いいね、1.5万リツイト、430件以上の返信(2月15日時点)を獲得し、ネットユーザーに衝撃をもたらした。
《そういえば「マジで」と「めちゃくちゃ」は今は中年しか使わないというのは本当だろうか。めちゃくちゃマジで多用してるんだけど》
『マジで』『めちゃくちゃ』が時代遅れ。おじさん世代の人間からすれば、なかなかにショックが大きい主張ではないか?
「マジでありがとう」「めちゃくちゃ嬉しい」といった具合に、今も日常的に使う中年は多いかもしれない。なかには、若いころの感覚のまま使用している人も一定数いることだろう。
だが、若い頃に使っていた言葉が今の若者から「おじさんっぽい」と判定されているとしたら……。
今は「ガチで」「エグい」が最先端?
文章ひとつとっても”おじさん構文”と揶揄されてしまうほど、
筆者は25歳というギリギリZ世代に該当するため、おじさん世代からすれば若者に分類される世代だが、一方で10代~20代前半からすれば、ややおじさんに片足が入りかけていると言っても過言ではない年齢だ。
そんな筆者としては、「マジで」「めちゃくちゃ」は、同年代同士の会話で聞く機会もまだまだ多く、言うなれば“現役の言葉”のように感じる。だが筆者の経験上「マジで」「めちゃくちゃ」と言うだけで場が一旦静まる、ということもあり、現在も若者言葉のままかどうかは釈然としない。
前出のポストに反応する形でショックを受けるネットユーザーも多く見受けられた。
《マジで!?めちゃくちゃ中年じゃん、ショック》
《マジかぁ〜!俺もめちゃくちゃ多用している》
《ヤバい、めちゃくちゃ多用してますね、まじで》
一方で、既に死語になりつつあるという声も。
《これほんとまじなんよ。めちゃくちゃに使ってるけど、z世代はガチ》
《「めちゃくちゃ」より「めっちゃ」とか「めちゃ」のほうが聞くかもしれん。
世代間の違いはよくわからない》
《最近の若者は「ガチで」が多い印象です》
「マジで」「めちゃくちゃ」よりも「ガチで」「エグい」といった言葉に変遷していっている、という興味深い指摘が散見された。こうした言葉が好まれるようになっているのは本当なのか?
「なにを言えばいいんだよ!」中年世代の本音
では実際におじさん世代とZ世代の若者の話を聞いてみよう。
まず45歳男性の経営者に「マジで」「めちゃくちゃ」への印象について伺った。
「どちらも普通に使っちゃう言葉なんで、古い言葉だと言われてもいまいちピンと来ないですね。私が20代のころは、『マジで』『めちゃくちゃ』が若者言葉で、同世代の友人はみんな使用していましたし、当時の感覚のまま今も使っちゃっています」(45歳男性)
自分自身が若者のころに使っていた言葉が自然と口に出てしまう。これがずっと続いているというのが、正直なところで当人たちも特に意識していないのだろう。
「むしろあえて『マジで』『めちゃくちゃ』を使っている節はあります。たとえば、『めちゃくちゃ』と似た言葉で『めっちゃ』というのがありますが、こちらは子どもっぽくて粗雑な印象があり、若者ぶっていると思われそうなので、『めちゃくちゃ』に切り替えたんです。でも『めちゃくちゃ』まで“おじさん”くさいってなると、『なにを使えばいいんだよ!』って感じちゃいます(笑)」(45歳男性)
「別に今も使うけど……」20代女性の本音
次に流行りに敏感そうな25、26歳の会社員女性の話も聞いていこう。
「今でも普通に使う言葉ですし、特に古臭さは感じないですね。ただ言葉のニュアンスは、徐々に変わってきた印象はあります。『マジで』は『マジか』、『めちゃくちゃ』は『めちゃ』といった具合に。
あと最近は『ガチで』『エグい』『やばい』といった言葉のほうを聞く機会が増えた気もしました。ほかにも、『鬼かわいい』『じみに痛い』『超あり得る』みたいなよく考えてみるとおかしい言葉も多用しているかも」(26歳女性)
「『マジで』も『めちゃくちゃ』も話し言葉としては現役だと思いますが、書き言葉としての頻度は減ったな、と。特に『めちゃくちゃ』は、文字で打ちづらいし、一文が結構長くなってしまうので、あんまり使おうとは思えないです。でも検索エンジンでは『マジでおすすめの商品○選』というページもあるように、必ずしも使われなくなったワケではなさそうですが」(25歳女性)
おじさん世代と20代女性、どちらも「マジで」「めちゃくちゃ」は、まだまだ現役の言葉だと認識している。40~50代の人間が20代中盤の若者に使う分には、おじさん判定されることは、今のところ大丈夫なのかもしれない。
しかし、言葉のニュアンスは変化し続けているためか、些細な認識の違いによって古くさく思われてしまう可能性も0ではない。話し言葉だろうが、書き言葉だろうがそのまま使っても特に問題はなさそうだが、どちらにせよ最先端の若者言葉とは限らない、ということだけは胸に留めておいたほうが賢明かもしれない。
(取材・文=A4studio/文月)