「遺棄現場は住民が散歩で通る細い道のそば。最初は“お人形さんみたいなのが落ちている”とだれかが気づき、やがて“動物の死体のようなものがある”と通報されました。お寺の墓地の脇で椿がきれいに咲いている一角です」(現場近くの女性住民)
山梨県甲州市の清水寺の脇を通りかかった近隣住民から通報があったのは2月8日のこと。警察が確認すると、生後間もない女児の真っ黒に腐敗した遺体だった。
捜査に着手した山梨県警は同月18日、この寺の住職の娘で甲州市役所に勤務する須山真衣容疑者(32)を死体遺棄の疑いで逮捕した。昨年11月上旬ころ、自分が産んだ女児の遺体を同寺の敷地内に遺棄した疑い。
仕事中におなかが痛くなり職場のトイレで出産
「遺体は裸で、ヘソの緒がついたまま。高度に腐敗し死因は不詳。医療機関を受診しておらず、同居する家族も職場も妊娠に気づかなかったという。赤ちゃんの父親は全く判明していない」(捜査関係者)
県警によると、
「埋葬するためにお寺にひとりで埋めました」
と容疑を認めている。
容疑者は、甲州市役所大和支所に勤務する非常勤職員。同支所の担当者によると、2019年7月に臨時職員として採用され、住民票発行などの窓口業務を補助していた。今年3月末で任期満了を迎えるため、更新を希望するかを決めるタイミングだった。
「須山容疑者が更新を希望していたかは話せませんが、可否は勤務評価と面接で決まります。勤務態度に問題はなく、通常の業務をこなしていました。本人から妊娠の報告はなく、周囲も気付きませんでした。昨年11月は体調不良などで5日間の欠勤と、午後に4時間の休暇を取った日がありました」(支所の担当者)
産気づいたのは勤務時間内。「仕事中におなかが痛くなり職場のトイレで出産した」などと供述し、産んだ直後の赤ちゃんは動いていたという。
容疑者の母は「妊娠に気づかなかった」
地元・甲州市の出身。知人らによると、県内の短期大学を卒業後、就職のため東京へ。結婚して女児1人をもうけたが、離婚して子連れで実家に戻った。
「体格がよく、ちょっと変わった子。マイペースでほんわかして独特の雰囲気をまとっている」(知人男性)
寺の娘として、何らかのプレッシャーがあったのか。
「ご両親はお孫さんをかわいがっていたし、妊娠を打ち明ければ力になってくれたはず。それよりも、相手の男性がいまだに名乗り出ないのはどういうことか」(地元の女性)
自宅を訪ねると、インターホン越しに容疑者の母親に話を聞くことができた。
妊娠に気づかなかったのはなぜか。
「もともと太ったり痩せたりが激しい子なのでわかりませんでした。いつもダボっとした洋服を着ていましたし」
赤ちゃんの父親に心当たりはないか。
「まったくありません。娘とは面会できていませんし、今はそれどころではありません。私どもは2人の孫のことだけを考えています。同居している孫を育てていかなければならない。亡くなった孫を一刻も早く供養してあげたい。それを考えるだけで精一杯です」
容疑者は遺棄した女児への罪悪感を口にしているという。“未婚の母”はなぜ追い詰められたのか。