リリー・フランキー 撮影/山田智絵 

 3月1日から公開される日英合作映画『コットンテール』で、リリー・フランキーが主演を務める。リリーは本作で、最愛の妻・明子(木村多江)を、介護の末に若年性アルツハイマーで亡くした60代の作家・大島兼三郎を演じる。

観客に委ねるところが、すごく潔い

 “母と妻”として家族をつないでいた明子が亡くなり、息子の慧(錦戸亮)と疎遠状態になっていた兼三郎。幼いころからピーターラビットが好きだった明子は、その舞台であるイギリスのウィンダミア湖に“自分の骨をまいてほしい”という、最後の願いを残していた。兼三郎と慧、その家族は、湖に向かうため、東京からイギリスへ飛び立った――。

「あまり収入もなさそうなのに、物書きでありたいという兼三郎を支えながら、息子の慧も育ててきた明子は、相当よくできた奥さん。明子が元気だったころは、家庭をないがしろにしていたからこそ、妻の死に対して後悔の念と執着があるのでしょうね。仕事を詭弁にして家庭を顧みなかった男と家族の話ですね

 パートナーや親の介護の問題など、人生において避けられない問題はたくさんある。

海外を舞台にしているから、介護疲れや親子関係の問題が“自分だけじゃないんだ”と受け入れられやすくなっていると思います。日本では息子が父親に素直な気持ちをぶつけることってあまりないじゃないですか。監督のパトリック(・ディキンソン)は、そういう感情を描くのがとても巧くて。日本人が言えない本当の気持ちを表現しているのが新鮮でしたね

映画『コットンテール』 2024年3月1日(金)新宿ピカデリーほか全国公開(C)2023 Magnolia Mae/ Office Shirous

 複雑な思いを、イギリス・湖水地方の美しい景色の中で描く本作品。

「サマータイムの関係で、夜の10時でも昼間のように明るいシーンがあります。そういった背景がわからないと、兼三郎の行動が理解できないのですが、この映画はそれを全部は説明していません。観客に委ねるところが、すごく潔いです

リリー・フランキー 撮影/山田智絵 

 “妻の死”に縛られた兼三郎は、散骨の旅という“非日常”を体験したことで、息子と向き合うことができた。日常から抜け出したくなる瞬間は、リリーにもあるのか。

毎日が嫌で仕方ないですよ(笑)。僕は別に快楽主義ではないけれど、少しでも面白いことを見つけようとすると、悪いことの種をまくんです。そうすると、ストレスからは逃れられなくなる

人生を楽しむ方法は「ベテランにならず常にルーキーでいること」

 いつも楽しそうなイメージがあるリリー。その秘訣は、新しいことに挑戦すること。

「プライベートでは出無精で寝てばかり。それでも、仕事で新しいことをするのは、楽しいですね。この映画の撮影を海外のスタッフとしましたし、昨年は女性向け下着のデザインをしました。読者の方も、人生を楽しくしたいと思ったら、初めての経験をするということに尽きると思います。一番のコツは、ベテランにならず常にルーキーでいることです

 映画の中で兼三郎と慧は、父と子でありながら、お互いに踏み込めない不安定さもある関係。現実でも、親子に限らずとも、意外に脆い関係はある。

たしかに、子どもが生まれた友人には会いにくくなりますよね。だから、会う人というのは自分と似た生活環境だったり、仕事場が同じ人ばかり。でも、今は忙しい人たちも、一段落したらまた会える。寂しいって思ったりはしないですね

 人と会うのもお酒を飲むのも好き、一方で何かを決めたりするのは苦手のよう。

予定を前から決めるのがすっごく苦手。いつ何が食べたくなるかわからないから、レストランの予約とかも、自分では絶対できないですね。食通の友人がいなかったら、予約しないといけない店には絶対に行けないですよ(笑)

 そんな彼が、読者にオススメする“オトナの理想のデート”とは?

雪深い温泉。深ければ深いほど良いですね。普段のデートではマッサージに行きたいです。ガールフレンドに限らず、友達と並んでマッサージに行くとか、よくしますよ。20代のときはそんなこと思ったこともなかったから、年を取ったな~って

 “推し活”が流行っている昨今。読者にはBTSファンが多いことを告げると……、

僕はK-POP第1世代。Baby V.O.Xが来日したときもライブに行きました。K-POPは生活の中にはもう欠かせないですよね