今、山崎賢人がアツい─。
今年の1月19日から公開されている映画『ゴールデンカムイ』に主人公・杉元佐一役で出演。「原作のイメージにぴったり」と、ファンからも太鼓判を押され、公開1か月を待たずに興行収入20億円を突破した。
昨今、漫画やアニメで人気の作品を実写化する際、ファンの見る目は厳しく、少しでも内容が改変されると“原作クラッシャー”として批判の嵐にさらされる。そんな状況の中、'19年に公開された主演映画『キングダム』から、厳しい審美眼を持つファンたちを納得させる演技を見せてきた山崎。
映画界での“原点回帰”
振り返れば、『L・DK』『ヒロイン失格』『orange―オレンジ―』といった少女漫画などの映像化で山崎は主演を務めてきた。そんな彼に世間がつけた肩書が“実写化俳優”。いい意味でも悪い意味でもこう呼ばれ、その期待に応えてきた山崎について芸能評論家の宝泉薫氏は、
「“また山崎賢人なの?”と視聴者に思われなくても、本人としてこういった役ばかりで大丈夫かな、と悩んでしまうのでは、と僕は心配していたんです。
デビューしたころはルックスも可愛くて、少しなよっとしたイメージでした。演じる役もそういった雰囲気を強調したものでしたが、主演を務めた'18年のドラマ『グッド・ドクター』以降、活動の場を映画にシフトしていく中で、彼の“原点”に戻ってきたなと感じていたんです」
ビジュアルに隠された俳優としての「熱」
原点とは何か? 宝泉氏はこう続ける。
「僕が山崎さんを初めて見たのは、映画初出演で主演を務めた、'11年公開の『管制塔』。若い少年少女が自分探しをしていくといった物語なのですが、全体的に落ち着いたトーンの作品でした。そうした役を演じるイメージがあったので“実写化俳優”と呼ばれ、キラキラしているほうが意外だったんです」(宝泉氏、以下同)
山崎が売れ出したころから、彼のビジュアルに引っ張られて役がついてきた感がある、と宝泉氏は分析する。そして、ここ何年かの彼の変化について、
「アイドル的なイメージで見られた彼がイメチェンするには、『キングダム』のような今までとはまったく違う役に自分を託すしかなかったのかなと。彼自身が殻を破ったというか、世間のイメージを打ち壊したのだと思います。
もともとハリウッドを目指したい、ということを口にしていましたし、上昇志向のある人。彼のビジュアルにだまされて、心の内にある俳優という仕事に対する熱さに、周囲が気づけなかったのかなと思います」
山崎の“素”の部分が前面に出てきた今、彼のこれからはどうなるのだろう?
「個人的には、ハリウッドでも渡辺謙さんのように“ヒーロー”を演じるのではなく、役所広司さんのように、どこにでもいる市井の人を、味わい深く演じる“いぶし銀”的な名優になってほしいな、と思います」
4月には、若き日の安倍晴明を描いた、夢枕獏氏の小説が原作の映画『陰陽師0』で主演する山崎。これまでとはまた違う、新しい姿を見せてくれそうだ。